「自社でもAIを活用したいけれど、それを担える人材がいない」「社内でAI教育を始めたいが、何から手をつければいいかわからない」と悩む方は多いでしょう。AIの進化により、業務の自動化・効率化・データ活用が加速する一方で、使いこなすAI人材の育成が課題となっています。
特に日本企業では、AIの知識を持ち業務に応用できる人材が不足しており、AI導入やDX化が進まない原因に。そこで記事では、AI人材の概要や不足している理由、社内で育てるための4つの育成ステップをわかりやすく解説します。
自社でAIを活用できる人材を増やしたいと考える方は、ぜひ最後までご覧ください。
AI人材とは
AI人材とは、人工知能に関する知識や技術を持ち、業務や課題解決に活かすことができる人材を指します。一般的に、AIと聞くと専門的なプログラミングスキルや機械学習の知識を持つエンジニアを想像しがちですが、実際は、AIを「使いこなす力」も同じくらい重要です。
たとえば、データから得られた結果を業務改善につなげることや、生成AIを活用して業務効率を上げる事務スタッフもAI人材に含まれます。つまり、AI人材とは「AIを開発できる人」だけでなく、「AIを理解し、適切に選び、業務に組み込める人」も含めた幅広い存在であり、技術力だけでなくビジネスへの応用力やコミュニケーション力も求められるのが特徴です。
今後は専門職だけでなく、あらゆる職種においてAIリテラシーを持つ人材が必要になるでしょう。
AI人材が不足している理由
経済産業省によると、日本では現在約17万人のAI・IT人材が不足しており、2030年にはその数が約79万人に拡大すると予測されています。特に、AIやサイバーセキュリティといった分野では高度な専門知識を持つ「ハイエンド人材」が求められる一方で、そうした人材を十分に育成できていない現状も。
引用:経済産業省
また、IT企業だけでなく、一般企業のIT利活用部門でもAI活用を担える人材が必要とされており、需要が供給を大きく上回っています。この背景には、第4次産業革命に対応するための技術進化と、追いつかない教育現場や再教育体制の遅れがあります。
AI人材がいらないと言われるのはなぜ?
「AI人材はいらない」と言われることがあるのは、AIの進化によってプログラミングやデータ分析の知識がなくても、誰でも簡単にAIツールを活用できるようになってきたためです。
たとえば、ChatGPTの登場により、難しいコードを書かなくても文章作成・要約・画像生成・分析などができるようになり、「高度なAIスキルは一部の研究者やエンジニアだけで十分では?」と考える人も増えています。しかし、実際にはAIを正しく選び、業務に適用し、成果につなげるには一定の知識と判断力が必要で、ツールを使うだけの人では対応しきれない場面も多く存在します。
そのため「AI人材がいらない」とされるのは、あくまで表面的な理解によるものであり、実際にはAIを使いこなす人材の育成が今後ますます重要になるのです。
AI人材に必要なスキル・知識
AI人材に必要なスキルや知識は主に以下3つです。
スキル名 | 内容の概要 | 活用例 |
データサイエンス | データ収集・加工・分析し、業務改善につなげる力 |
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機械学習・ディープラーニング | AIに学習させて予測・分類・パターン抽出を行う技術 |
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数学知識 | AIの仕組みを理解し、モデルの精度や構造を説明できる数学的な知識 |
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①データサイエンス
データサイエンスとは、単にデータを扱うスキルではなく、課題解決に向けてデータを収集・加工・分析し、「どんな傾向があるか?」「何が起きそうか?」を読み解く力です。
AIの多くはデータによって成り立っており、どんなデータを使うか、どう整えるかで分析の精度は大きく変わります。たとえば、売上予測をする際には、以下の情報を抽出します。
- 商品の販売履歴
- 顧客の属性
- 過去のキャンペーン情報など
このデータ分析に必要なのがデータサイエンスです。データを読むだけでなく、ビジネスの意思決定にどう活かすかまで設計できるのが、AI人材に必要な能力です。
②機械学習・ディープラーニング
機械学習やディープラーニングは、AI人材に求められる技術であり、AIに学習させてパターン認識や予測を行う仕組みを理解し、実務に応用する力が必要です。近年のAIは、アルゴリズムをもとに構築されており、ビジネスの中では顧客の離脱を予測したり、画像から不良品を検出したりといった形で使われます。
実務で求められるのは、以下のスキルです。
- 回帰分析や決定木といった基本的な機械学習モデルの理解
- 教師あり/なし学習の選択と適用
- TensorFlowやPyTorchを用いた深層学習モデルの実装
- モデルの評価・改善のスキル
また、生成AIなどの分野では、自然言語処理や画像認識などを組み合わせたモデル活用も求められます。単に使うだけでなく、「どの手法が適しているか」「なぜその結果になったのか」を説明できることが、AI人材に必要なスキルなのです。
③数学知識
AIや機械学習には、複雑な数理モデルがあり、それを支える数学の知識がなければ、AIを正しく理解・運用することはできません。
数学知識の応用方法などを理解していれば、「なぜこのモデルが精度を出せているのか」「どの変数が結果に影響しているのか」といった問いにも答えられるようになります。
見た目の便利さだけでAIを使うのではなく、仕組みを数学的に説明できることが大切なのです。
以下の記事では、DX/AI人材に必要なスキルを解説していますのであわせて参考にしてください。
AI人材の4つの育成ステップ
AI人材の育成はやみくもに実施するのではなく、以下4つのステップで実施しましょう。
- 業務課題の棚卸
- AIリテラシーの把握と教育方法の決定
- 職種やレベルに合わせてスキル・知識を学ぶ
- 効果検証と改善を繰り返す
①業務課題の棚卸
AI人材の育成を始める前にまず行うべきなのが、自社の業務課題を棚卸しすることです。AIを導入すること自体が目的になってしまうと、現場で使われず失敗するケースが多いため、「どの業務に課題があり、どこにAIを使うと効果が出そうか」を明確にすることが重要です。
たとえば、「毎月の集計作業に時間がかかっている」「問い合わせ対応が属人化している」など、実際に困っていることを具体的に洗い出します。棚卸しを通じて、AIで解決できそうな業務とそうでない業務を区別し、育成する対象者もわかるでしょう。
②AIリテラシーの把握と教育方法の決定
次のステップは、社員のAIリテラシーを把握し、教育方法を決めることです。全社員が同じレベルでAIを理解しているわけではなく、ITに慣れていない人もいれば、すでにツールを使いこなしている人もいます。
そのため、まずは簡単なアンケートやヒアリングなどで「どのくらいAIを知っているのか」「どんな不安や期待を持っているのか」を確認しましょう。その上で、教育対象を以下3つに分類しましょう。
- 基礎から学ぶ層
- 業務応用レベルの層
- 専門的に扱う層
上記3つの分類でeラーニングや研修、ハンズオンなど最適な教育方法を選びます。ここで大切なのは、「全員に同じ研修を与える」のではなく、それぞれの立場やスキルに応じたカリキュラムを用意することです。
③職種やレベルに合わせてスキル・知識を学ぶ
社員のリテラシーを把握したら、職種ごと・レベルごとに合わせて、必要なスキルや知識を身につけるステップです。たとえば、営業や事務職にはChatGPTなどの生成AIを活用した業務効率化、エンジニアにはPythonや機械学習の実装など、それぞれ業務に即したスキルが求められます。
ここでのポイントは「全員がAIを深く理解する必要はないが、自分の仕事でどう活かせるかを知っておくこと」が重要ということ。座学だけでなく実際に手を動かす研修も効果的です。自分ごととして学べる環境をつくることが、スキル定着には必須です。
④効果検証と改善を繰り返す
AI人材育成は一度研修をして終わりではありません。学んだ知識が実際の業務にどう活かされているかを確認し、改善していくサイクルを回すことが重要です。AIツールを導入しても「現場で使われていない」「使い方がわからない」といった声が出てくることもあります。
そこで、育成の効果を定期的に検証し、必要があれば追加研修をしたり、使いやすいマニュアルを整備したりといった改善が必要。また、現場からの成功事例や失敗事例を共有し、他部署にも応用できるようにナレッジを蓄積することも大切です。
以下の記事で育成方法をわかりやすく解説していますので、参考にしてください。
AI人材の育成に失敗しない3つのポイント
AI人材を育成するために以下3つのポイントを意識しましょう。
- 使い方ではなく業務ベースで考える
- 社員のスキルは標準化を意識する
- PoCで小さな成功体験を積ませる
①使い方ではなく業務ベースで考える
AI人材育成で重要なのは、操作方法の習得ではなく、「業務でどう使えば効果が出るのか」という目的ベースで考えることです。ツールの使い方だけを覚えても、現場でそれが活かされなければ意味がありません。
たとえば、ChatGPTの使い方を教えても、「何に使えばいいのか」が明確でなければ現場は活用しません。逆に、「営業日報を自動生成する」「クレーム対応メールを素早く下書きする」など、具体的な業務と結びつけて教えることで、AIの価値を実感しやすくなります。
AI人材育成では「このAIは何ができるか?」ではなく、「この仕事のどこに課題があるか?」「それをAIでどう解決できるか?」というベースで考えさせましょう。
②社員のスキルは標準化を意識する
AI人材を育てる際に見落とされがちなのが、個人ごとの差をいかに埋めるかという視点です。社内において、ある人はAIに精通している一方で、別の人は触ったことがないという状況では、AI導入や活用が進みにくくなります。そこで大切なのが、社員全体のAIリテラシーや基本スキルを標準化しておくことです。
たとえば、全社員に対して最低限のAI教育を実施し、標準的な使い方マニュアルやテンプレート、ナレッジ共有の仕組みを用意することで、誰がやっても一定のクオリティでAIを活用できるようになります。
スキルの標準化は属人化を防ぐ上でも必要です。
③PoCで小さな成功体験を積ませる
AI活用や人材育成を成功させるには、いきなり大規模に展開するのではなく、小さな範囲で試してみる「PoC」を行うことが重要です。PoCとは、AIが本当に効果を発揮できるかを少人数・短期間でテストしてみる取り組みで、「実際に使って成果が出た」という成功体験を社員に積ませることができます。
この成功体験を社内で共有することで他部署への展開もスムーズになります。PoCはリスクが小さく、現場に自信と納得感を与える育成プロセスとして効果的です。
AI人材育成を効率化するおすすめセミナー3選
ここからはAI人材育成を効率化するおすすめセミナーを3つ紹介します。
- DX・AI人材育成研修サービス
- 生成AIセミナー
- ビジネス向けAI完全攻略セミナー
①DX・AI人材育成研修サービス
「DX・AI人材育成研修サービス」は、企業のDX推進力を高めるための人材育成を支援するセミナーです。特徴は、導入前に「DXレベルチェック」で現状のスキルや課題を可視化し、それに基づいて最適な教育プランを提案してくれる点です。
研修は短期集中型から中長期育成型まで幅広く対応しており、日常業務と並行して学べるeラーニングや、現場の課題に沿ったワークショップも充実。製造業・建築業に強い講師陣がカリキュラムを監修・実施しており、ただの知識習得にとどまらず、実務で成果を出せるAI人材の育成を目指せます。
導入実績は10,000社を超えており、助成金活用の相談も可能。業種や職種に合わせた柔軟な研修が可能なため、初めてのAI人材育成にもおすすめです。
②生成AIセミナー
「生成AIセミナー」は、未経験者でも生成AIの仕組みと活用方法をマスターできる短期集中講座です。
ChatGPTやMicrosoft Copilotといった主要ツールの使い方だけでなく、大規模言語モデルの基本構造やプロンプトエンジニアリングの基礎を学びます。また、応用としてCanva・Claude・Vizcomなどのツールを実際に操作し、画像・動画・コード生成をハンズオン形式で体験。自社専用のChatGPTをAPIやノーコードで構築する方法まで学べるため、実践スキルに直結した内容が特徴です。
企業のDX・AI研修にも導入されており、セミナー後には「生成AI完全攻略ガイド」も配布されるため、復習や社内展開にも活用できます。
セミナー名 | 生成AIセミナー |
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運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
価格(税込) | 27,500円〜 |
開催期間 | 2日間 |
受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー |
③ビジネス向けAI完全攻略セミナー
「ビジネス向けAI完全攻略セミナー」は、AIをビジネスにどう活用すればよいかを体系的に学べる短期集中型のセミナーです。初心者にもわかりやすく、人工知能の基礎知識から始まり、機械学習やディープラーニングの仕組み、AIを実際に構築してビジネス課題に適用する方法まで、実務に即した内容で構成されています。
たとえば、「都道府県のクラスタリング」「クレジットカードの不正検知AIの作成」など、現場に近い題材を使った演習により、自分の手でAIをつくる体験が可能。受講者には271ページに及ぶオリジナル教材「AIビジネス完全攻略セミナーガイド」も提供され、復習や社内展開にも最適です。
セミナー名 | ビジネス向けAI完全攻略セミナー |
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運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
価格(税込) | 35,200円〜 |
開催期間 | 1日間 |
受講形式 | 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング |
AI人材についてのまとめ
AIの進化によって、企業は業務の効率化や価値創出のためにAI活用を求められる時代になりましたが、実現するには単なる知識ではなく「業務にAIを活かせる人材」の育成が必須です。
本記事では、AI人材の定義から始まり、不足の理由、必要なスキル、育成ステップ、そして育成時に意識すべきポイントまでをわかりやすく解説しました。現場に合った教育方法を選ぶこと、スキルを標準化すること、そしてPoCで小さな成功体験を積ませることが、AI人材育成を社内に定着させるうえで重要です。
自社でAI活用を本格化させたいと考えている方は、ぜひ今回の内容を参考にしながら、AI人材の育成に取り組んでみてください。
