ライノセラスは、建築初心者に広く使われる3DCADソフトです。その高い自由度と精密なモデリング機能は建築のプロには魅力的ですが、初心者の方は操作に四苦八苦することも珍しくありません。本記事では、初心者向けにライノセラスの基本的な使い方を分かりやすく解説し、スムーズにモデリング学習を開始するためのコツや学びのポイントを解説します。
建築分野などで使用されるライノセラスとは?
「ライノセラス(Rhinoceros)」は、主に「NURBS(Non-Uniform Rational B-Splines)」と呼ばれる数学の手法を導入した3DCADソフトです。形状を滑らかで自由に描ける特徴があるため、建築や工業デザインなどのさまざまな分野で活躍しています。
例えば、建築分野では、複雑な曲線を設計することもあり、工業デザインによっては曲線のかなり精緻な形状を扱うこともあります。そこで、一般的なCADソフトでは難しい曲線をライノセラスでは設計することができます。
特に建築設計のデザイナーは創造的なデザインを実際に設計する際には欠かせません。創造的なデザインを実現させるにはライノセラスは重要なツールといえるでしょう。
建築分野向け!ライノセラスの基本の使い方
ライノセラスは多機能で直感的な3Dモデリングソフトですが、初心者が使い始める際には、図形の作成やオブジェクトの編集方法を把握することが必要です。ここでは主に次の7つに分けて、ライノセラスの基本の使い方をお伝えします。
- 4つのビュー
- ツールバー
- 基本的な図形の作成
- オブジェクトの編集
- 参考図面を取り込む
- 基本形状の作成
- 便利なショートカットキー
4つのビュー
まず、ライノセラスを起動すると、最初に4つの異なる「ビュー」視点が表示されます。デフォルトでは「トップビュー」、「フロントビュー」、「ライトビュー」、「パースペクティブビュー」の4つのビューが表示されます。建築物を確認したり、設計時に確認・調整するのに使用される機能です。ビュー視点を切り替えながら作業することで、オブジェクトの位置や形状を細かく確認できます。
立体的な形状を確認しながらモデリングを進めて、誤ってオブジェクトを配置してしまうことを避けられるメリットがあります。建築設計モデリングでは、建築物をさまざまな向きから確認することにも使えます。
ツールバー
画面上のツールバーには、描画や編集に必要なツールが並んでいます。必要なツールを選択することで、さまざまな作業が行えます。例えば、「Line(ライン)」ツールを選択すると直線を描くことができ、「長方形(Rectangle)」ツールを使うと四角形を描けます。
そのため、ライノセラスでは、ツールバーに表示されているアイコンをクリックするだけで手軽に操作の切り替えと機能が利用できます。
しかも、画面上部にはコマンドラインが表示されており、ここにコマンドを入力することで、マウス操作より早く操作できます。例えば、「Line」と入力してEnterを押すと、直線を描く準備がすぐに整います。ツール選択とはまた違ったスピーディさを実感できるでしょう。
基本的な図形の作成
ライノセラスでは、基本的な形状を作成することからモデリングが始まります。まず、直線を描くには「Line(ライン)」コマンドを使用することです。このコマンドでは、始点と終点を指定することで直線を描ける仕組みとなっています。手書きでは難しくても、2点をクリックするだけで、正確な直線を引けます。
RectangleとPolyline
建築分野で使う場合は、最初に「Rectangle(長方形)」や「Polyline(ポリライン)」を使って行う、建物の外形用平面図の作成です。「Rectangle(長方形)」ツールは、2点を指定することで長方形を描くことができます。加えて「Polyline」は、自由な形状を作るために複数の点を繋げて線を描くツールです。
Extrude
RectangleとPolylineで図形を作成し、それを「Extrude」コマンドを使って立体的に押し出し、高さをつけて建物の基礎を作ります。操作内容としては、平面を選択し、上方向に引き伸ばすことで立体に変形させるものです。形状を変化させるさまざまな機能は進化を続けているため、ソフト開発者側の最新情報をチェックしましょう。
PlaneとBox
また、平面を作成する場合は「Plane(平面)」コマンドです。四つ角の点を指定することで四角形の平面を作れます。建築分野では、平面図面や床面の作成に役立ちます。ただし、立方体を作る場合はオブジェクト作成の手順で複雑な操作が必要となります。
しかし、「Box(ボックス)」コマンドを使用すれば、対角線を指定することで立方体を作成可能です。ツールで細々と作成しなくても3Dの立方体を一度に作成できて、建築設計用のモデリング作業にもすぐ使えます。
Sphere
それから「Sphere(スフィア)」コマンドを使うと、中心点と半径を指定することで3Dの球体の作成も可能です。
以上の基本的な形状を組み合わせることで、複雑なモデルを自分の手で素早く作成することができます。図形を描いてそれを設計に使えることが、初心者がステップアップするのに欠かせない初級スキルです。
オブジェクトの編集
オブジェクトを作成した後は、「Move(移動)」や「Rotate(回転)」、「Trim(トリム)」などの編集機能を使って形状や位置を変化させます。
Move
例えば、オブジェクトを移動させるには「Move」コマンドの使用です。オブジェクトの開始位置と移動先の位置を指定するだけで、簡単に図形の移動を行うことができます。
Rotate
オブジェクトを回転させる場合は「Rotate(ローテート)」コマンドです。回転の中心点と回転角度を指定することで、オブジェクトを希望の角度で回転させることができます。例えば、90度回転させる場合、その角度を指定するだけで簡単に回転が実行されるのです。
Scale
オブジェクトのサイズを変更したい場合は、「Scale(スケール)」コマンド。使い方も難しくなく、基準点を設定して、倍率を指定するだけです。これでオブジェクトを拡大・縮小できます。例えば、オブジェクトを2倍の大きさにしたい場合、倍率を「2」に設定するだけで、サイズ変更も容易です。
Trim
不要な部分を削除する場合は、「Trim(トリム)」コマンドを使用します。よくある使い方として、重なる部分を指定し、不要箇所をカットすることです。
参考図面を取り込む
モデリングを行う際には、事前に作成した図面を取り込むことも必要です。「ライノセラス」では、「AutoCAD」で作成した「DWG」や「DXF」形式の図面をソフトにインポートできます。
インポート方法は簡単で、ライノセラスを開いて、上部メニューから「File」をクリックし、ドロップダウンメニューから「Import」を選びます。その後、インポートしたい図面ファイルを選択して開くことです。画像ファイルなら「Picture(画像)」を選び、後はインポートが完了するのを待ちます。これをモデリングに活用します。
基本形状の作成
建築モデリングでは、外壁や床などの基本形状を作成します。
Trim
例えば、平面図面をもとに「Extrude」コマンドを使用して、2Dの図形を3Dの立体形状に押し出します。この操作で、建物の外壁や床、天井などの基本的な構造が作り出せます。
Boolean Difference
ドアや窓の開口部を作成する際は、「Boolean Difference」コマンドです。このコマンドを使用することで、壁に穴を開けたり、異なるもの同士を組み合わせることができます。建築や工業デザインでは頻出のツール機能を使った方法です。
SweepとLoft
屋根や手すりなどは、建物のディテールを詰めて、「Sweep」や「Loft」コマンドで複雑な曲線の形状を作成します。屋根や階段の手すりなどを精密に作成する手段もこれです。クリッピングで内部構造の確認も可能となりおすすめです。
便利なショートカットキー
「ライノセラス」を効率よく使用するためには、初心者でも覚えればすぐ使えるショートカットキーを活用していきましょう。例えば、オブジェクトを移動する際には「M + Enter」を入力することで、「Move」コマンドがすぐに実行されます。以下は、簡単なショートカットキーのまとめです。
ショートカットキー | 機能 |
M + Enter | オブジェクトを移動 |
R + Enter | 選択したオブジェクトを回転 |
C + Enter | オブジェクトを複製 |
Trim + Enter | 交差部分を削除 |
Scale + Enter | サイズを変更 |
ショートカットキーは作業のスピードが向上するので、よくソフトを使う方や余裕がある方は積極的に覚えてみてください。
建築分野でライノセラスを学ぶポイント
「ライノセラス」を学ぶポイントは、基本操作や「コマンドライン」の理解と「ビュー」の機能、編集ツールを使いこなすことです。「ツールバー」や「メニュー」でできることを押さえておくことも大事でしょう。
多機能で柔軟なソフトの性能面が、初心者にとってはハードルを高くしていますが、1つずつクリアしていくことです。その先に、3DCADソフトを使って自由自在にモデリング機能から設計やデザインが可能となります。
ライノセラスを使い方はセミナーで覚えるのがおすすめ
ライノセラスを学ぶ方法にはいくつかのアプローチがあります。しかし、効率よく学ぶためにはセミナーへの参加がおすすめです。なぜなら、独学で学ぶことはできても、業務で使う実用的な機能やプロの視点から効率的な活用方法だけをピックアップして学べる機会はあまり多くないためです。
そのため、短期集中型のセミナーなどに参加することで、要点を絞った基礎知識や操作、応用・実務的な操作を学べます。特に、ライノセラスの基礎セミナーは、初心者でも2日間で3D CADの基本操作から応用技術までを学べる内容が揃っています。短期集中セミナーの講習に参加を希望する方は、公式のサイトから日程や会場・受講方法を確認しましょう。
まとめ
ライノセラスは、建築モデリングにおいて効率的に利用できるツールです。しかし、その機能を初心者が使えるようになるためには、基本操作をしっかりと学び、図形作成やオブジェクト編集の方法を習得することが必要となります。今回紹介した基本的な操作や基礎知識を今後のモデリング技術の向上に活かしましょう。
