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【2025】建築のEPS(電気配線スペース)とは?PS・DSとの違いや図面上の見方を解説

建築図面に記載されている「EPS(電気配線スペース)」について、発泡スチロールの名称と混同してしまう、またPSやDSとの違いが分からないとお悩みではないでしょうか。

そこでこの記事では、EPSの概要やEPS室・分電盤の違い、建築図面上のEPSの配置方法や注意点をわかりやすくまとめました。材料としてのEPSとの違い、CAD作図のポイントも紹介しているので、建築におけるEPSを理解する参考にしてみてください。

建築のEPS(電気配線スペース)とは?

EPSのイメージ

EPSとは「Electric Pipe Space」の略称で、日本語名を電気配線スペースと言います。主に建築物における電気配線のための縦スペースのことであり、建築物全体に電気を供給する際に必要となる重要スペースです。

一般的に、廊下や階段室など、共用部の端にまとめて配置されることが多く、幹線ケーブルや通信線、制御線などを縦方向(上下方向)に通す際にスペースを設けます。

また「縦シャフト(垂直配線経路)」として、建築図面に明示するのが基本であり、EPSが適切に設計されていないと、改修時の配線系統がわからずに工事が複雑化するほか、工事トラブルやが起きる原因になるかもしれません。

EPSは建築における電気インフラの「通り道」であるため、建築設計の初期に確保すべきスペースだと覚えておきましょう。

PS(パイプスペース)との違い

PS(パイプスペース)のイメージ

EPSとPS(パイプスペース)はどちらも建物内の縦シャフト(垂直配管スペース)ですが、次のように用途が異なります。

  • EPSは電気系統を通すスペース
  • PSは主に給排水管を通すスペース

建築設備におけるシャフト(パイプスペースなど)をひとまとめにすると、将来的なメンテナンスや更新が難しくなるほか、誤って関係のないものを壊してしまうリスクがあります。また電気工事中に排水管を壊すと漏電といった事故が起きるかもしれません。

そこで、電気系統はEPS、給排水系統はPSという風に分けることで、安全の確保、そして工事の円滑化が可能となります。

なおPS内には、防火区画貫通のためのパイプスリーブや、点検口を設けられるケースも少なくありません。対してEPSは、点検性や安全性が重視され、ファイアストップや配線固定具といった安全設備などを設置します。

DS(ダクトスペース)との違い

ダクトスペースのイメージ

前述と同様にDS(ダクトスペース)も、建築物内に設けられる縦シャフトです。
しかし、対象となる設備が「空調」「換気」系統である点が異なります。

例えば「空調ダクト」「換気ダクト」というように、それぞれ専用のスペースを設けて通すのが特徴です。冷暖房や給気・排気など、空気の流れを制御する機械設備の導管を通すほか、建築物のダクトには通気性能や断熱、騒音・結露対策などを実施するのが特徴です。

建築図面に記載する記号も用途も明確に異なるため、設計段階での識別が重要となります。
共用部の設備設計ではこれらの違いを意識して対応しましょう。

また建築設備系のソフトウェアとしてよく用いられているのがRebroです。
以下の記事で詳しいソフト情報をチェックしてみてください。

【2025】建築設備専用CAD「Rebro」の評判は?使用が難しいと言われる理由も紹介

建築物にあるEPS室とは?

電気系統を通すスペースである「EPS」とは別に、理解しておきたいのがEPS室です。
通常のEPSとは明確な役割の違いがあるため、以下より具体的な用途について解説します。

マンション・オフィスビルにおけるEPS室の役割

EPS室のイメージ

EPS室とは、建築物における電気配線スペース(EPS)をまとめた専用室のことであり、主にマンションやビルなどの中高層建築物に設けます。参考として、マンション・オフィスビルにおけるようとの違いをまとめました。

マンションのEPS室 オフィスビルのEPS室
電気の流れ 住戸ごとの分電盤に幹線を引き込む 各テナント区画またはゾーンへ分岐供給
通信設備 インターホン、テレビ共聴、LAN LAN、電話回線、光回線、セキュリティ設備等
主な配置場所 共用廊下・階段室に接する パントリー裏・EVホール横などアクセス良好な場所
点検・保守性 年1回の受電点検や工事対応を想定 設備業者による定期メンテナンスを想定

規模が大きい建築物の場合、電気配線の幹線や分電盤が複雑化しやすいため、効率的に収容・管理するために専用室を設けるのが特徴です。例えば、オフィスビルの各階にはEPS室が設置され、次のような設備がまとめられています。

  • 幹線ケーブルの通線ラック・支持金物
  • フロアごとの分電盤(照明・コンセント回路)
  • LAN・通信回線ボックス
  • 火災報知器関連の制御盤

各フロアに電気を分配するためには、電源をフロアごとに配線し、各住戸(集合住宅の場合)や室内(ビルの場合)へ電力を送らなければなりません。そこで、EPS室は建築物の電気系統の中心を担い、電気・通信・安全設備を適切に管理するために設置します。

分電盤との違い

EPSと分電盤は、それぞれ次のように電気設備における役割が違います。

EPS(配線スペース) 分電盤(制御機器)
定義 幹線や通信線を縦に通す空間 回路を分岐・制御・遮断する盤装置
配置場所 各階のEPS室や縦シャフトなど EPS室の内部、個別の設備室など
主な機能 電線の通線・保守ルートの確保 分岐回路の構成、安全装置の設置
保守対象 壁面・ラック・配線 ブレーカー、漏電遮断器、端子台など

上記より、EPSは、幹線ケーブルや通信線などの「電線を通すための空間」です。
一方で分電盤は、建物の「配電を制御・分岐・保護する設備機器」であり、ブレーカーや漏電遮断器などの電気保安機能を持ちます。

また建築図面でも「EPS」は平面図や断面図で空間として表記され、「分電盤」は機器記号としてシンボルマークで表現されるのが特徴です。混同しやすい要素ですので、設計時には2つの違いに注意しましょう。

建築図面上の「EPS」表記はどこにある?

EPSの設置平面図

建築図面ではEPSを平面図・断面図・建築設備図などに描く必要があります。
よく掲載するポイントを以下にまとめました。

  • 「平面図」の場合は、各階の共用廊下付近や階段室のそば
  • 「断面図」の場合は、EPSの上下階連続性を明示
  • 「建築設備図」の場合は、 EPS内の分電盤配置や幹線ルート

また、施工図などにはEPSの内部寸法(幅・奥行)や点検口の配置も詳細に描きます。

EPS(電気配線スペース)を配置するポイント

共用部に設置されたEPS

建築物のEPSを設計・配置する際には、幹線ルートの「効率性」「施工性」「維持管理」を考慮し、階ごと、そして建物全体での整合性の取れた場所に配置することが重要です。

以下に、配置する際の注意ポイントをまとめました。

各階同位置が望ましい

EPSは、なるべく各階で同じ位置に揃えて配置するのが理想です。

階ごとにEPSの位置がずれると、幹線のルートが複雑化し、ケーブルの曲がりや長さが増加して施工性が悪化する恐れがあります。また、火災時の安全確保や点検のしやすさにも影響があるため、可能な限り同じ位置に設置して、シンプルな建築配置にしましょう。

電気室の直上にない場合は1階にも設ける

電気室が建物の最下階(地階)にない場合は、1階にもEPSを確保しましょう。

主幹線は電気室~上階へと立ち上がるため、1階にEPSがないと幹線経路をつくれません。
また壁貫通や余計な曲線配管が発生するため、1階の設置は必須と考えて幹線設計を実施しましょう。

電気室~1階EPSの経路は地下ピットなどを利用する

電気室が地下階にある場合、建築物1階のEPSへ幹線を通す場合には、次のような経路を確保しましょう。

  • 地下ピット
  • スリーブ

地下からの立ち上げは「経路の事前確保」がカギですので、ピット設計は早めの段階から検討しておくのがおすすめです。

EPSは維持管理のしやすさに配慮して共用部に設置する

EPSは維持管理をする際の影響にならないよう、居住空間ではなく、共用廊下や階段室など「共用部」に配置するのが原則です。

国土交通省の指針でも、共用部配置を基本とし、点検スペースを50cm以上確保することが推奨されているため、基準準拠の設計を実施しましょう。

建築材料のEPSとの違いに注意

土木で用いられるEPS工法
出典:発泡スチロール協会

建築物内に設置するEPSと混同されやすいのが、建築材料として用いられるEPS(発泡スチロール)です。以下に、異なるポイントや注意点をまとめました。

建築材料のEPS(発泡スチロール)とは?

建築材料のEPSは、正式名称を「Expanded Polystyrene」と言い、発泡スチロールのことを指します。

主に建築物の断熱材として広く使われており、熱伝導率が低くて断熱性能に優れるため、建物の外断熱・屋根断熱・基礎断熱などに最適です。

建築士・設備士のなかでも、図面作成時や発注書で「EPS」という単語だけを見て誤解が生じるケースが少なくありません。特に新人技術者は注意が必要です。

建築材料のEPS(発泡スチロール)は土木でも活用

EPS材は建築分野だけでなく、土木工事でも次のような目的で活用されています。

  • 軽量盛土材
  • 地盤改良材

一般的な土やコンクリートに比べて1/100程度の軽さであり、地盤にかかる荷重を大幅に軽減できることから、軟弱地盤や斜面造成に有効です。土のように重機等を使うことなく設置できるため、施工が早く、再掘削性にも優れています。

国土交通省でも「軽量盛土工法マニュアル」という基準書のなかで、正式にEPSの使用を推奨しています。

また建築設計全般の知識を身につけたい人は、以下の記事をチェックしてみてください。

【2025】建築設計とは?利用するツールや必要な資格も紹介

EPSのCAD作図練習はセミナー講習がおすすめ

EPSの図面作成イメージ

EPSの位置や寸法を正確に図面に反映したいなら、まずはCADによる作図練習と、実務をこなすことが欠かせません。また建築設備設計では、寸法・点検口・貫通スリーブの位置まで明確に示す必要があり、正確な図面作成スキルが不可欠です。

しかし、自身だけでうまくCADソフトを操作できないとお悩みの人も少なくないでしょう。

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建築図面のEPSについてまとめ

EPSは、建築設備における電気配線の「縦方向の通り道」であり、正確な図面理解と適切な配置計画が建物の安全性や保守性を左右します。

EPSは土木にも別の製品の名前として使われているほか、同じ建築のなかでもPS・DSなど類似の用語が多々あります。本記事を参考に名称を理解することはもちろん、CADを用いた作図にもチャレンジしてみてください。

建築EPSのアイキャッチ
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