「DXを推進したいけれど、どのeラーニングサービスを選べばよいのかわからない」と悩む方は多いでしょう。
近年、DXは業種や規模を問わず企業成長の重要な取り組みであり、その基盤を支える人材育成の方法として、時間や場所に縛られず学習できるeラーニングが注目を集めています。しかし、DX研修向けのeラーニングサービスは、基礎知識を中心に学習するものから、デジタルスキル標準に準拠した専門性の高いコンテンツなどさまざまなタイプが存在します。
そこで本記事では、失敗しないために押さえておきたい3つの選び方のポイントとともに、DX研修におすすめのeラーニングサービス10選をわかりやすく解説します。
DX研修向けeラーニングサービスとは
DX研修向けeラーニングとは、企業のDX推進を支える人材を育成するために、ITの知識やスキルをオンライン上で効率的に学べるサービスです。専門の講師や教材を用意する必要がなく、PCやスマホさえあれば、いつでもどこでも学習を進められるのが特徴。特に、全社員のデジタルリテラシー向上が求められる今、eラーニングサービスを導入することで、社内研修の負担やコストを削減できます。
eラーニングサービスでできることは主に以下5つです。
- テーマ別の動画やテキストを自分のペースで学べる
- テスト結果や回答をシステムで簡単に管理・集計できる
- 自社専用のオリジナル教材を作って配信できる
- 職種や役職ごとにカリキュラムを設定できる
- 学習の進捗や修了状況をすぐに確認できる
このようにDX研修向けeラーニングサービスは、単なるオンライン学習にとどまらず、企業のDX推進を支えるのです。
料金体系と費用相場
DX研修向けのeラーニングの料金体系と費用相場は以下の表を参照ください。
料金体系 | 費用相場 | 概要 |
月額型 | 1,000円〜30,000円/月 | 月額固定で数百本〜数千本の動画を学び放題 |
従量課金型(一人当たり) | 100円〜/1人あたり | 1人増えるごとに料金が増えるが、人数が多い場合はコスパが優れている |
複合型 | 1,000円/月〜+100円〜 | 月額+従量課金をあわせた形態 |
また上記以外に、全社員が一律の料金で受講できる「全社定額プラン」では、受講人数が多いほど一人あたりのコストを抑えやすいメリットがあります。また、初期費用をまとめて支払い、その後は追加料金なしで利用できる「買い切り型プラン」もあり、長期的に運用する企業に適しています。
利用人数や受講期間、必要な機能に応じて最適なプランを選ぶことが大切です。以下の記事では、DX人材に必須のスキルマップを解説していますので、あわせてご覧ください。
DX研修向けeラーニングを受講するメリット
DX研修向けのeラーニングを活用するメリットは主に以下の2つです。
- 学習状況が可視化できる
- 個々のペースにあわせた学習が可能
①学習状況が可視化できる
DX研修向けeラーニングでは、受講者の学習進捗や理解度をシステム上で簡単に確認できます。「どの講座を完了したか」「テストの正答率や受講時間」といった情報がグラフや数字で一覧表示されるので、どの社員がどの程度進んでいるのかを1人ひとり確認する必要はありません。
管理者は進捗に応じてフォローや声かけができ、計画的にスキルアップを促せるのが魅力です。理解度に応じて追加の課題を出したり、進捗の遅れている人を支援することも可能です。
②個々のペースにあわせた学習が可能
DX研修向けeラーニングの特徴は、受講者一人ひとりが自分のペースに合わせて学習できる点です。従来の集合研修では、全員が同じスケジュールで進むため、理解が早い人には物足りず、逆に基礎から学びたい人はついていけないケースも多くありました。しかしeラーニングなら、誰もが自分のレベルや予定に合わせて無理なく進められます。
以下のような使い方ができます。
- 忙しい人はスキマ時間に10分だけ動画を視聴する
- 得意な分野は一気に進め、苦手な部分は何度も繰り返し学習する
- 休日や出張先など好きなタイミングで集中して学ぶ
また「学習履歴の保存機能」や「視聴スピード調整」「チェックテスト」などが用意されているので、どこまで理解できているかを確認しながら、自分に最適なペースで進められるのも魅力です。
DX研修向けeラーニングのタイプ別選び方
DX研修向けのeラーニングは全て同じというわけではありません。ここでは3つのタイプを紹介します。
- 基礎準拠・専門特化型
- レベル別・実践重視型
- ハイブリッド学習・実践強化型
①基礎準拠・専門特化型
基礎準拠・専門特化型は、経済産業省の「デジタルスキル標準」など公式な指標に沿った教材やカリキュラムが用意されているタイプです。DX人材に求められる共通スキルを体系的に学べるほか、診断機能で受講者の現在のレベルを測定し、どの分野が不足しているかを明確にできます。
標準に準拠しているため、人事評価やスキルマップ作成とも連携しやすく、研修の効果を数値化しやすいのが強みです。全社的に統一した学習基準で進めたい場合や、経営層・人事部が戦略的に育成を進めたい企業に特に向いています。
無駄なく必要な知識を習得でき、DX推進の基盤をしっかり整えられるのがこのタイプの魅力です。
②レベル別・実践重視型
レベル別・実践重視型は、初心者から上級者まで幅広いレベルに対応し、すぐに実務で役立つスキル習得を重視するタイプです。基礎的なITリテラシーから、データ分析やAIの応用、プログラミングまで、業務に直結する講座が用意されています。
受講者は自分のスキルや関心に合わせて内容を選べるため、学習のモチベーションを維持しやすいのもメリットです。また、学んだ内容を演習や課題でアウトプットできる仕組みが整っているため、理解を深めやすく実践力が身につきやすいのも特徴。
社内に幅広いスキルレベルのメンバーがいる場合や、将来的にDX推進の中心となるリーダーを育てたい場合に最適です。
③ハイブリッド学習・実践強化型
ハイブリッド学習・実践強化型は、オンライン学習に加えてオフラインでの集合研修やハンズオンを組み合わせるタイプです。たとえば、動画で知識を学んだ後、実際にアプリ開発やプロジェクト立案に取り組む演習を行い、理解度を深めながら「使えるスキル」を確実に身につけます。
集合研修では講師や他の受講者と意見交換ができるため、アイデアを共有したり、課題解決のプロセスを一緒に体験したりできます。座学だけでは定着しにくい実務的な内容をしっかり体験できるのが特徴です。
知識のインプットと実践のアウトプットを組み合わせることで、習得内容を自分の仕事に活かしやすくなり、現場で即戦力になる人材を育成しやすいのがこのタイプの魅力と言えるでしょう。
おすすめのDX研修向けeラーニングサービス10選
おすすめのDX研修向けeラーニングサービスをタイプ別に10個紹介します。
サービス名 | 開催元 | タイプ | 特徴 |
①DX・AI人材育成研修サービス | GETT Proskill for biz | 基礎準拠・専門特化型 | 製造業や建築業向けに専門家が段階別の育成 |
②DX人材育成サービス | キカガク | 基礎準拠・専門特化型 | デジタルスキル標準に準拠し課題解決型研修を一貫提供 |
③デジタルスキル標準研修 | 株式会社アイ・ラーニング | 基礎準拠・専門特化型 | 全5類型対応の体系的カリキュラムで段階的に学べる |
④SkillCompass | マインドテック株式会社 | 基礎準拠・専門特化型 | スキルを可視化しマルチロール診断でDX推進力を診断 |
⑤Aidemy Business | 株式会社アイデミー | レベル別・実践重視型 | AIやDX講座を230以上揃え学習進捗管理も充実 |
⑥MENTER | 株式会社S-GROOVE | レベル別・実践重視型 | マンガとチャット形式で初心者も楽しく学べる |
⑦AI活用型データドリブン思考研修 | 成基総研 | レベル別・実践重視型 | AIで意思決定やデータ活用を学ぶ高度なDX研修 |
⑧ハイブリッドキャリアプログラム | ヒューマンアカデミー株式会社 | ハイブリッド学習・実践強化型 | eラーニングと集合研修でDX基礎と資格取得を目指す |
⑨ハイブリッド研修 | 株式会社SAMURAI | ハイブリッド学習・実践強化型 | 集合研修と個別指導で理解度に応じて学びを深める |
⑩TalentQuest | 株式会社シナプス | ハイブリッド学習・実践強化型 | 実践課題と伴走サポートで現場活用力を養う |
①DX・AI人材育成研修サービス
DX・AI人材育成研修サービスは、製造業・建築業を中心とした実践的な人材育成に特化している点が特徴です。
DX推進を実現する上で必要となる人材の成長段階を4段階で定義し、企業の課題をヒアリング・スキルチェックした上で最適な方向性と解決策を提案。
講師陣は10年以上のコンサルティング経験を持つ製造業・建築業に精通した専門家で構成されており、産業用IoT・AR・3DCAD・3Dプリンターなど企業向けの人材育成コンテンツを包括的にカバーしています。
②DX人材育成サービス
DX人材育成サービスは、経済産業省のデジタルスキル標準に完全準拠した人材育成サービスです。15万人以上の受講生、約1,000社の企業のDX推進をサポートしてきた実績を誇り、人材定義策定から育成・人材の定量評価、人材の選抜まで一気通貫でサポートする体制を構築。
特に実データを用いた課題解決型研修を特徴とし、企業の課題に合わせて研修をカスタマイズして提供することで、学んで終わらない実務に活かせる人材育成を実現しています。
③デジタルスキル標準研修
デジタルスキル標準研修は、日本初のWeb専門スクールとして30年間の教育ノウハウと、1,200社を超えるIT・DX人材育成の実績を基盤とした研修サービスです。
このサービスは経済産業省のデジタルスキル標準で定義されている5つの人材類型すべてに対応したカリキュラムを提供しており、全てのビジネスパーソンに求められるDXリテラシー標準から、各専門職種向けの高度なスキルまで段階的に学習できる体系的な構成となっています。
④SkillCompass
SkillCompassは、IT人材が保有する能力の棚卸しと可視化を行う人材力診断サービスで、DX推進スキル標準に対応した診断機能を提供しています。
このサービスは業界標準のITスキル標準やiコンピテンシディクショナリ、DX推進スキル標準をもとにレベルを判定し、自己評価とテスト結果により客観性の高い診断結果を提供する点が特徴です。
注目すべきは「マルチロール診断」機能で、1回の受診でDX推進スキル標準に示されている全てのロールについてのスキル充足度やレベル感を診断できる効率性を実現していることです。
⑤Aidemy Business
Aidemy Businessは、AIやDX分野の人材育成に特化したeラーニングサービスで、230種類以上の学習コンテンツを提供しています。PythonやAI、機械学習、ビジネス向けDX講座など幅広いテーマを網羅し、毎月新しいコースが追加されるため、常に最新技術を学習可能です。
初心者から実務者、リーダー層まで幅広く対応しており、専任のカスタマーサクセスによるサポートや、学習進捗の可視化、理解度チェックテスト、管理者向けの進捗管理機能も充実しています。
⑥MENTER
MENTERは、マンガ動画とチャット形式を活用した分かりやすさ重視のDX人材育成eラーニングサービスです。難しいIT用語やDXの基礎知識もマンガ形式で解説されており、学習が苦手な方や初心者でも学習が可能。
1レッスンは5〜10分で構成されているため、パソコンやスマートフォンから隙間時間に学習でき、チャットで質問に答えながら進められるのが特徴です。
ExcelやPowerPointなど日常業務に直結するITスキルから、AIやRPAなど実践的な内容まで網羅し、クイズや実践問題を通じて即戦力となるスキルを身につけられます。導入企業はIT・情報通信、小売・流通、人材サービスなど多岐にわたり、部署単位や少人数での導入も柔軟に対応可能です。
⑦AI活用型データドリブン思考研修
「AI活用型データドリブン思考×DX推進力強化研修」は、AIとデータを活用した戦略的意思決定力とDX推進力を高めることを目的としたeラーニング研修です。
AIプロンプトエンジニアリングや複雑な意思決定のためのデータ分析、AIを活用したビジネスモデル革新、組織変革のためのデータ活用など、実践的かつ高度な内容を体系的に学べます。受講者は顧客体験の再設計やデータマネタイズ手法を習得し、不確実性の高い状況下での意思決定や、長期的なデータ戦略立案、組織全体へのデータドリブン文化の浸透方法などを学びます。
⑧ハイブリッドキャリアプログラム
ハイブリッドキャリアプログラムは、若手社員を中心に提供するDX基礎力育成のためのeラーニングと集合研修、国家資格取得を組み合わせた多層的な研修プログラムです。
オンライン動画トレーニングによる自主学習でDXの基礎知識やビジネススキルを身につけた後、複数回の集合ワークショップで実践力を高め、最終的に国家資格の取得を目指します。
インプットとアウトプットを繰り返しながら「生きたスキル」を着実に習得できる点が特徴で、IT未経験者からエキスパートまで幅広い層に対応し、社内DX推進を担う人材の底上げを実現しています。
⑨ハイブリッド研修
ハイブリッド研修は、1対複数の集合研修と1対1の個人レッスンを融合させた独自のスタイルで、受講者一人ひとりの理解度や習熟度に応じて柔軟に学びを深められるDX人材育成サービスです。
集合研修で基礎知識を効率的に学んだ後、個人レッスンで疑問点やつまずきを個別にフォローし、理解度の高い受講者には発展課題も提供されるため、脱落者を出しにくい設計となっています。eラーニング教材も併用でき、ITパスポートや基本情報技術者試験対策、エンジニア向けの実践スキルまで幅広く対応。
研修の進捗管理や講師からのフィードバックも日報形式で確認できるため、企業の人材配置や育成計画にも活用しやすい点が魅力です。
⑩TalentQuest
TalentQuestに新たに搭載された「クエスト機能」は、eラーニングと実践的なワークショップを組み合わせ、DX人材が座学だけで終わらず実務に直結するスキルを身につけられるよう設計されています。
アセスメントによる個別最適化された学習内容に加え、実践演習課題「クエスト」を攻略することで、知識の定着だけでなく現場での活用力を高められるのが特徴です。
チューターによる伴走サポートがつき、質問や相談がしやすい環境が整っているため、挫折を最小化しながら学習を促進します。
DX研修向けeラーニングの注意点
DX研修を選ぶ際は以下3つの点に注意しましょう。
- 自社社員のITリテラシーに合わせて選ぶ
- 費用対効果を重視する
- コンテンツが多ければ良いというわけではない
①自社社員のITリテラシーに合わせて選ぶ
DX研修向けeラーニングを選ぶときは、コンテンツの質が良いからではなく、社員のITリテラシーを把握して選びましょう。
たとえば、基本的なパソコン操作や情報セキュリティの知識が不十分な人に、いきなりデータ分析やプログラミングを学ばせても、内容が難しすぎて挫折する可能性が高くなります。
一方、既にスキルを持つ社員には、基礎講座ばかりでは物足りず学習意欲が下がります。受講者のレベルを正しく評価し、理解度や役職に応じて最適な教材を選ぶことが、スムーズにスキルアップを進めるコツです。
多くのサービスはスキル診断機能を備えているので、事前に活用し、最初のレベル設定をおこないましょう。
②費用対効果を重視する
eラーニングの導入では、「安いから」「有名だから」で選ばず、費用対効果を考えることが重要です。月額料金が安くても、内容が自社の目的に合わず、社員が学習を続けられなければ投資は無駄になります。
また、受講人数によって料金が大きく変わるケースも多いため、コストだけでなく「どれだけ社員のスキルが伸びるか」「どのくらい業務に活かせるか」という視点で比較検討することが大切です。
③コンテンツが多ければ良いというわけではない
「講座数が多い=良いサービス」と思いがちですが、コンテンツの多さだけで判断するのは避けましょう。膨大な動画やテキストがあっても、社員がどこから手をつければいいかわからず、結局中途半端に終わってしまうことも珍しくありません。
DX分野は範囲が広いため、学習の優先順位が曖昧になると、基礎から応用まで中途半端にかじるだけで終わってしまいます。重要なのは「自社の目的に沿った体系的なカリキュラムがあるか」「進捗や理解度を確認できる仕組みがあるか」です。
導入前に、どの講座をどう使うか明確に計画を立てて、数だけでなく質や運用のしやすさを重視してください。
以下の記事では、DXに重要なAI人材についても詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
DX研修向けeラーニングについてのまとめ
DX研修向けeラーニングは、企業がDXを推進するための人材を効率的に育成できますが、導入を成功させるためには、社員のITリテラシーに合ったレベルを見極め、費用対効果や運用のしやすさをしっかり比較検討することが重要です。
コンテンツの量だけで判断するのではなく、自社の課題や目標に直結するカリキュラムやサービスを選ぶことで、学習効果を最大化し、知識だけに留まらず業務に活かせるスキルを習得できます。本記事で紹介した各サービスの特徴を踏まえ、自社に合った学習環境を整え、現場で活躍できるDX人材を育成してください。
