近年、デジタル技術やAIの進化により、企業には新たなスキルや知識を持つ人材がますます求められています。その中で注目されているのが「リスキリング」です。
リスキリングは、従業員が新しい業務や職種に対応できるようスキルを再習得する企業主導の取り組みであり、従来の「リカレント教育」とは目的や主体が異なります。
本記事では、リスキリングの導入事例を10選紹介します。リスキリングの定義やリカレント教育との違い、メリット成功のポイントなどもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
リスキリングとは?
リスキリングとは、企業が従業員に対して新しい業務や職種に必要なスキルを身につけさせるための「学び直し」の取り組みです。
特にDXやAIなど、時代の変化に合わせて求められるスキルが大きく変わる中、社員が今後も活躍できるように企業が主導して行う再教育・再訓練を指します。リスキリングを行うと、組織全体の競争力や柔軟性が高まります。
自社に最適なリスキリングを進めるなら、専門コンサルタントが現状分析からカリキュラム設計、実践的な研修まで一貫サポートする「DX研修・人材育成サービス」の活用がおすすめです。
初めての導入でも安心して取り組める体制が整っており、現場で活きるスキルを効率的に身につけることができます。
リスキリングとリカレント教育の違い
「リスキリング」と「リカレント教育」はどちらも社会人の学び直しを意味しますが、実は目的や進め方に違いがあります。リスキリングは企業が主導し、業務に直結するスキル習得を目指します。
一方、リカレント教育は個人が主導し、キャリアアップや自己実現など幅広い目的で学び直す点が特徴です。
| 項目 | リスキリング | リカレント教育 |
| 主体 | 企業(会社が主導) | 個人(本人が主導) |
| 目的 | 新たな業務や職種に必要なスキルの習得(特にDXやAIなど) | キャリアアップや自己実現のための幅広い学び直し |
| 学びの内容 | 企業が求める実務・業務に直結したスキル | 個人の興味や将来設計に基づく多様な分野 |
| タイミング | 現職のまま、業務と並行して行うことが多い | 必要に応じて仕事を一時離れ、学びに専念する場合も |
| 代表的な例 | DX研修、AI研修、社内プログラム | 大学や専門学校への再入学、資格取得など |
企業がリスキリングに取り組むメリット

企業がリスキリングに取り組むことで、さまざまなメリットを得ることができます。ここでは、主な4つのメリットについて詳しく解説します。
- 業務効率化・生産性向上
- 人材不足・採用コストの削減
- 従業員エンゲージメント・モチベーション向上
- 新規事業・イノベーション創出
①業務効率化・生産性向上
リスキリングによって従業員が最新のデジタルスキルや業務知識を習得すると、日々の業務がよりスムーズに進むようになります。業務の自動化や新しいツールの導入が可能となり、作業時間の短縮やミスの削減につながります。結果として生産性が向上し、企業全体の競争力も高まります。
②人材不足・採用コストの削減
必要なスキルを社内で育成することで、外部から新たな人材を採用する手間やコストを大幅に削減できます。既存社員の能力を引き出すことで、人材不足の課題にも対応しやすくなり、即戦力となる人材を効率的に確保できます。
下記では、AIの知識をもつ人材を育てるために必要なスキル、ステップなどを詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
③従業員エンゲージメント・モチベーション向上
新しい知識やスキルを学ぶ機会が増えると、従業員の成長意欲や自己肯定感が高まります。自身のキャリアアップを実感できるため、仕事への満足度や会社への愛着も向上し、結果的に離職率の低下にもつながります。
④新規事業・イノベーション創出
多様なスキルや視点を持つ人材が増えると、これまでにないアイデアや新しいビジネスモデルが生まれやすくなります。組織全体でイノベーションが促進され、新規事業の立ち上げや市場での優位性確保にも大きく貢献します。
企業のリスキリング導入事例10選

企業がリスキリングを導入した事例を10選紹介します。さまざまな業種・規模の企業が実践しているリスキリングの具体例を知ることで、自社の人材育成やDX推進のヒントが得られます。
| 企業名 | 主な取り組み内容 | 成果・特徴 |
| ①富士通 | 学習プラットフォーム「Fujitsu Learning Experience」などを活用し、DX/AI/クラウド分野で自律的学習を促進。 | 社員の主体的なスキルアップが進み、DXカンパニーへの変革を推進。 |
| ②日立製作所 | 全社員約16万人対象にDX基礎教育・eラーニング・集合研修を実施。 | ITとOTを融合したソリューション創出や、全体のデジタルリテラシー底上げを実現。 |
| ③ダイキン工業 | 社内大学「ダイキン情報技術大学」を設立し、2年間業務を離れてAI・デジタル技術を集中学習。 | 1,500人のデジタル人材を輩出、製品開発・新規事業創出に貢献。 |
| ④西川コミュニケーションズ | デジタル分野への事業転換に伴い、教育プロジェクトで社員のデジタルスキルを強化。 | デジタル事業が売上の約半分を占めるまでに成長、学び続ける組織風土を醸成。 |
| ⑤キャノン | 「CIST」設立、AI・クラウド・ソフトウェアなどの専門教育を実施。 | 職種転向希望者のデジタルスキル習得を支援、専門人材の育成体制を強化。 |
| ⑥JFEスチール | 「JFE Digital Transformation Center」設立、データサイエンティスト育成プログラムを実施。 | 350人以上のデータ人材を輩出、2024年度末までに600人育成目標。 |
| ⑦トラスコ中山 | 営業・物流部門のジョブローテーションとDX研修を組み合わせたリスキリングを推進。 | DX銘柄に2年連続選出、現場力とデジタル活用力の両立を実現。 |
| ⑧ZOZO | 全社員にリスキリング手当を支給し、自学習を促進。 | 従業員の自発的な学習意欲が向上、デジタル施策の内製化が進展。 |
| ⑨住友ファーマ | データ駆動型マーケティングやAI活用を推進、全社的なデジタル教育プログラムを展開。 | 生産性向上や新規事業創出、全社的なデジタル活用の定着を実現。 |
| ⑩パーソルグループ | グループ横断でDX・AI人材育成研修を導入、eラーニングや実践型ワークショップを展開。 | グループ全体でのDX推進力が強化され、顧客への新サービス創出にもつながっている。 |
①富士通
富士通は、学習プラットフォーム「Fujitsu Learning Experience」を活用し、DXやAI、クラウド分野で社員一人ひとりの自律的な学習を積極的に促しています。社員が自発的に新しい知識や技術を身につける風土が根付き、企業全体の競争力強化に繋がっています。
②日立製作所
日立製作所は、約16万人にのぼる全社員を対象にDX基礎教育やeラーニング、集合研修などを幅広く実施しています。
特にITとOT(オペレーショナルテクノロジー)を融合させた人材育成に注力し、現場とデジタルの両方に強い人材を育てています。全社的なデジタルリテラシーの底上げを実現し、イノベーション創出や新たなソリューション開発につなげています。
③ダイキン工業
ダイキン工業は、社内大学「ダイキン情報技術大学」を設立し、AIやデジタル技術を集中的に学ぶプログラムを展開しています。1,500人のデジタル人材を育成し、製品開発や新規事業創出に大きく貢献しています。
④西川コミュニケーションズ
西川コミュニケーションズは、デジタル分野への事業転換に合わせて、社員のデジタルスキル強化を目的とした教育プロジェクトを積極的に推進しています。
これにより、デジタル事業の売上が全体の約半分を占めるまでに成長しました。社員が自ら学び続ける組織風土が根付き、変化に強い企業体質を実現しています。
⑤キャノン
キャノンは「CIST(Canon IT Solutions)」を設立し、AIやクラウド、ソフトウェア分野の専門教育を実施しています。職種転向を希望する社員にもデジタルスキル習得の機会を提供し、専門人材の育成体制を強化しています。
社内の多様な人材が新たな分野で活躍できるようになり、企業全体のデジタル化と競争力強化を実現しています。
⑥JFEスチール
JFEスチールは、デジタル変革を推進するため「JFE Digital Transformation Center」を設立し、データサイエンティスト育成プログラムを積極的に展開しています。専門的な研修を通じて、現場の課題解決や業務効率化に直結するデータ活用力を強化しています。
⑦トラスコ中山
トラスコ中山は、営業や物流部門でジョブローテーションを実施し、DX研修と組み合わせたリスキリングを推進しています。従業員がさまざまな業務を経験しながらデジタルスキルを習得できる仕組みを作っています。
現場力とデジタル活用力の両立を図った結果、DX銘柄に2年連続で選出されるなど、業界内での競争力向上と新たな価値創出に成功しています。
⑧ZOZO
ZOZOは、全社員にリスキリング手当を支給し、自主的な学習をサポートする制度を導入しています。個々の社員が自身に必要なスキルを自由に選び、学びを深められる環境を作っています。従業員の学習意欲が高まり、デジタル施策の内製化や新しいサービス開発が加速しています。
⑨住友ファーマ
住友ファーマは、データ駆動型マーケティングやAI活用を全社的に推進し、デジタル教育プログラムを展開しています。従業員が最新のデジタル技術を学ぶことで、生産性の向上や新規事業の創出につなげています。
リスキリングを行うことで、全社的なデジタル活用が定着し、変化に強い組織づくりを実現しています。
⑩パーソルグループ
パーソルグループは、グループ全体でDX・AI人材育成研修を導入し、eラーニングや実践型ワークショップを積極的に展開しています。人材育成を進めることで、グループ全体のDX推進力が大きく向上しています。
リスキリングを成功させるポイント

リスキリングを企業で成功させるためには、単に研修を実施するだけではなく、いくつかの重要なポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、リスキリングを効果的に進めるための具体的なポイントについて紹介します。
- 明確な目標・指標の設定
- 学びやすい環境の整備
- 学んだスキルを実践できる場の提供
- 外部サービスの活用
①明確な目標・指標の設定
リスキリングを成功させるには、まず「どんなスキルを、誰に、どのレベルまで身につけてほしいのか」といった具体的な目標や指標を明確にすることが重要です。
ゴールがはっきりしていれば、研修内容や進捗管理もスムーズになり、成果も測定しやすくなります。KPIや達成基準を事前に設定し、全員で共有しましょう。
②学びやすい環境の整備
従業員が無理なく学び続けられるようにするためには、eラーニングや社内研修、学習時間の確保など、学びやすい環境づくりが欠かせません。仕事と両立できる柔軟なスケジュールや、質問しやすい雰囲気を整えると、社員の学習意欲を高めることができます。
下記では、おすすめのeラーニングサービスについてまとめているので、ぜひ参考にしてください。
③学んだスキルを実践できる場の提供
新しく身につけた知識やスキルは、実際の業務やプロジェクトで活用することで定着します。ローテーションや新規プロジェクトへの参加など、実践の機会を積極的に用意しましょう。実務での経験を通じて、学びが成果につながりやすくなります。
④外部サービスの活用
社内だけでリスキリングを完結させるのは難しい場合もあります。専門の研修サービスや外部講師、オンライン講座などを活用することで、最新の知識や実践的なスキルを効率よく習得できます。自社の課題や目的に合わせて、適切な外部サービスを選びましょう。
リスキリングに使える補助金・助成金

リスキリングやDX推進に取り組む企業にとって、補助金や助成金の活用は大きな支援です。国や自治体が提供する各種制度を利用すれば、研修やIT導入、設備投資などの費用負担を大幅に軽減できます。下記の表で主な補助金・助成金の特徴と支援内容をまとめています。
| 制度名 | 特徴 | 支援内容 |
| 人材開発支援助成金 | 企業や個人事業主が従業員に職業訓練(リスキリング)を行う際に、訓練経費や賃金の一部を助成。 |
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| DXリスキリング助成金(東京都) | 都内中小企業がDX研修を実施した場合、経費の一部を助成。 |
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| IT導入補助金 | ITツールやシステム導入費用の一部を補助。 |
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| ものづくり補助金 | 生産性向上やサービス開発に関する設備投資等を支援。 |
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| 地方自治体独自の補助金 | 各自治体が独自に実施。講座受講や資格取得費用の一部を補助。 |
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リスキリングを成功させるDX研修・人材育成サービス
DX研修・人材育成サービスは、企業がリスキリングを進めるうえで最適なサポートを提供してくれます。専門コンサルタントが現状の課題を丁寧に分析し、各社の目標や人材像に合わせて最適なカリキュラムを提案します。
実践的な内容で、学んだスキルを現場ですぐに活かせるのが特長です。初めてリスキリングに取り組もうと考えている企業はぜひ利用してみてください。
リスキリング企業事例についてのまとめ
リスキリングは、企業が変化の激しい時代を生き抜くために不可欠な取り組みです。DXやAIの進展に対応し、社員一人ひとりが新たなスキルを身につけることで、組織全体の競争力や柔軟性が大きく向上します。
事例や補助金、成功のポイントを参考にしながら、自社に合ったリスキリング施策を進めましょう。