国が推進するBIMの2023年原則導入に向けてBIMソフトの導入を検討している人も多いでしょう。しかし、従来利用しているCAD・3DCADとの違いや、BIMを導入するメリット・デメリットが分からないとお悩みの方もいるはずです。
そこでこの記事では、BIM・CAD・3DCADの違い、そしてそれぞれの導入メリット・デメリットについてまとめました。また、おすすめのBIMソフトも整理しているので、BIM導入の参考にしていただけると幸いです。
BIMとCAD・3DCADの違いとは?
国土交通省により、2023年のBIM原則導入が急がれていますが、そもそもBIMとCAD・3DCADの違いとは何なのでしょうか。
まずは、具体的な違いを把握していただくために、それぞれの特徴を整理しました。
BIMとは
BIM(ビム)とは、正式名称をBuilding Information Modelingと言い、3Dモデルをベースに建築・建設業務を効率化する仕組みのことです。
例えば、作成した3DモデルであるBIMモデルに、寸法や強度といった属性情報を与えることにより数量算出の自動化、報告書作成の自動化が図れます。具体的には次の手順で自動化を実施します。
- BIMモデルの作成・属性情報の付与
- 必要部材・建材の数量算出(ボリューム、設計計算)
- 必要図面の切り出し(平面図・横断図・断面図等)
また、BIMモデルを活用すれば、リアルな地形情報・リアルな構造物・建築物情報をベースに解析・シミュレーションを実施できるのが魅力です。より現実に即した検討を実施できることから、業務効率化そして品質向上を期待できます。
BIMについて詳しく知りたい方は以下記事をご参考ください。
CADおよび3DCADとは?
CAD(キャド)とは、CADソフトを利用してデジタル上で図面を作成する仕組みのことです。以前までは手書きの図面作成が行われていましたが、CADが開発されるようになってからは、デジタルデータを用いて図面の作成・管理するのが一般的になりました。
ただし、BIMとは違い、属性情報からの自動算出・解析・シミュレーション等は実施できません。
次に3CADとは、CADで作成した図面データを3Dに起こす仕組みのことです。2D図面をベースとして手作業で3Dモデルを作成するため、一度2D図面の作成が欠かせません。
3DCADの場合は、属性情報や自動数量算出、シミュレーションを行えないのことがほとんどです。また、図面修正が必要になった場合、2D図面の修正・3D図面の修正の両方が必要になります。
BIMとCAD・3DCADの違いはベースデータ
結論として、BIMとCAD・3DCADは、ベースとして利用するデータが次のように異なります。
- BIMの場合:3Dモデル(BIMモデル)がベース
- CAD・3DCADの場合:2Dモデルがベース
これまでは、CAD・3DCADによる2Dモデルを利用した設計が基本でした。しかし、2Dモデルを利用する場合には次のような問題があったのです。
- 平面図・断面図といった図面ごとに作成が必要であるため、個別修正および整合性の確認が必要だった
- 3DCADによる3Dモデルは景観検討程度でしか利用されていなかった
- 2Dモデルに修正が発生すると3Dモデルを再度作成・修正しなければならなかった
以上より、現在国土交通省で推進されているBIMは、CAD・3DCADによる今までの図面作成・検討業務を大幅に効率化できる魅力のある仕組みなのです。働き方改革やDXなどを進める現在の日本において、作業効率化・生産性向上を期待できる重要な変化だといえます。
BIM導入のメリット
BIMを導入することには、次のようなメリットがあります。現在の図面作成がどのように改善されるのか、参考にしてみてください。
- 図面間に不整合が生じない
- 数量計算を効率化できる
図面間に不整合が生じない
BIMでは、ひとつの3Dモデル(BIMモデル)を使って図面・数量を算出するため、2D図面で必要だった図面間の不整合を避けられます。その理由は、BIMモデルの任意箇所を2D図面として切り出せるからです。
例えば、構造物・建築物のBIMだけではなく、地形データのBIMモデル、調査データのBIMモデルなどを複合しながら2D図面化できます。また、BIMモデルに修正が必要になったとしてもデータがリンクしているため、自動で2D図面の内容も書き変わるのが魅力です。
図面確認時に必要だった赤黄チェックといった手動のチェックを削減できるため、作業効率化としてBIMが役立つでしょう。
数量計算を効率化できる
BIMモデルを作成すれば、自動で数量を算出できます。例えばBIMモデルを部材・建材ごとに分けることにより、任意箇所の数量を自動計算し、数量集計表まで作成してくれるのがBIMの魅力です。
数量計算を手動で行う必要がなくなるほか、図面修正に伴う計算の修正も削減できます。時間のかかる数量計算の手間を削減することによって、大幅な作業短縮が可能です。
BIM導入のデメリット
BIM導入にはメリットだけではなく、次のようなデメリットも存在します。正しくBIMを活用するためにも、あわせて把握しておきましょう。
- 操作性が複雑である
- 最新技術の知見が必要である
操作性が複雑である
BIMソフトでは、図面作成や数量算出、プロジェクト管理などを網羅的に実施できるため、これまでのCADソフトよりも機能が多く、操作性が複雑になっています。
操作を覚えるために時間がかかることはもちろん、従来の業務形態からBIMによる作業へと移行する手間がかかると理解しておきましょう。
最新技術の知見が必要である
BIMソフトはまだ登場・浸透し始めたばかりの新技術であるため、BIMの100%の能力を発揮するためには、最新技術の知見が必要です。
BIMソフト導入の環境を整えることはもちろん、ソフトアップデートに伴う機能の追加・変化に対応しなければなりません。すぐすべての操作に慣れることは難しいので、マニュアルやコミュニティを活用しながら知識を深めることをおすすめします。
CAD・3DCAD導入のメリット
これまでCADを導入していたことには、次のようなメリットがありました。BIMとの違いを理解するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
- 導入コストが小さい
- データ容量が小さい
導入コストが小さい
CAD・3DCADは、図面作成という機能に特化したソフトであるため、導入する費用・手間を最小限に抑えられるのが魅力です。
CADソフトの中には無料で利用できるものもあったため、多くの企業ですぐに浸透しました。ちなみにBIMソフトは比較的高価なソフトですので、導入ハードルが高いという違いがあります。
データ容量が小さい
CAD・3DCADは、図面データだけを保存するため、画像データや大規模なデータ以外では、ほとんどデータ容量がかかりません。場合によっては数KBの小容量のデータで図面作成できるため、低スペックのPCでも操作できます。
CAD・3DCAD導入のデメリット
これまでのCAD・3DCAD導入には、次のようなデメリットがありました。BIM導入の魅力を深く理解するためにも、ぜひチェックしてみてください。
- 修正に時間がかかる
- 他ソフトとの連携に乏しい
修正に時間がかかる
CAD・3DCADは、修正が発生した際に次の情報をまるごと修正・チェックしなければなりません。
- 情報がリンクしている各種図面
- 数量計算書
- 工事費
簡単な修正だったとしてもリンクしている情報が多ければ、その分作業量が増加してしまうのが難点でした。
他ソフトとの連携に乏しい
CAD・3DCADは、図面作成単体の機能である場合が多く、分析・シミュレーションを実施する際には、別ソフトに読み込んで対応する必要があります。
また、他社から提供されているサービスを利用することが多いので、連携のためにデータ変換や図面調整が必要です。
おすすめのBIMソフト一覧
現在、国内で利用されているBIMソフトには、次のようなものがあります。
BIMソフトの名称 | 提供会社 | 契約形態 |
Revit | Autodesk | サブスクリプション |
Archicad | GRAPHISOFT | 買い切り |
Vevtoeworks | A&A | サブスクリプションおよび買い切り |
GLOOBE | 福井コンピュータアーキテクト | 買い切り |
それぞれ契約形態、価格などが異なるため、予算・目的に合うソフトを比較してみてください。
BIMとCAD・3DCADの違いに関するよくある質問
BIMとCAD・3DCADの違いをより詳しく理解していただくために、よくある質問を3つ整理しました。
サブスクリプション契約もしくは買い切り型の契約・購入が必要です。
一方CAD・3DCADはメーカーによってフリーソフトも提供されています。
建築・建設業務に必須のソフトですので、ぜひ導入を検討してみてください。
オペレーターは同じ人物でも問題ありませんが、新たにBIMを導入する際には、講習会やマニュアル、トレーニングを利用して学習しておくのがおすすめです。
BIMとCAD・3DCADの違いについてのまとめ
今回は、2023年に原則導入を目指されているBIM、そして従来の図面作成ソフトであるCAD・3DCADの違いについてご紹介しました。
BIMとCAD・3DCADは、ベースとなる図面が違うことはもちろん、導入、機能など、さまざまな点が異なります。BIM導入の際にはCAD・3DCADだけの知識ではうまく対応できない場合もあるため、事前に講習会やトレーニングをスタートするのがおすすめです。