3DCGは、ゲームやアニメーションの世界では欠かせないものとなっています。3DCGにかかわる技術も日々進化しており、現実と区別がつかないほどリアルな映像作品の制作も可能となってきました。映像作品をみて、ゲームやアニメーションの制作に興味を抱きはじめる人も多いでしょう。
一方で、3DCG系のソフトやツールは数多くリリースされており、どれを使えばよいのか迷ってしまう人も少なくありません。
3DCGソフトの中でも特に多くの利用者を獲得しているのが「3ds Max」と「Blender」です。どちらも高品質な3DCGの作成が可能なソフトウェアですが、両者にはいくつもの違いがあります。比較せずに使い始めると、後悔することにもなりかねません。
本記事では、3ds MaxとBlenderの概要から両者の違い、それぞれのソフトウェアに向いている人や企業の特徴などについて解説します。
3ds MaxとBlenderの概要
最初に、3ds MaxとBlenderの基本的な情報について押さえておきましょう。
3ds Maxとは
3ds Maxとは、AUTODESK社が開発・販売している3DCG作成用のソフトウェアです。ゲームやアニメーションの業界だけにとどまらず、建築や設計にかかわる業界にいたるまで、さまざまな分野で活用されています。
日本の有名なアニメ作品にも活用されるなど世界中のプロフェッショナルが重宝するツールとなっており、3DCG業界では不可欠なソフトウェアといってもよいでしょう。
Blenderとは
Blenderとは、非営利団体であるBlender Foundationが開発・リリースしている3DCGソフトウェアです。基本的な位置付けとしては、3DCGアニメーション作成用のソフトウェアとなっています。オランダ生まれのソフトウェアですが、世界中のクリエイターが愛用するツールとなっており、Blenderを使用して作られた有名なアニメーション映画やゲームも少なくありません。
3ds MaxとBlenderの共通点
3ds MaxとBlenderを比較する際には、両者の共通点も押さえておいたほうがよいでしょう。共通点を理解しておくと両者の違いによりフォーカスでき、どちらを使えばよいのかの選択もしやすくなります。
高い機能性
3ds MaxとBlenderはどちらも、3DCGの画像や映像を作成するのに十分な機能を備えています。機能の豊富さだけではなく、プロの現場で活用されるほど高性能であることも重要な共通点です。3DCGの作成に関しては、できないことはないといっても過言ではありません。
他のソフトウェアとの併用が必要なケースもありますが、機能面で物足りなさを感じたり重大な問題が生じたりすることはまずないでしょう。
豊富なアドオン
3ds MaxとBlenderは、ともに他のソフトウェアとの併用が可能です。プラグインやアドオンなどが可能なソフトウェアが豊富に用意されており、拡張性やカスタマイズ性に優れています。ソフトウェア単体では難しい表現も、他のソフトウェアなどを活用すれば実現可能です。
より豊かな創造性を発揮し具現化するための拡張性が、どちらのソフトウェアにも備わっているといえます。途中で他のソフトウェアに乗り換えなければならないといった事態も避けられるでしょう。
日本語にも対応
3ds MaxとBlenderを開発しているのは、ともに海外のソフトウェア制作関連の企業や団体です。海外で開発・リリースされたソフトウェアには、表示される文字が英語のみ、もしくは、開発元企業が拠点を置く国の言語と英語のみとなっているものも少なくありません。
日本人がそのようなソフトウェアを活用する際には、文字の意味を調べたり覚えたりするところから始める必要が生じます。しかし、3ds MaxとBlenderは、どちらも日本語に対応済みのソフトウェアです。機能の名称なども比較的覚えやすく導入のハードルが下げられる点は、両者に共通したメリットといえます。
3ds MaxとBlenderの違い
3ds MaxとBlenderは、ともに高性能の3DCGソフトですが、相違点も少なくありません。3ds MaxとBlenderの違いを把握・理解したうえで、どちらのソフトウェアを導入するのかを決断する必要があるでしょう。
ここでは、特に慎重に比較したい3ds MaxとBlenderの違いを、以下の項目について解説します。
- 価格
- 動作環境
- 操作性
- サポート
価格
3ds MaxとBlenderの最大の違いは、価格です。3ds Maxが有料であるのに対して、Blenderは無料で利用できます。
3ds Maxでは、主にサブスクリプション契約とフレックスと呼ばれる契約を用意しており、目的などにマッチした契約形態を選択可能です。サブスクリプション契約は、1カ月間で3万6300円、1年間で28万6000円、3年間で85万8000円となっています(価格は2024年8月現在のもので、いずれも税込み)。
価格は時期やバージョンなどによっても異なるため、事前の確認が必要です。フレックス契約は、1日単位でソフトウェアを利用できる従量課金制のプランとなっています。
一方のBlenderはオープンソースのソフトウェアであるため、無料でダウンロードし利用することが可能です。Blenderを開発・リリースしている非営利団体は、多くの有名企業から支援を受けています。これが、高性能な3DCGソフトウェアを一般ユーザーへと無料で提供できる理由です。
Blender自体は無料ですが、有料のアドオンを利用し、より利便性を高めることもできます。求める機能を備えるにはコストがかかるケースもあるものの、無料でも十分高品質な3DCGの作成ができるでしょう。
動作環境
導入前に必ずチェックしておきたいのが、3ds MaxとBlenderの動作環境の違いです。
3ds Max | Blender | |
対応のOS | Windowsのみ | Windows、macOS、Linux |
3ds Maxは、Windowsにしか対応していません。一方のBlenderは、WindowsだけではなくmacOSにも対応しています。Macをメインマシンとしている映像クリエイターは少なくなく、こうした人たちはBlenderを選択せざるをえないでしょう。
また、BlenderはLinuxにも対応しています。使える動作環境が限定されない点はBlenderの大きな魅力です。
操作性
Blenderは、3ds Maxをはじめとした他の3DCGソフトウェアと比較し、画面表示や操作方法が独特であると表現されることが少なくありません。直感的に操作できる部分も少なく、多くの人は習得までにある程度の時間を要するでしょう。3ds Maxと比べて教材などが少ない点も、習得までに時間がかかってしまう原因です。
ただ、操作性に関しては感じ方に個人差があるため、3ds MaxとBlenderのどちらに優位性があるのかの判断は容易ではありません。また、Blenderはアップデートごとに操作性が改善されている点も重要です。
Blenderは無料で利用でき、3ds Maxは体験版を無料でダウンロードできるため、自分に合っているかどうかを一度確認してみるのもよいでしょう。
サポート
3ds Maxは有料のソフトウェアであり価格もとても高額なため、ある程度のサポートサービスが備わっています。購入や使用に関してわからないことがあれば、AUTODESK社のスタッフに尋ねるなどし解決可能です。サポートレベルは購入プランなどによっても変わりますが、基本的なトラブルに見舞われた際に解決できずに困るといったことはないでしょう。
Blenderには、3ds Maxのようなスタッフによるサポートサービスは備わっていません。Blenderの使用中にトラブルが発生した場合は、ネット上の掲示板やSNSなどで尋ね、公式のサポートではない点を理解したうえで解決を試みる必要があります。
こちらの記事では、3ds Maxと他のツールについて比較しています。
3ds Maxが向いている人や企業
3ds MaxとBlenderの違いを押さえたうえで、3ds Maxの導入に適している人や企業の特徴を挙げてみましょう。
アニメやゲームの制作会社
アニメーションやゲームの制作会社、CG映像の制作を主な事業としている企業は、3ds Maxを選択したほうがよいでしょう。建築や設計にかかわる事業を行う企業も同様です。導入や運用にコストはかかりますが、サポートが受けられるためトラブル時の対応面でメリットがあります。
機能面にくわえ安心感にもコストをかけていると考えれば、費用の高さは大きなデメリットとはなりません。とりわけ、企業や事業の規模が大きい場合は、3ds Maxの活用を積極的に検討しましょう。
プロのクリエイターを目指す人
個人であっても、プロのクリエイターを目指す人にとっては選択の価値が高まります。費用はかかったとしても、世界中のプロのクリエイターと同じ環境で作業ができる点は魅力です。
入社を目指す制作会社や企業が3ds Maxを導入している場合も、選択の余地が出てくるでしょう。3ds Maxの扱いに慣れておくことや、一定のレベル以上の3DCGが作成できる技術を養っておくことは、制作会社などへの大きなアピールとなります。
長く3DCGの世界に携わるつもりの人にとっても同様です。企業が有料で提供しているソフトウェアのため、長期間にわたり安定して使い続けられる可能性が高いでしょう。
Blenderが向いている人や企業
Blenderのメリットは、高性能でありながら無料で利用できる点です。そうした特徴を踏まえたうえで、Blenderの導入が向いている人や企業の特徴を整理してみましょう。
3DCGにはじめてかかわる人
3DCGに興味をもちはじめた人や、これから勉強をスタートさせる人は、Blenderを選択してみましょう。最初から高額なソフトウェアを導入する必要はありません。無料の3DCGソフトから使い始めたほうが、途中で制作をやめたり興味を失ったりしてしまったときにも後悔が少ないでしょう。
特に、アニメーションやゲームの制作に興味をもっている子どもにはBlenderが最適です。費用もかからず、数多くのクリエイターも活用している高性能の3DCGソフトで遊べます。
個人や中小企業
3ds Maxに強いこだわりがある場合を除いて、個人で使用する場合にはBlenderが第一候補となるでしょう。クライアントなどから業務を委託されている個人事業主であっても、Blenderで十分高品質な3DCG作品が制作できます。Blenderは無料で利用可能ですが、商業利用も認められています。
フリーで活動しているクリエイターはもちろん、制作にあまりコストをかけられない中小企業でも利用価値が高いソフトウェアといえるでしょう。
3ds MaxとBlenderの違いまとめ
3ds MaxとBlenderだけでなく、似たソフトの使い分けについて知りたい方は上記の動画がおすすめです。
3ds MaxとBlenderは、ともに高性能の3DCGソフトウェアとして、世界中の制作会社やプロのクリエイターに愛用されています。両者の大きな違いの一つは、価格です。3ds Maxは有料でありプランがいくつか用意されていますが、Blenderは無料で利用できます。
また、3ds MaxはWindowsのみでしか使えないものの、BlenderはMacOSでも使用可能です。3ds Maxはサポート体制が整えられていますが、無料のBlenderは、トラブルや疑問が生じた場合でも基本的には自分自身で解決しなければいけません。
こうした違いを押さえつつ、自分や自社にはどちらが適しているのかを判断し導入しましょう。