AutoCADの操作を効率化する方法を、探しているという方も多いでしょう。
また、そのなかでも自動化といった便利な方法がないか調べている方がいるのなら、AutoCADに搭載されたLISPという機能を活用するのがおすすめです。
そこでこの記事では、AutoCADのLISPについて入門知識や使い方をわかりやすくまとめました。
LISPの使い方の参考として、役立つコマンド一覧やサンプルコードも掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。
AutoCADのLISPとは
AutoCADのLISPとは、AutoCAD専用に開発されたプログラムのことです。
プログラミング言語のようにコードをカスタマイズすることにより、AutoCADに搭載されたすべてのコマンドを自動化できます。
また、AutoCADのLISPは「管理>アプリケーション>Visual LISP エディタ」という項目に格納されています。AutoCADのソフト内でコードの構築・実行ができるので、ぜひ活用を検討してみてください。
AutoCADのLISPとVBAの違い
AutoCADのLISPとは別に、VBAと呼ばれる自動化の実装に役立つ機能が搭載されているのをご存じでしょうか。どちらも似たような仕組みで自動化のカスタマイズができますが、異なる点がいくつもあります。参考として以下に、LISPとVBAの違いを整理しました。
LISP | VBA | |
処理スピード | 早い | やや遅い |
対応関数の数 | 多い | やや少ない |
柔軟性 | 高い | やや低い |
VBAはMicrosoftが提供しているExcelといった別のソフトウェアでも利用されていることから、汎用性の高さが魅力です。しかし、汎用性が高い影響で一部AutoCADのコマンドに対応できません。
対してLISPはAutoCAD用に開発されたプログラムです。
AutoCADとの相性が良いことはもちろん、コード内容を短くして処理スピードを高めやすくなります。
特に行数の多いコードほど処理スピードに差が生まれるため、普段からVBAを使い慣れているならVBA、AutoCADの更なる効率化、自動化に対応したいならLISPを学習するのがおすすめです。
また、AutoCADのLISPを含めて自動化の基礎を学びたいなら、以下の記事をチェックしてみてください。
AutoCADのLISPの入門知識
AutoCADのLISPの使い方を覚える前に理解しておきたいのが、画面構成やコードを記述する考え方についてです。はじめてAutoCADのLISPを利用する方は、ぜひ参考にしてみてください。
AutoCADのLISPの画面構成
AutoCADのLISPは主に次の画面で構成されています。
画面項目 | 内容 |
ツールバー | プロジェクトの作成やデバッグなど管理に関わる機能がまとまっている |
ツールパレット | コードを記述する際の切り取り・コピーや記述するコードの検索などに使える |
ワークスペース | 実際にLISPのコードを記述する画面 |
3項目でまとまるくらい、LISPはシンプルな構成です。
メインとなるのはワークスペースでの作業ですので、まずは操作をする前にどのボタンにどのような機能が含まれているのかをチェックしてみてください。
AutoCADのLISPの記述ルール
AutoCADのLISPに文字列を記述する際には、以下の項目のルールに基づいてプログラムを作成していきます。
コマンド | ( command “circle” (list 5 10) “D” 15 ) ※直径15mmの円を座標(5,10)に挿入する |
リスト | “`lisp (1 5 10) ※1 5 10がリストとして表示される |
関数と引数 | (- 7 5) ; ※結果は2と表示される |
変数と代入 | (setq x 10) ※xに10を代入する |
条件分岐 | ( if(> x 5) (print “xは5より大きいです”) (print “xは5以下です”) ) ※xが5より大きいか小さいかで表示が変わる |
上記の考えで共通するのは、指示したい構文を書くときには()内に記述するというルールです。
後述する役立つコマンドも参考にしながら、実際にAutoCADのLISPでプログラムを組んでみてください。
AutoCADのLISPでよく使うコマンド
AutoCADのLISPでは、作図・設定などを自動化するために、コマンド機能をベースにしたプログラムを組んでいきます。そのなかでもよく利用するLISP用のコマンド記述を以下に整理しました。
コマンド | 内容 |
line | 線分ツール |
circle | 円ツール |
rectang | 矩形ツール |
hatch | ハッチングツール |
color | 色選択 |
lweight | 線の太さ |
style | 文字スタイル |
dimstyle | 寸法スタイル |
上記のコマンドはあくまで一例です。
AutoCADのLISPはAutoCADに搭載されたすべてのコマンドに対応しているので、ぜひコマンドをカスタマイズしながらプログラムを組んでみてください。
なお、コマンドの情報はAutodeskが公開しているリファレンスからも確認が可能です。
AutoCADのLISPの使い方
ここからは、実際にAutoCADのLISPを使いながら図面を作図する方法について解説します。
なお、紹介する内容は初心者向けとして作図コマンドを自動化する流れをまとめました。
LISPを起動してファイルを新規作成する
まずAutoCADを起動したら「管理>アプリケーション>Visual LISP エディタ」をクリックして、上画像と同じ画面を開き「ファイル>ファイルを新規作成」をクリックしてください。
ワークスペース上に文字入力ができるウィンドウが表示されれば準備の完了です。
LISPでプログラムを作成する
前項で紹介した準備が完了したら、実際にLISP上でプログラムを組んでいきます。
なお今回は以下に示す条件に基づき、LISPのプログラムコードを作成していきます。
- 図面内に100×100の四角形を描く
- 表示する座標を(50,50)~(150,150)の範囲とする
上記の条件に基づきコードを記述した場合、次のようにまとめることができます。
(setq pt1 (list 50 150))
(setq pt2 (list 150 150))
(setq pt3 (list 150 50))
(setq pt4 (list 50 50))
(command “pline” pt1 pt2 pt3 pt4 “C”)
コードの考え方としては、まず挿入するポリラインの条件を4つ準備します。
その後にコマンドでポリラインを呼び出すことにより、4つの線を組み合わせて四角形にできるというイメージです。
次に、上記のコードをAutoCADのLISPに反映したら「ファイル>名前を付けて保存」をクリックしましょう。
保存された「〇〇.lsp」という名称のデータをドラッグアンドドロップでAutoCADのワークスペース上に読み込めば、以下と同じ図形が自動で表示されます。
実際に座標の位置を計測してみると、当初の条件と同じ位置に図形が表示されていることがわかります。
また、AutoCADを自動化する方法について、ほかの機能も含めて学びたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
AutoCADのLISPでできること
ここまでAutoCADのLISPの使い方を解説しましたが、プログラムを組むことによって自由かつ自動で図形や設定を反映できるのが特徴です。こういった機能を活用することで、さまざまな用途にAutoCADのLISPを活用できます。
図面の設定を瞬時に完了させる
AutoCADのLISPに次のような設定のルールを与えれば、作図までに時間のかかる図面の準備をすべて一瞬で完了できるようになります。
- 新規図面を作成する
- 座標系を設定する
- レイヤーの設定を準備する
- 図枠を準備する
例えば、コマンドのレイヤーを使えば、レイヤー内の設定を自由に調整できます。
また、ポリライン作図などの機能を使うことで、A3用紙横向きの図枠を用意できるなど、準備にかかる時間を最小限に抑えられるのが魅力です。
類似形状の図面作成を効率化する
業務内でよく利用する製品・部品の図面などがある場合には、あらかじめAutoCADのLISP上で作図のルールを組むことで、一部の数値を書き換えるだけで図面の作成を効率化できるかもしれません。
なかでも頻繁に同じ製品・部品の図面を利用するなら、大幅な作業効率化を期待できます。
作図作業に手間を感じているのなら、ぜひAutoCADのLISPでプログラムを組んでみてください。
AutoCADのLISPをセミナー講習で学ぼう
AutoCADのLISPは作業の自動化に役立つ便利な機能ですが、使いこなすためにはコマンドごとに用意されている記述ルールを覚える必要があります。また、エラーなどが起きた場合にどのような方法で解決できるのかを自身で見つけ出さなければなりません。
しかし、初心者から上記のポイントに対応するのは非常に難しいです。
そこで、もし効率よくAutoCADのLISPを扱えるようになりたいなら、AutoCADの自動化の知識を学べるセミナー講習に参加してみてはいかがでしょうか。
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AutoCADのLISPについてまとめ
AutoCADのLISPは、作図作業やスタイルの設定変更などを自動化することで、作業効率化を実現できる便利な機能です。AutoCADに搭載されたコマンドのほとんどを自動化できるため、繰り返し作業などが多いとお悩みなら、ぜひLISPを活用してみてください。
自動化について学べる独学本はもちろん、プロからAutoCADのLISPについて学べるセミナー講習も提供されているので、自身のスタイルに合う方法で学習をスタートしてみてください。