SketchUpは便利な3DCADソフトとして国内外で普及しており、手軽に始めやすい点も高く評価されているソフトです。3Dモデルの制作や、アニメーション制作の現場でも用いられる機会は多く、3Dの背景制作を行う場合にもSketchUpが活躍しています。
この記事では、そんなSketchUpを使った背景の制作方法や、背景制作において役に立つプラグインなどについて、解説します。
SketchUpについて
SketchUpは、アメリカのTrimble社が提供している3DCADソフトで、以前はGoogleが運営していたものを同社が買収する形で現在に至ります。直感的な操作ができるという使い勝手の良さや、クラウドを使った柔軟な情報共有、豊富な料金プランを用意していることから、アマチュアからプロフェッショナルまで、幅広く使用されているのが特徴です。
また、SketchUpの基本機能だけでは満足できないユーザー向けにプラグイン機能も実装されており、専用のプラグインストアから自由に拡張機能をダウンロードし、機能を追加することができます。プラグインの大半は無料で利用ができ、そのバリエーションも豊かであることから、本格的なSketchUp運用においてプラグインは欠かせない存在です。
SketchUpを背景制作に活用するメリット
SketchUpをアニメーションなどの背景作成に用いるメリットとしては
- 無料で手軽に利用できる
- Webブラウザから利用できる
- 他のデザインツールとの互換性に優れる
など複数挙げられます。それぞれの利点について、解説します。
無料で手軽に利用できる
SketchUpの最大の魅力の一つが、無料で利用ができる3DCADソフトとという点です。多くのデザインツールは高機能なものほど有料かつ価格が高く、気軽に利用ができないという問題を抱えていますが、SketchUpの場合は無料プランがあるので、お試しでの利用をスタートしやすいサービスです。
もちろん、SketchUpの無料プランは機能制限もあるものの、基本機能についてはある程度利用ができるので、その使用感を試してみる分には十分なプランと言えます。
Webブラウザから利用できる
SketchUpのありがたいメリットとして、Webブラウザからの利用に標準対応している点が挙げられます。元々Webサービスとして開発が進められてきた経緯もあり、SketchUpは標準でブラウザ上での3Dモデリングが可能です。
Webブラウザから利用ができることで、マシンスペックに依存しない3Dモデリングができ、PCはもちろん、スマホやタブレットからの利用もできます。
また、専用のクラウド機能を使ってモデルデータを保存したり、クラウド上に保存したデータを関係者に共有できたりが可能なので、データ共有に関する業務効率化が行えます。
他のデザインツールとの互換性に優れる
SketchUpはRevitやClipStudioなどの他のデザインツールとの互換性にも優れているのが特徴です。データのインポートや保存形式を最適化するだけで、そのままモデリングの後の工程を別のツールを使って進めることができます。
複数のツールを使いこなす環境にある場合、SketchUpであれば互換性のトラブルに巻き込まれる心配はないでしょう。
SketchUpの背景制作に用いる機能
SketchUpの背景制作では、主に以下の機能を使用して作業を進めていきます。それぞれの基本的な特徴を理解しておきましょう。
モデリング
SketchUpのモデリングは、感覚的に作業を進めていけるということで人気があります。例えば代表的な機能の一種であるプッシュ・プル機能は、平面図を直接押し出したり引き伸ばしたりすることで、立体を生成できる点が強みです。2Dから3Dへと直接変換できるのは、SketchUpのユーザビリティの高さを物語る機能と言えます。
また、平面に対してサンドボックスと呼ばれるツールを適用することで、自在に曲面加工などを施し、細かなテクスチャをモデルに加えることも可能です。簡素な3Dモデリングのみならず、フォトリアルで精巧なモデリングを感覚的に行えるSketchUpは、背景制作においても強力な味方となるでしょう。
レンダリング
SketchUpはモデリングのみならず、レンダリング加工も行える3Dソフトである点が魅力です。モデル作成の仕上げ作業とも言えるレンダリングは、通常専用のレンダリングツールを別に立ち上げて実行することが多いものですが、SketchUpであればモデリング画面からそのままレンダリングを実行することができます。
別途レンダリングツールを立ち上げる必要がなく、シームレスに作業を進められるため、業務効率化やソフト購入のコスト削減につながる強力な機能です。
SketchUpで背景色を変更する方法
SketchUpを立ち上げると、背景色が常に同じである点が気になってしまう人もいるのではないでしょうか。細かな背景については後ほど制作をするとは言え、ある程度イメージカラーに合わせて背景色を変更したいこともあるでしょう。
SketchUpでは、簡単な操作で背景の色を変更することができます。まずはSketchUpを立ち上げていつもの画面に移動し[ウインドウ]を選択します。それから[スタイル]を選ぶとスタイルウインドウを展開することができるので、ここから背景色の変更を進めましょう。
スタイルウインドウを開いたあと、編集タブをクリックすると[背景]と書かれているところの横に四角形があるので、これをクリックしましょう。するとパラメータを調整して色を変更できるようになるので、好みの色に設定し、OKを選択します。
初期画面に戻り、新しい背景色が適用されているかを確認しましょう。設定した背景色は、再度設定を変更するまでプロジェクトを切り替えても同じ色であり続けます。
SketchUpで背景制作を行う手順
続いて、SketchUpを使って背景を制作する際の手順を紹介します。SketchUpにおいても基本的な背景制作の順序は変わらず
- 空間のデザイン
- アングル決定
- 調整
の3ステップで実行します。それぞれのプロセスについて、順に確認していきましょう。
空間のデザイン
背景の制作においては、まず背景に設定したい空間のデザインからスタートします。背景絵はあくまでも特定シーンの切り抜きであるため、SketchUpにおいては3Dモデリングによって背景空間を作成し、そこから切り抜くような形で背景を決定します。
そのため、まずは空間のデザインを丁寧に行い、物語性や奥行きが感じられるモデルを作成しましょう。3D素材やテクスチャを活用して、リアリティのある空間を作り込むことが大切です。
天候や時間などをレンダリング機能を使ってコントロールし、情景に最適な環境を構築してみましょう。
アングルの決定・画像化
空間のデザインが完成したら、続いて背景として切り抜くアングルを決定します。その背景をバックにどのようなシーンを作りたいのかをイメージしながら最適な角度や空間を選び、切り抜きましょう。
ベストなアングルが決まったらその部分を切り抜き、画像として抽出します。
ペイントツールで調整
切り抜いた背景画像を別途用意したネームなどに照らし合わせ、角度や色味などの微調整を行います。ここからの作業は、3Dモデリングが主体のSketchUpでは機能が足りなくなってしまうため、別のペイントツールを用意して行いましょう。
SketchUpは立体空間を作るためだけのツールと思われがちですが、使い方によっては漫画やグラフィックデザインにおいても強力なパフォーマンスを発揮します。
SketchUpの背景制作に役立つプラグイン
SketchUpを使って背景制作を行う際には、プラグインを使って機能や素材を拡張しながら制作にあたるのも有効です。SketchUp専門のプラグインストアである「Extension Warehouse」からダウンロードできる、おすすめのプラグインを紹介します。
Skatter | Sky Dome | SketchPlus | |
特徴 | 空間設計効率化・アセットライブラリプラグイン | 実写の空描写を適用できるプラグイン | 無料版での機能制限を擬似的に解消できるツール |
料金 | 無料 | 無料 | 無料 |
Skatter
Skatterは簡単なクリック操作だけで植生プリセットで地形を覆ったり、独自のアセットを取り入れて人や車、建物などのモデルを自由に配置することのできるプラグインです。独自のレンダーエンジン活用アルゴリズムを実装し、大量のオブジェクトを配置してレンダリングを行ってもマシンの負荷が極端に重くなる心配はありません。
豊富なアセットをSkatter経由で利用できるようになるだけでなく、ランダム配置機能を使えば自然にオブジェクトを配置し、生き生きとした空間設計を実現可能です。
Sky Dome
Sky DomeはSketchUpでの空のイメージを実際の空の写真に変換して適用できるプラグインです。太陽や雲、雨などを正確に捉え、極めてフォトリアルな空間作成において効果を発揮します。
SketchPlus
SketchPlusは、無料版などでは使用できない一部の機能を擬似的に再現し、無料プランでも豊富な機能活用ができるようにする便利なプラグインです。お試しでSketchUpを利用しており、まだ本格的な製品購入は控えたいが機能は使ってみたいという方は積極的に活用してみましょう。
SketchUpの背景についてのまとめ
この記事では、SketchUpを使った背景制作の概要や、背景制作においてSketchUpが活躍する理由について紹介しました。3Dモデリングだけでなくアニメーションやイラストレーションの現場でも活躍するSketchUpは、活用方法を工夫することであらゆる業務ニーズに適用することができます。
プラグインなども上手に使い分けながら、現場の生産性向上に役立てましょう。