AutoCADの作業効率化を目指しているのなら、ソフトに搭載されたVBAという機能を活用するのがおすすめです。しかし、VBAがどのような機能なのかイメージできないという方もいるでしょう。
そこでこの記事では、AutoCADに搭載されたVBAの役割や使い方などをわかりやすくまとめました。線を引く方法や役立つコマンド一覧など、入門知識を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
AutoCADのVBAとは
AutoCADに搭載されているVBAとは、VBと呼ばれる言語を使ってAutoCADを直接操作する機能のことです。正式名称をVisual Basic for Applicationと言い、ワンクリックで特定の動作を実施する際などに利用します。
なお、AutoCADのVBAは「管理>アプリケーション>Visual Basic Editor」という項目から起動できます。Microsoftが提供しているExcelなどでもVBAを利用でき、ほとんど同じプログラムの組み方でAutoCADの操作を自動化できるのが魅力です。
AutoCADのVBAでできること
AutoCADでVBAを使い、マクロを組むことによってできることを以下に整理しました。
VBAでできること | 具体的な動作 |
作図の準備 | 新規図面の作成・レイヤー設定・図枠の準備をワンクリックで完了させる |
特定のオブジェクトを挿入する | 普段からよく利用する図形などを線や円、ポリラインなどを組み合わせながら瞬時に作成する |
印刷設定・出力をまとめて実施する | あらかじめ印刷設定や出力先を組むことで、瞬時に印刷を終えられる |
上記の用途はあくまで一例です。
AutoCADに搭載されている既存機能はすべて自由にVBA上でカスタマイズできるので、多種多様な動作を自動化できます。
AutoCADのルーティン作業や準備などに負担を感じているのなら、ぜひVBAを活用して作業効率化を実現しましょう。
また、AutoCADを自動化する方法について知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
AutoCADにおけるVBAの入門知識
AutoCADのVBAを操作する前に理解しておきたいポイントを2つ紹介します。
事前知識がなければ、うまく操作を開始できない人も少なくないため、入門知識としてチェックしてみてください。
VBAの画面構成
AutoCADのVBAは以下の画面で構成されています。
ツールバー | 画面上側に表示されている項目であり設定やデータ管理に利用する |
プロジェクトエクスプローラー | 画面左側の項目でマクロのシートを分けて管理する |
コードウィンドウ | 画面中央の項目でマクロシートに記述したルールの条件を変更できる |
プロパティウィンドウ | 画面左側の項目でコードを記述する画面であり記述コードの提案などを受けられる |
VBAに触れる際には、どこに何の項目があるのかを理解したうえで練習をスタートしましょう。
VBAの記述ルール
VBAは特定の文字列で構成された「コード」を記述することによりマクロを組めます。
しかし、ほとんどの内容を英語体で記述をするため、どのコードが何なのかわからないと悩むケースも少なくありません。そこで、以下に簡単な記述ルールをまとめました。
よく利用する 記述ルール |
用途 | 書き方の例 |
Subプロシージャ | この範囲のマクロを動作させるというように、マクロを動かす箱をつくる | Sub マクロ名() End Sub |
指示コード | 特定の動作を実施させるために記述する文字列であり、条件設定などもまとめて記述する | Dim plineObj As AcadLWPolyline |
コメント | コードの内容をわかりやすいように、コメントを残せる | ‘コメント文 |
なお、VBAは入れ子構造でコードを記述するのが一般的です。
例えば、Subプロシージャのなかに指示コードを入力するという作りが一般的であり、多種多様な指示コードを組み合わせながら自身がイメージするマクロを構築していきます。
AutoCADのVBAの使い方
AutoCADのVBAを使いこなす方法として「線を引く」という初歩的な使い方を紹介します。
AutoCADのVBAを起動する
まずはAutoCADを起動して「管理>アプリケーション>Visual Basic Editor」をクリックしてください。
もしVBAモジュールのダウンロードが済んでいない場合には、後述するAutoCADのVBAモジュールのダウンロード手順を参考にしてください。
標準モジュールを新規作成する
VBAのウィンドウが表示されたら、画面左側に表示されている「プロジェクトエクスプローラー」にある「ThisDrawing」クリックしてください。画面中央にコードを記述するウィンドウが表示されればOKです。
コードウィンドウにコードを記述して実行する
標準モジュールの用意が完了したら、実際に線を引くためのコードを記述していきます。
参考として以下に記述するコードの例をまとめました。
Sub test()
Dim plineObj As AcadLWPolyline
Dim points(0 To 3) As Double‘ポリラインの配置座標
points(0) = 0: points(1) = 0
points(2) = 0: points(3) = 100‘ポリラインをモデルスペースへの配置を指示する
Set plineObj = ThisDrawing.ModelSpace.AddLightWeightPolyline(points)
End Sub
上記の内容は、ポリラインを座標(0,0)から座標(0,100)にかけて挿入するというものです。
3つのブロックに分けて記載していますが、上から「コマンドの起動」「コマンドの挿入条件」「コマンドの配置指示」という順番で記載しています。
なお記述したコードがうまく起動するか確認する際には、VBAのツールバーにある「実行」をクリックします。AutoCADのワークスペースに挿入した座標の情報が反映されていれば作業完了です。
また、VBAのみならずAutoCADの自動化の仕組みを勉強したい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
AutoCADのVBAで役立つコマンド一覧
AutoCADのVBAを作成する際によく利用するコマンドを以下に整理しました。
コマンド | 目的 | 記述例 |
AddLine | 線分を作成 | object.AddLine(始点,終点) |
AddArc | 中心・半径・開始角および終了角から円弧を作成 | object.AddArc(中心点,半径,開始角,終了角) |
offsetObj | 特定のオブジェクトをオフセット | Dim offsetObj As Variant offsetObj = オブジェクト名.Offset(距離) |
explodedObjects | 特定のオブジェクトを分解 | Dim explodedObjects As Variant explodedObjects = オブジェクト名.Explode |
例えば、何かオブジェクトを追加したい場合は「Add〇〇」といった記述、オブジェクトを編集したい場合は「〇〇Obj(もしくはObject)」といった記述をするのが一般的です。
ある程度ルールを覚えてしまえば、すぐにAutoCADのVBAを使いこなせるようになるので、ぜひ前述したコードなどを入れ替えながら練習してみてください。
AutoCADのVBAモジュールをインストールする方法
AutoCADのVBAはツールバーに表示されていますが、機能を利用する際には、ボタンをクリックしてAutodeskからVBAモジュールをダウンロードしなければなりません。参考として以下にVBAモジュールのダウンロード手順を整理しました。
- AutoCADを起動してVBAをクリックする
- Autodeskの公式サイトに切り替わる
- 現在利用しているAutoCADのバージョンに合うVBAモジュールをダウンロードする
- ダウンロードされたモジュールを起動する
上記の手順を踏めば、すぐにVBAを利用できるようになります。
AutoCAD2025を利用している場合には、AutoCAD2025 VBA モジュール64ビットをダウンロードする必要があるので、誤って別のバージョンをダウンロードしないように気を付けてください。
AutoCADのVBAはセミナー講習で学習しよう
AutoCADのVBAは本記事で紹介した使い方やコマンドにとどまらず、自由自在にカスタマイズできるのが魅力です。しかし、独学でAutoCADのVBAをマスターすることに高いハードルを感じている人も多いでしょう。
それならまずは、セミナー講習に参加してプロからAutoCADのVBAを学んでみるのはいかがでしょうか。
「実践的に学べるAutoCAD自動化セミナー」では、AutoCADのVBAといった自動化について学びたい人向けに、会場講習、ライブウェビナーを利用したセミナー講習を実施しています。
独学にも使えるeラーニング教材も用意してあり、最短2日でVBAおよび、そのほか自動化に関わる知識や使い方を身につけられるため、興味をお持ちの方は以下のセミナー情報をチェックしてみてください。
AutoCADのVBAについてまとめ
AutoCADに搭載されたVBAを活用すれば、一連の作業を自動化できるのはもちろん、手間のかかる設定などを瞬時に完了できるようになるのが魅力です。
ただし、AutoCADのVBAを操作するためにはコードやVBAの記述ルールを覚えることが欠かせません。独学やセミナー講習など、学習する選択肢が複数あるため、自身の目的に合う方法でVBAを使いこなせるようにチャレンジしてみてください。