就職や転職で建築業務に携わる予定だが、基礎知識がなくうまく働けるか不安に感じている人もいるでしょう。また、建築業務に必要な資格、準拠するルールがわからないと悩む人もいるはずです。
そこでこの記事では、建築の基礎知識をわかりやすくまとめました。
建築業界の全体像がわからないとお悩みの人は、スムーズに働き始める参考にしてください。
建築業務と建設業務の違い
建築業務と似た言葉に、建設業務というものがあります。
一見似ている2つの言葉ですが、実は次のような違いがあります。
建築業務 | 建設業務 | |
対象となるもの | 建物 | 建物・道路・基礎・地盤など |
土木工事を含むか | 含まない | 含む |
建築業務は建物のみに特化した業務を実施する一方で、建設業務は建物だけでなく土木工事を含んでいます。また、建設業務は建築・土木をまとめた総称であるため、建築業務と対になるのは土木業務です。
地面から上側は建築業務、地面から下側は土木業務で対応するものだと覚えておきましょう。
建築物の基礎の種類とは?
建築業務では、建物の基礎そして上屋までを設計・施工するのが一般的です。
そのなかでも建物の基礎は、設置する場所によって工法などが大きく変化します。
参考として、建築物に利用される主な基礎の種類を以下にまとめました。
基礎の種類 | 設置イメージ | 利用される建物条件 |
独立基礎 | 地盤の上に小さな基礎を1つだけ直接設置する | 地盤条件が良く、建築物の面積が小さい |
布基礎 | 地盤の上に複数の小さな基礎を直接設置する | 地盤条件が良く、建物の面積がやや大きい |
ベタ基礎 | 建物のサイズと同じ基礎を地盤に直接世知する | 地盤条件が悪く、建物の面積がやや大きい |
杭基礎 | 地盤の中に複数の杭を埋め込み設置する | 地盤条件が悪く、建物の面積が大きい |
地盤条件や建物の重さによって、利用する基礎が変化します。
ちなみに建築業では建物を中心に設計する人ばかりであるため、基礎の設計は「建築基礎設計士」という資格所有者が担当するのが一般的です。
建築業務の種類
建築業務は、大きく「建築設計」「建築施工」「維持管理」という3つに分類されます。
それぞれ業務の進め方・動き方が異なるので、基礎的な働き方の違いを見ていきましょう。
建築設計
建築設計では、図面作成に使うCAD・BIMソフトを使いながら次のような業務に従事します。
- 発注者との打ち合わせ
- 建物の設計図面の作成
- 建物の構造計算
- ライフラインの工事検討
- 土木工事との調整作業
また、設計の中では建築工事にいくらかかるのか具体的な金額を算出していくのが特徴です。
発注者の予算が業務の基礎的な部分にあるので、予算を超過せず要望をうまく取り入れた建物を提案しなければなりません。
建築設計の仕事内容やツールなど、基礎的な情報を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。設計ならではの必要資格も紹介しています。
建築施工
建築施工では、建築設計で作成された図面や数量をベースとして、実際に建物を建てるのが仕事です。工事現場での作業だけでなく内業も多いため、以下に基礎的な業務内容をまとめました。
- 建築資材・重機の手配
- 工事工程の検討
- 建築工事の進行・調整
- 発注者との打ち合わせ
- 工事過程の写真報告書作成
建築施工では、設計段階で作成された図面や数量が正しいのか確認したうえで、間違っているポイントの修正などを実施しつつ建物を立てます。建築資材や重機の手配など、手間のかかる作業も含まれることから、スケジューリングスキルといった基礎能力が必要になる仕事です。
また建築を進める過程では、正しく施工されているのか報告するために写真報告書を複数回作成しなければなりません。発注者報告に利用する基礎情報ですので、現場と事務所を何度も行き来する仕事だと覚えておきましょう。
維持管理
維持管理では、建築施工後に完成した建物に対し、次のような業務を実施します。
- 点検・メンテナンス
- 補修・補強(設計が担当する場合もあり)
経年劣化とともに建物が傷んでいくため、使用されている建材が十分な強度・品質を維持できているのかをチェックするのが仕事です。
もし劣化が進んでいる場合、基準が新しくなり今の強度では十分な安全性を確保できない場合には、補修設計や補強設計などを実施して建物の長寿命化を図ります。
建築業務に必要な基礎スキル
建築業務に必要な基礎知識は、設計・施工・維持管理でよってそれぞれ異なります。
以下に各業務に必要な基礎知識とスキルをまとめているので、自身が担当する業務の基礎情報をチェックしてみてください。
業務の種類 | 必要な基礎知識・スキル |
建築設計 | CAD・BIMソフトの操作に関する基礎知識 数量・金額算出の基礎知識 スケジューリングスキル 打ち合わせのコミュニケーションスキル |
建築施工 | CAD・BIMソフトの操作に関する基礎知識 施工手順の基礎知識 スケジューリングスキル |
維持管理 | CAD・BIMソフトの操作に関する基礎知識 点検基準の基礎知識 |
業務の種類ごとに必要な基礎知識が異なりますが、どの業務でもCAD・BIMソフトの基礎知識が欠かせません。
設計図面の作成や施工図面、点検図面などをCADソフトで作成するほか、近年では、BIMソフトを設計~維持管理の一連の作業で連動させ、データを蓄積していく働き方が国土交通省から推進されています。
建築業務に役立つ基礎的な資格
建築業務といった専門職で働く際には、資格所有者であるほど働きやすく、幅広い知識を持っていると認定してもらえます。参考として、建築業務で役立つ基礎的な資格をまとめました。役立つシーンや資格の難易度も含めて紹介します。
建築士
建築士は国家資格であり、建築業界のトップに位置する重要な資格です。以下に示す3つのレベルがあり、1級建築士を取得すると自身で会社を持てるようになるなど、仕事の幅を広げやすくなります。
- 1級建築士(すべての建築が可能)
- 2級建築士(小規模な建物を建築可能)
- 木造建築士(小規模かつ2階建て木造の建築が可能)
資格の難易度は1級で10%、2級で20%、木造で30%程度と、高難易度に設定されています。
また1級を受けるためには、2級建築士を取得して4年の実務経験もしくは大学・専門学校・短大の卒業経験が必要になるなど、受験資格が設けられています。
建築設備士
建築整備士は、以下に示す建物内の設備関する基礎知識・専門知識があると証明する資格です。
- 空調(吸気・換気)
- 吸水・排水
- ガス
- 電気
建築時に必要となる設備の設計や電気工事を担当できます。
合格率は比較的高く、一次試験で30%程度、二次試験で50%程度であるため、建築設計の基礎知識を身に付けるために取得してみるのが良いでしょう。
電気工事士
電気工事士は、建築施工の電気工事に関する基礎知識・専門技術があると証明できる資格です。
電気工事士の資格は第一種・第二種に分かれており、受験する種別によって次のような対応範囲の違いがあります。
電気工事士の種別 | 業務の活用範囲 |
第一種 | 一般住宅と小規模店舗などの電気工事 |
第二種 | 最大電力500キロワット未満の施設 |
主に建築施工など、現場向けの資格をお求めの人に最適な資格です。
第一種は40~60%程度、第二種は60~70%程度の合格率であるため、比較的取得しやすい資格だと言えます。
もし図面作成に関する基礎知識・技術があると証明できる資格を取得したいなら、以下の記事をチェックしてみてください。建築業務で利用するBIMソフト関連の資格情報を紹介しています。
建築業務で準拠しなければならない基礎ルール
建築業務は必ず、国土交通省や建設省、各自治体が定めた設計・施工ルールに基づいて業務を進行しなければなりません。参考として、業務内でよく利用する基礎ルールについて整理しました。
建築設計基準
建築設計を進める際には、国土交通省が発行している建築設計基準に基づいて検討を実施しなければなりません。参考として建築設計基準の中には、次のような情報がまとめられています。
- 図面の基礎的な作り方
- 設計検討の留意点
建築設計の基礎となる資料ですので、必ず目を通しておきましょう。
成果品が基準を留意していなかった場合、膨大な修正を指示される恐れがあります。
建築基準法
建築基準法は、国土交通省が制定している建築の基礎情報がまとめられた法律です。
例えば、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する必要最低限の基準などが定められています。
室内空間の広さはどれくらいにしなければならないのか、建物の強度はどれくらいを満たす必要があるのかといった情報がまとめられています。設計業務はもちろん、施工業務における基礎情報ですので、業務を開始する前に理解しておくことが欠かせません。
建築物点検マニュアル
建築物点検マニュアルは、国土交通省が発行している建物の点検についてまとめてある基礎的なマニュアルです。主に次のような点検の基礎情報がまとめられています。
- 点検の方法(点検が困難な場合の対策)
- 点検位置
- 損傷の分類分けや損傷度合い
また、建築物の点検マニュアルは、別途発行されている点検シートなどにまとめる必要があります。過年度の点検データが残っていることもあるので、点検を始める前に必要資料をすべて収集することが重要です。
建築の基礎知識を学習する方法
建築に関する基礎知識が把握している人は、業務と同時並行で学習をスタートしましょう。
もし学習方法に悩んでいるのなら、次の方法で建築の基礎を学べます。
- 国などが公開している基準書・マニュアルを読む
- YouTubeやSNSなどの情報配信を活用する
- セミナーに参加する
例えば、基準書やマニュアルには、建築業務の基礎情報が記載されていますし、YouTubeといった動画配信サイトやSNSには、業務のノウハウやCAD・BIMソフトの操作方法が投稿されているので、手軽に建築の基礎を学べます。
もし自主学習が苦手なら、セミナーに参加してプロの講師から建築の基礎情報を教えてもらうのがおすすめです。その中でもどの業務でも利用するCAD操作の知識・技術を身に付けたいなら、次のセミナーに参加してみてください。
建築の基礎知識についてまとめ
建築の基礎知識や専門技術が必要な建築業務を効率よく進めたいのなら、業務と並行して基礎知識の学習に力を入れることが重要です。設計・施工・維持管理など学ぶべき範囲が広いため、本記事の情報を参考に、基礎知識を学ぶ優先順位を検討してみてください。