XRとメタバースは仮想空間内での多様な活動を可能にした先進技術で、ビジネスやエンターテインメントをはじめ幅広い業界に導入されています。一方でXRとメタバースは類似している技術だけに、詳しい違いを把握している方は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事ではXRとメタバースの違いを解説し、導入事例も紹介します。
XRとは?
XRとは英語の「Extented Reality」の略称で、バーチャル化された仮想空間と現実世界との融合を可能にした技術のことです。XRの種類として、専用のゴーグルを使用して仮想空間への没入度を高めるVR、スマートフォンなどのデジタルデバイスを通じて現実世界にデジタルデータを反映するAR、VRとARの技術を組み合わせ、仮想区間内でのデジタルデータの操作を可能にしたMRなどが挙げられます。
この3つの技術の総称をXRと呼び、近年はさまざまな業界への導入が進んでいるのが現状です。下記にXR種類の1つである、VRの仕組みに関して詳しく解説した記事を掲載するので参考にしてください。
メタバースとは?
メタバースとはデジタルで再現された現実に近い仮想空間のことで、メタバース内で人間は仮想空間内での分身であるアバターを使用し、さまざまな活動を行います。メタバースでは現実世界に限りなく近い状態を仮想空間内に創造し、現実世界同様の時間の流れの中でアバターを使用して、空間内のほかのアバターとコミュニケーションをとることも可能です。
メタバースは技術の高さゆえに近年開発された技術と思われがちですが、仮想空間内でアバターを使用しての活動は、21世紀初頭から既に行われています。
XRとメタバースの違い
XRはVRゴーグルやスマートフォンなどのデジタルデバイスを介し、現実世界と仮想空間の融合を可能にした技術です。一方のメタバースはユーザーがアバターとして完全に仮想空間内に没入し、その中でさまざまな活動を行います。
このようにXRが現実世界と仮想空間の融合を図る技術であるのに対し、メタバースでは仮想空間内のみで活動を行い、現実の事象は反映されない点が双方の違いです。具体的にはXRの1種であるVRゴーグルのゲームでは、現実世界にデジタル化された敵と戦う場合もありますが、メタバースではユーザーはアバターとして完全に仮想空間に自己を投影し、空間内のほかのアバターとのコミュニケーションが可能な点がXRとの違いとして挙げられます。
メタバースとXRの違いを明確にするためにも、下記にXRを詳しく解説した記事を掲載するので参考にしてください。
XRとメタバース導入のメリット
XRとメタバースはユーザーの仮想空間内への没入度を高められる画期的な技術で、企業で導入すれば下記のようなメリットを取得できます。
- コミュニケーションや情報共有の効率化
- 作業効率の向上
- 研修によるスキルアップ
近年はWeb会議などにメタバースを導入し、仮想区間内でのアバターを使用して遠方の部署間でのコミュニケーションの円滑化を図る企業も多いです。また作業時にARゴーグルを着装し、作業の重要ポイントなどを表示して品質向上を図るケースも多く見受けられます。
そのほかにも医師の新人研修にMRを導入し、ベテラン医師の手術の様子を本番さながらに体感させています。
XRとメタバースの導入事例10選
XRとメタバースは現実さながらの仮想空間を再現できる先進技術ですが、具体的にどのように導入されているのでしょうか。そこでここからは、XRとメタバースの導入事例10選を下記に表記し、それぞれを詳しく紹介します。
導入企業 | 導入方法 |
奥村組 | 自社のメタバース開発機関である「メタバース研究所」の完全メタバース化によるVRシミュレーションを行い、設備設計や施工に必要な分析を実現 |
みずほ銀行 | 世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット2022」に、みずほ銀行は実際の銀行をイメージしたブースをXRの仮想空間内に再現 |
博報堂 | 博報堂の子会社であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)社は、世界的な規模を誇るメタバースゲーム「Roblox」内にて自社広告を販売 |
ブルボン | VR空間内にはお菓子でできた家があったり、仮想空間内の自販機からブルボンへのオンラインストアにアクセスし、商品購入が可能 |
日産自動車 | タバースの仮想空間ないでサクラを運転し、運転席や後部座席など現実さながらの感覚で試乗を楽しむことが可能 |
三越伊勢丹 | ユーザーはアバターとして仮想空間の販売スースに来場し、ショッピングを楽しむことができる |
comatsuna | メタバースの仮想空間内で、メンタル支援の専門家のアバターがさまざまな企業の社員のメンタルチェックを行う |
NIKE | 「ナイキランド」と呼ばれるメタバース空間を展開 |
ANA NEO | ユーザーはアバターとなって、仮想空間内でさまざまな旅やショッピングなど現実さながらの体験が可能 |
Microsoft | Mesh for Microsoft Teamsでは追加機能により、従来ソフトに比べてアイコンや静止画でなく、アバターで会議に参加可能 |
奥村組
引用:奥村組
奥村組は建築モデル制作にXRを導入した事例です。従来の建築モデル作成においては縮小版でも多くの時間が必要で、原寸版であればさらなる工数や撤去時に多くの産業廃棄物が生じていました。
そこで奥村組は自社のメタバース開発機関である「メタバース研究所」の完全メタバース化によるVRシミュレーションを行い、設備設計や施工に必要な分析を可能にした事例です。このデータをもとに建築モデル設計などの作業にXRによるデジタル化を行い、建築モデル作成に必要な工数・経費削減に成功しています。
尚メタバース研究所各工事における分析なども頻繁に行われ、メタバース内での円滑な情報共有が行なわれているのが現状です。
みずほ銀行
2022年8月に行われた世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット2022」に、みずほ銀行は実際の銀行をイメージしたブースをXRの仮想空間内に再現しました。XRの空間内ではボルダリング体験のほかに、ユーザーと銀行員のアバターが商談を行うことも可能です。
この導入を皮切りに、みずほ銀行は仮想空間内での商談会の実施など、XRを活用した新たなソリューションを提供しています。
博報堂
引用:博報堂
博報堂はXRにおけるVRの仮想空間を利用し、広告枠の販売事業を行っています。博報堂の子会社であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)社は、世界的な規模を誇るメタバースゲーム「Roblox」内にて自社広告を販売しています。
Roblox内への広告の掲載費用は場所やサイズ、掲載期間で異なっているのが現状です。
ブルボン
ブルボンはお菓子の魅力や、自社本社がある新潟県柏崎市の魅力を伝えるためにXRを活用した事例です。VR空間内にはお菓子でできた家があったり、仮想空間内の自販機からブルボンへのオンラインストアにアクセスし、商品購入が可能になるなど、ユニークなXRの導入を行いました。
この導入を参考に、現在はユーザー同士のコミュニティの活性化や、新規ユーザー獲得に繋げています。
日産自動車
日産自動車は近年話題になった、新型電気自動車「日産サクラ」の発表・試乗にメタバースを活用しました。この試みはVR SNSプラットフォームであるVRChatで行われ、仮想空間内に副社長のアバターも登場しました。
その後の試乗会ではメタバースの仮想空間ないでサクラを運転し、運転席や後部座席など現実さながらの感覚で試乗を楽しむことができます。通常の市場とは違い、遠方からもメタバース内でサクラにスムーズに試乗できるなど画期的な仕組みも魅力です。
三越伊勢丹
三越伊勢丹は自社独自の販売用メタバース空間である「レヴ ワ―ルズ」を構築し、販売促進に繋げている事例です。ユーザーはアバターとして仮想空間の販売スースに来場し、ショッピングを楽しむことができます。
ユーザーだけでなく店舗スタッフのアバターも表示され、気になる商品があればチャットでの接客を受けることも可能です。ショッピングのほかにもメタバースの仮想空間内でファッションショーなども開催されるなど、幅広い用途で楽しむことができます。
comatsuna
デジタルヘルスケア事業をてがけるcomatsuna社は、メタバースを活用し「メンサポドクター」と呼ばれる企業社員用メンタル支援サービスを導入しました。このシステムではメタバースの仮想空間内で、メンタル支援の専門家のアバターがさまざまな企業の社員のメンタルチェックを行います。
この導入では対面では話しにくい点なども、仮想空間内では気軽に話しやすくなる点もメリットです。同社はメタバース内でのコミュニケーションの方が、対人での面談よりも悩みを相談しやすいと考え、積極的な運用を促進しています。
NIKE
世界有数のスポーツブランドであるNIKEは「ナイキランド」と呼ばれるメタバース空間を展開しています。この空間内では、現実のプレイヤーの動きをスマートフォンの加速度センサーによりメタバース空間内のアバター内に反映させ、いろいろな運動を楽しむことが可能です。
ナイキランドでは、ナイキのオリジナル製品を自分のアバターにコーディネートするなど、デザイン的にも楽しめます。
ANA NEO
ANA NEO株式会社は、メタバースのバーチャル空間内での旅行体験を可能にしたプラットフォーム「SKY WHALE」を開発しました。この導入によりユーザーはアバターとなって、仮想空間内でさまざまな旅やショッピングなど現実さながらの体験ができます。
また通常の旅行やショッピングだけでなく、歴史上の人物が生きた過去の場所も体験可能です。
Microsoft
Microsoft社は自作のアバターでメタバースでの会議に参加できる、「Mesh for Microsoft Teams」と呼ばれるサービスを導入しました。従来使用されていたリモートツールである「Microsoft Teams」に、新たな機能を追加する形で開発されたソフトウェアです。
Mesh for Microsoft Teamsでは追加機能により、従来ソフトに比べてアイコンや静止画でなく、アバターで会議に参加する人ご増加し、以前よりも円滑なコミュニケーションが可能になりました。
XRとメタバースをビジネスで活用するコツ
従来のXRの市場は、ゲームなどのエンターテインメント業界におけるシェアがほとんどで、そのほかの業界への進出はあまり見られませんでした。一方現在は、新型コロナウイルスの影響などもあり、遠隔での有効なコミュニケーションツールとしてXRを活用する業界が増加しています。
その動向に伴い、メタバースを情報共有ツールとして導入するケースも増加しているのが現状です。このような観点からも、有効な情報共有ツールとしてXRやメタバースを積極的に導入するのも、今後のビジネスを成功させるコツといえます。
XRとメタバースを効率的に活用しよう!
本記事ではXRとメタバースの違いを解説し、導入事例も紹介しました。XRもメタバースも仮想空間における高精度のシミュレーションが可能で、効率的な導入を行えばさまざまな成果を得ることができます。
自社での導入に成功し、十分な効果を得るためにも自社の特性を十分把握し、その特性に適した導入方法を検討してXRとメタバースを有効活用しましょう。
