観たり遊んだりする人の没入感を高めるような映像作品の制作には、3DCG技術と専用のソフトウェアが欠かせません。3DCG用ソフトウェアの中でも、プロのアーティストやデザイナーから絶大な支持を得ているものの一つに「V-Ray for 3dsMax」があります。
本記事では、3DCGの世界を劇的に進化させているV-Ray for 3ds Maxについて、概要や価格、購入前に押さえておきたいポイントなどを解説します。
V-Ray for 3ds Maxとは何か
V-Ray for 3ds Maxを知るには、V-Rayと3ds Maxの、それぞれについて押さえておかなければいけません。ここでは、各ソフトウェアの概要を解説したうえで、V-Ray for 3ds Maxとは何かについてまとめます。
V-Rayとは
V-Rayとは、建築や映像に関する3Dビジュアライゼーション技術を開発し、数々の関連製品を手がけるChaos社のレンダリング用ソフトウェア(レンダラー)です。グラフィックにおけるレンダリングとは、3DCGソフトなどで作成したモデルに、さらに処理を加えながら質感を増したり新たな画像や映像を生成したりすることを指します。
3ds Maxとは
3ds Maxとは、Chaos社と同様に建築やエンジニアリングをサポートする製品を開発・販売しているAUTODESK社の3DCGソフトウェアです。直感的な操作でリアルな表現が可能なソフトウェアであり、世界中の多くのアーティストやデザイナーが使用しています。
映像作品に使われているのはもちろんのこと、建築業界などでも重宝されており、ハイクオリティな3DCGモデルの制作には欠かせないツールといえるでしょう。
以下の記事では、3ds Maxについて詳しく紹介しています。
V-Ray for 3ds Maxとは
V-Ray for 3ds Maxとは、3ds Maxのためのレンダラーです。V-Rayとの組み合わせにより3ds Max単体では難しい、ハイクオリティな映像や画像が生成できます。V-Ray for 3ds Maxはバージョンアップが繰り返されており、2024年8月の段階で「V-Ray 6 for 3ds Max」がリリース済みです。
同バージョンでも、さらなるアップデートが行われています。V-Ray for 3ds Maxの機能や性能は、今後も進化し続けていくでしょう。
3Dビジュアライゼーションの他のツールは、こちらの記事でもご紹介しています。
V-Ray for 3ds Maxでできること
V-Ray for 3ds Maxでできることは多岐にわたります。
- ライティング効果
- カメラエフェクト
- マテリアルの演出
以下に、代表的な演出や効果を紹介いたします。
ライティング効果
夕暮れの空や夜に輝く電球の明かりなど、絶妙なライティング効果も、V-Ray for 3ds Maxを使用すれば簡単に作り出せます。天候のシミュレーション機能も備え、太陽光や空に浮かぶ雲などをよりリアルに演出できるのも魅力です。光の反射・分散の具合をコントロールしたり、ライトに照らされ画面に浮かび上がるホコリや霧を演出したりすることも難しくありません。
映像をよりリアルにみせるための細微な調整ができるように作られています。時間の経過によって起こるコントラストの変化も演出でき、リアルな3DCGだけではなく幻想的な情景も作り出せるでしょう。
V-Ray for 3ds Maxであれば、こうしたさまざまなライティング効果を簡単な操作で演出できます。
カメラエフェクト
よりリアルな3DCGの作成には、カメラエフェクトも欠かせません。V-Ray for 3ds Maxではカメラエフェクトを活用し、写真と同様の質感や効果も生み出せます。レンズ効果の細かな調整もでき、自動露出やホワイトバランスの設定も可能です。
本格的なカメラと変わらない操作性を備えており、本物の写真との見分けが難しいほどのクオリティを手に入れられるでしょう。カメラごとに好きな解像度でバッチレンダリングすることもできるなど、カメラエフェクトの機能はさらに向上しています。レンズエフェクトのシミュレーションも容易であり、ブルームやグレアなどの測定も可能です。
マテリアルの演出
花や宝石、髪の毛など一般的な3DCGソフトウェアでは表現の追求が難しいマテリアルでも、V-Ray for 3ds Maxであれば、本物と同様の質感を生み出せます。シンプルな操作で、半透明マテリアルの作成やセルシェーディング効果の追加などができる点も魅力でしょう。
ラグジュアリーな光沢感が作り出せる一方で、劣化した雰囲気や古びた質感も演出できるなど、幅広い効果を画像や映像に落とし込めます。洋服などにベルベットやサテン、シルクなどの繊細なファブリック表現を加えることも難しくありません。
正確なシミュレーションと高度なレンダリングが行える点は、V-Ray for 3ds Maxの最大の特徴といってもよいでしょう。
V-Ray for 3ds Maxの強み
ここまで、V-Ray for 3ds Maxで演出できる効果の一部を紹介しましたが、このソフトウェアの特徴はそれだけにとどまりません。ここでは、個別の機能とは別に、V-Ray for 3ds Maxのもつ強みについて紹介しましょう。
処理スピードが速い
V-Ray for 3ds Maxは、高度なレンダリングを行えるにもかかわらず、処理スピードが速い点も大きな魅力です。エクスポートの高速化や、複数の機能の一元化などにより効率化を図り、処理スピードを一段と加速させています。
メモリ使用量の削減やリロードの不要化も、処理速度を向上させている大きな要因です。機能の進化と処理スピードの向上を両立させている点は、V-Ray for 3ds Maxの魅力や価値をさらに押し上げています。
改良により進化し続けている
V-Ray 6 for 3ds Maxへのバージョンアップでは、最大で20倍もの高速化に成功しています。バージョンが更新されるたびに性能が強化され、さまざまな機能が追加され続けているのも大きな強みです。シミュレーションの正確性も増し、さらに繊細な演出も可能となっています。今後も、V-Ray for 3ds Maxは進化し続けるでしょう。
数々のソフトウェアとともに使用できる
V-Ray for 3ds Maxは、3ds Maxに対応している多くのプラグインソフトウェアとの互換性も持ち合わせています。V-Ray for 3ds Maxをサポートするソフトウェアは増え続けており、シームレスな状態で扱える点も強みです。それぞれのソフトウェアの特徴を生かしながら、リアルな表現やハイクオリティな映像が生み出せます。
V-Ray for 3ds Maxの価格
V-Ray for 3ds Maxの価格プランは複数用意されており、購入が月単位か年単位かでも単価に大きな違いがあります。例として、V-Ray 6 for 3ds Maxの価格をみてみましょう。
プラン名 | 1カ月単位の購入 | 年間購入 |
V-Ray Solo | 月額1万2200円 | 月あたり6200円 |
V-Ray Premium | 月額1万7900円 | 月あたり8900円 |
「V-Ray Solo」のプランでは、年間購入だと50%ほどもお得です。
短期的な使用でなければ、1カ月単位での購入を選択する理由はないでしょう。
上記は、いずれも個人・法人向けのプランで、かつ税込価格です。また、バージョンが異なると価格も変化します。備えられているサービスやサポート内容の違いも確認しながら、適切な購入プランを選択しなければいけません。はじめて利用する人のために、V-Ray for 3ds Maxでは30日間の無料トライアルを用意しています。
このソフトウェアのもつ機能や特徴などが自身や自社の目的にマッチしているかを、無料トライアルで確認してから具体的な購入を検討してみましょう。
V-Ray for 3ds Max購入前に確認しておきたいポイント
V-Ray for 3ds Maxは高性能なレンダラーであり、設定された価格以上の価値を提供してくれるソフトウェアです。しかし、購入前のチェックを怠ると、想定通りに動作しなかったりトラブルが発生した際に困ったりしかねません。
ここでは、V-Ray for 3ds Maxの購入前に確認しておきたいポイントをまとめましょう。
動作環境を確認
V-Ray for 3ds Maxを正常かつ安定的に作動させるための環境が整っているかの確認は必須です。例えば、Windows(10/11)であることや、8GB以上のRAM(推奨は16GB以上)を搭載していることなどの条件が、V-Ray for 3ds Maxの動作環境として定められています。他にもGPUやCPUの必須環境や推奨環境も提示されているので、事前に確認しておきましょう。
互換性やサポート環境を確認
V-Rayと3ds Maxは異なるソフトウェアのため、互いのバージョンがサポートし合っているのかを確認する必要があります。例えば、V-Ray 6は、3ds Max 2020〜2025までは利用可能ですが、3ds Max 2017以前のバージョンには対応していません。3ds Max 18および19では、一部機能がサポートされていないため注意が必要です。
また、3ds Max 2025は、V-Ray 6には対応しているものの、V-Ray 5以前のバージョンでは利用不可となっています。基本的には最新のバージョンを導入することになりますが、タイミングによっては事前の確認が欠かせないでしょう。
日本語のサポートは基本有償
日本人がV-Ray for 3ds Maxを購入するにあたり注意したいのが、日本語によるサポートについてです。ライセンスサポートは日本語に対応しており、英語によるサポートも無償で提供されています。
しかし、日本語による技術サポートやオンラインマニュアルなどは有償での提供となっているため注意しなければいけません。トラブルなどに備えサポートが必須である場合は、サポート付きパッケージを購入しましょう。
V-Ray for 3ds Maxで創造性を広げよう
3ds Maxをより活かすためのレンダラーであるV-Ray for 3ds Maxは、それぞれのソフトウェアのもつ魅力の相乗効果により、使用者の創造性をさらに広げてくれるでしょう。複雑な表現を高速で処理しつつ、現実ではないかと錯覚するほどのリアルな3DCGを作り上げられます。
アップデートにより新たな機能が増え続けているにもかかわらず、処理スピードが向上している点も魅力です。はじめて利用する人や企業に向けて、無料トライアルも用意されています。V-Ray for 3ds Maxを導入し技術を向上させリアルで繊細な、あるいは幻想的なイメージを画像や映像に落とし込んでみましょう。