バーチャル技術を活用して現実さながらの仮想空間を創造し、専用のゴーグルを装着してその世界への没入を可能にした先進技術、VR。最先端の技術なだけにその構造も複雑なので、具体的な仕組みに詳しい方は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事ではVRの仕組みを詳しく解説し、ほかのシステムとの違いや導入業界、注意点も紹介します。
VRの仕組み
VRでは人やモノが立体的に見えますが、これはどのような仕組みに基づいて構築されているのでしょうか。その要因の1つに、人間が物を見る際に生じる「両眼視差」という現象が挙げられます。
人間の目で捉えている画像は実際には左右で異なり、日常生活においては左右の目で見えている別々の画像を脳で立体像として合成しています。VRは仮想空間内で人間が立体像を見えるように、この両眼視差という現象を利用している技術です。
例えば視力検査のように、目の前にあるものを右目と左目を交互に閉じてみてみると、両眼で見ていた時のように対象が中心に定まりません。一方両眼で見れば対象が中心に見える理由として、自動的に脳が両眼視差のブレを修正している点が挙げられます。
そしてVRではこの両眼視差と脳の視覚情報修正の機能を活用し、利用者に立体的なイメージを与えることに成功しました。したがってVRの仕組みを簡単にいうと、目の錯覚や脳の機能を利用した機能ともいえます。
下記にこのVRの仕組みを有効活用した、VRゴーグルを比較した記事を掲載するので参考にしてください。
VRのトラッキング技術の種類
VRでは下記の4つのトラッキング技術を活用し、バーチャル世界へのユーザーの没入度向上に成功しています。
- ポジショントラッキング
- モーショントラッキング
- アイトラッキング
- ヘッドトラッキング
ではそれぞれのトラッキング技術を詳しく解説します。また下記にVRの使い方や、スマホやゴーグルでの使用方法も解説した記事も掲載するので参考にしてください。
ポジショントラッキング
何らかの動作で人間の視界は頭の動き以外でも変わり、その人間の動作と視界の動きを連動させる機能がポジショントラッキングです。このポジショントラッキングの働きにより、人間の歩行時やしゃがんだ場合などの視点認識が可能です。
モーショントラッキング
VRの中でのユーザーの動きを、バーチャル世界の中で再現する技術をモーショントラッキングといいます。モーショントラッキングを活用すれば、ユーザーの動きと連動してVR内のアバターなども同じ動作をとり、体全身でバーチャル空間を体感することが可能です。
アイトラッキング
VRにおける目の動きを敏感に感知する機能を、アイトラッキングといいます。体の動きではなく、目の動きのみに反応してVR空間内の映像が切り替われば、まるで現実の世界にいるような錯覚に陥ります。
またアイトラッキングはバーチャル空間においてユーザーの視線に迅速に反応してくれるので、VR酔いを防ぐことも可能です。
ヘッドトラッキング
バーチャル空間内で頭を動かした際に、その動作に伴って視界や周囲の映像が360°切り替わる機能をヘッドトラッキングといいます。この機能により、ユーザーは現実世界と同様の動作でバーチャル空間の景色を見渡すことも可能です。
したがってVRゴーグルを装着して右を向けば、バーチャル空間内の右側の映像が映し出され、左を向けばバーチャル空間内の左側の映像が映し出されるなど、向いた方向の全てに対応したバーチャル映像が映し出されます。
VRと類似単語の仕組みの違い
VRと類似した機能や意味を持つ単語には
- 3D
- WebVR
- AR
などの単語が挙げられます。そこでここからは、VRとそれぞれの類似単語との仕組みの違いを紹介します。また下記にVRとARの違いや、XRやMRとの違いも解説した記事も掲載するので参考にしてください。
3Dとの仕組みの違い
3DもVRと同様に、人間の両眼視差と脳の視覚情報修正機能を活用した技術で、右・左両眼共に映像が投影されるカメラを装着する点がVRとの共通点です。しかし3Dでは、右目・左目の両方のディスプレイに交互に超高速で画像を投影し、高速で表示される画像を3Dメガネで通してみることで映像が飛び出してくるような3D体験ができます。
したがって部分的に立体感を体感できても、全身でのバーチャル体験はできません。
WebVRとの仕組みの違い
Webブラウザを使用し、VRの専用機器がなくてもVRを視聴可能な機能をWebVRといいます。WebVRはURLが分かれば誰でも体感可能で、効率的にシェアできるのもメリットです。
スマートフォンを使用した場合では、傾けたりして視点を移動し、パソコンではマウスで簡単に操作できます。WebVRは比較的簡単に作成ができるうえに操作も簡単な反面、高品質なVRコンテンツの作成は困難です。
ARとの仕組みの違い
ARは英語の「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」という意味があります。具体的にはスマートフォンなどのデバイスを介し、実際の事象にデジタライズされた情報を投影することが可能です。例えば近年話題になった人気アプリ「ポケモンGO」では、スマートフォンを介した実際の街中や道路にデジタライズされたポケモンが登場します。
このようにARは現実の事象にデジタライズしたデータを加える技術であるのに対し、VRは完全な仮想空間を体感できる技術である点が相違点です。
VRの仕組みを導入している業界
VRの画期的な仕組みを導入している業界には、
- 医療業界
- エンターテインメント業界
- 不動産業界
- 観光業界
- スポーツ業界
- 広告業界
などが挙げられます。では下記にそれぞれの業界におけるVRの導入方法を表記し、それぞれを詳しく解説します。
VR導入業界 | 内容 |
医療業界 | ベテラン医師の手術の様子をVRで再現し、新人の医者に体感させるなど、研修・教育のツールとしてVRを活用 |
エンターテインメント業界 | VRを導入したライブ配信では、まるでライブ会場にいるかのようなリアルな体感が可能 |
不動産業界 | 現地まで足を運ばなくても物件の内覧ができる新しいサービスを提供 |
観光業界 | VRゴーグルを使用し、バーチャル空間の中で実際のツアーで観光名所を訪れたような体験が可能 |
スポーツ業界 | 自宅にいるにも関わらず、まるでスタジアムで観戦しているようなリアルなスポーツ観戦が可能 |
広告業界 | 自分でリアルに体感できる「体感型」の宣伝・広告が可能になり、ユーザーの購買意欲を高めることが可能 |
医療業界
医療業界ではベテラン医師の手術の様子をVRで再現し、新人の医者に体感させるなど、研修・教育のツールとしてVRを活用しています。また研修だけでなく、実際に大変な手術を行う際などには事前にVRを活用したシミュレーションを行い、成功率を高める試みも実施されているのが現状です。
エンターテインメント業界
エンターテインメント業界においては、アクションゲームなどにVR技術が広く導入されています。VRゴーグルを装着し、手に備えつけのデバイスを装着してバーチャル空間内の拳銃で敵を撃退するなど、高品質なVR導入型ゲームが多数開発されているのが現状です。
そのほかにもVRを導入したライブ配信では、まるでライブ会場にいるかのようなリアルな体感ができます。
不動産業界
不動産業界ではVRを導入し、現地まで足を運ばなくても物件の内覧ができる新しいサービスを提供する業者が増えています。この方法ではユーザーの自宅や不動産会社の事務所でVRゴーグルを着装し、売り出している物件の内装や間取りなどを360°確認できる仕組みです。
そのほかにも物件の立体的なCGを作成し、その空間内をVRで歩きながら実際の間取りなども確認できます。
観光業界
観光業界では、ツアー会社などがユーザーに旅先のVR体験をしてもらい、ツアーの宣伝などを行う動きが増加しています。ユーザーはVRゴーグルを使用し、バーチャル空間の中で実際のツアーで観光名所を訪れたような体験が可能です。
その結果としてツアーへの申込件数が増加するなど、集客効果を高める機能として有効活用されています。
スポーツ業界
スポーツ業界においては、360°間隔でのVRスポーツ観戦が可能な動画配信プラットフォームなどの利用が増えています。このサービスを利用すれば自宅にいるにも関わらず、まるでスタジアムで観戦しているようなリアルなスポーツ観戦が可能です。
また観戦だけでなく、スポーツ選手がトレーニング効率を高めるためにVRを導入する事例も増えています。
広告業界
広告業界においては、ユーザーがVRの仮想空間内で商品の使用感を確認するなど、体感型の広告活動が可能になりました。VRを使用すれば、従来のチラシやCMのように単純な「視認型」の広告ではなく、自分でリアルに体感できる「体感型」の宣伝・広告が可能になり、ユーザーの購買意欲を高めることができます。
VRの仕組みを活用する際の注意点
VRの仕組みを活用すれば、ビジネスやエンターテインメントなどの分野においてもさまざまなメリットを取得できますが、効果を最大化させるためにもいくつかの点に注意しなければいけません。ではVRの仕組みを活用する際の注意点を紹介します。
適度に休憩する
VRは仮想空間への没入感が高いため、長時間利用すれば実際に脳が感じる動きとバーチャル空間内の動きに整合性が取れず、気分が悪くなる場合があります。例えばバイクレースなどスピード感あふれるVRコンテンツを長時間利用すれば、体には風を感じないのに視覚から脳に伝わる情報はスピードを感じます。
その結果として、脳と体感の違いによる「VR酔い」で体調不良になる場合もあるので、適度に休憩しながら使用しましょう。
スペースの確保が必要
VRではゴーグルを使用し、利用者はバーチャル空間に入り込むので実際の周囲の状況を確認できません。したがって狭い場所で使用すれば、周りのものや壁などにぶつかる可能性があるので、ある程度のスペースを確保して利用しましょう。
VRの仕組みを活用するメリット
VRの仕組みを活用するメリットには、ユーザーに効率的にリアルな体感を提供できる点が挙げられます。例えば前述で紹介した広告業界においては、従来は文字や画像でしか伝えられなかった商品情報を、VRを活用してユーザーが商品を使用したようなリアルな感覚を与えられます。
そしてVRでは使用時に外部の事象との遮断が行われ、より商品の使用感を高めることも可能です。その結果として商品に対するユーザーの購買意欲を高め、ビジネスにおいては収益性を高めることができる点もVR導入のメリットといえます。
VRの仕組みについてまとめ
本記事ではVRの仕組みを詳しく解説し、ほかのシステムとの違いや導入業界、注意点も紹介しました。本記事でも紹介したように、VRはエンターテインメントのツールとして利用できるだけでなく、ビジネスにおける収益性向上を目的としたツールとしても有効活用できます。
導入による成果を高めるためにも本記事を参考にしてVRの仕組みを十分理解し、ビジネスやエンターテインメントなどをはじめとした多様な分野で成果を挙げてください。