次世代の3Dモデリング技術として注目されているBIMは、導入メリットに期待が持てる反面、デメリットもあります。中でも導入コストの大きさは無視できるものではなく、できるだけ費用を抑えてBIM導入を進めたいものです。
そこでこの記事では、BIMに対応しているフリーソフト4選について解説していきます。
BIMとは
そもそもBIMはBuilding Information Modelingの略称で、施工や設計に必要な多くの情報を内包している3Dモデルを指します。これまでの設計業務では平面図と立体の3Dモデルは別個に作成・運用するのが一般的でしたが、BIMが普及した場合、BIMモデルだけで業務を完結させることができます。
3Dモデルの運用はもちろん、BIMデータをもとに平面図や断面図なども作成することができるので、平面図を分けて設計する必要がなくなるからです。設計負担は従来のCADよりも大きくはなるものの、その後の工程で設計業務に時間とコストを割く必要がなくなる上、維持管理業務においても有効活用ができることから、長期にわたった業務の効率化やコスト削減が可能です。
BIMソフトの使い方がどんなものなのか知りたい人は下記記事も参考にしてください。
BIM対応のフリーソフトはあるのか
このような導入コストの問題を解消するためのアプローチとして、検討したいのがフリーソフトの活用です。多くのソフトウェアには有償版には劣るものの、ある程度基本的な機能は利用が可能な廉価版の製品や、無料で提供されているフリーソフトが存在します。
CADソフトでも初心者向けの製品からプロレベルに至るまで、豊富なバリエーションのフリーソフトが存在しているため、BIM運用においてもこういった製品を活用したいと考えている人は少なくありません。
ただ、結論から言うと2023年7月現在、無料で使えるBIM対応のフリーソフトはそこまで普及しておらず、BIMソフトの導入には有償製品の購入が不可欠です。
BIMはその登場から10年近く経っていますが、依然として最新技術であることに変わりはなく、ソフトの利用者はもちろん、開発者にとってもコストのかかる機能です。
そのため、BIM機能を実現しているソフトの多くは大手ソフトウェアメーカーから販売されているものであり、最新機能をフル活用するにはこれらの製品に頼るほかはありません。
とはいえ、有償のBIMソフトであってもいくつかの製品には無料体験版を期間限定で備えているものもあり、これを使って部分的に利用することは可能です。まずは無料体験期間を通じてBIMの基本を理解し、自社に最適な製品導入を進める、というアプローチもあるでしょう。
また、最近ではだんだん無料で試用くらいなら使えるフリーソフトも登場しているので、BIMを試してみたいという人は下記フリーソフトを参考にしてみてください。
フリーで利用できる無料BIMソフト4選
全てのBIMソフトに無料体験版が付属するとは限りませんが、トライアル期間が設けられた製品であれば、幾分気軽に導入を進められますし、何よりBIMの費用対効果を実際に確かめる上では貴重な機会です。
ここでは、無料体験版がある主なBIMソフトをピックアップし、それぞれの製品を比較しながら紹介します。
まず、BIMフリーソフトの価格や特徴の違いをまとめました。
ソフト名 | Revit | ArchiCAD | GLOOBE | SketchUp |
価格(税込) /年〜 |
42万7,900円 | 41万8,000円 | 16万5,000円 | 無料〜 |
無料利用 可能期間 |
30日 | 30日 | 30日 | 永久 |
強み | 導入企業が豊富で関連製品との互換性にも優れる | ユーザビリティ重視で使える意匠設計機能が充実 | 基本機能を安価に利用可能 | 無料でお試し建築が可能 |
注意点 | 価格が最も高い | Revitほどの知名度はない | 別売オプションによるカスタマイズが必要な場合も | 無料版だと本格的なBIMは難しい |
性能や人気度を重視するのであれば、おすすめはRevitです。
関連ソフトも豊富でユーザー数が多く、コミュニティの活動が活発なので情報収集も容易です。
ArchiCADも人気の製品ですが、Revitほどの知名度はない代わりに、多少導入コストは安上がりと言えます。
コストパフォーマンスを重視するなら、おすすめはGLOOBEです。
国産BIMであるこのソフトは、基本機能に特化した製品であるため、安価に利用ができます。
ただ、高度な機能を実装する場合にはオプション購入費用がかかる点には注意しましょう。
1.Revit
Autodesk社が手掛けるRevitは、BIMソフトの代名詞とも言えるほど世界中で普及しているポピュラーな製品です。主に建築業務におけるBIM活用を支援するためのソフトで、建物の3DモデルをBIM形式で構築するのに必要な機能が一通り揃っています。
単体での運用はもちろんですが、Revitは他のAutodesk製品との併用によって、より優れた業務効率化を実現します。3D CADソフトのAutoCADからデータを移行し、既存の3DモデルをBIM化したり、土木建設ソフトのCivil 3Dと連携して、よりスケールの大きなモデリングをシームレスに実行したりと、さまざまな恩恵が得られます。
クラウド機能を活用したコラボレーション能力にも長けており、複数の関係者がリアルタイムで情報を共有し、モデリング業務を効率化することができます。
無料体験版を利用することができるため、ひとまずBIMがどのようなものか知りたいと考えている場合は、積極的に導入を検討したい製品です。
2.ArchiCAD
建築家による建築家のためのCADソフトをコンセプトとするArchiCADは、BIM対応が可能な意匠設計重視の製品です。直感的に多様なツールをすぐに取り出し、建築物のディテールを必要なだけ突き詰めることができます。
ユーザビリティは同製品が特にこだわっているポイントでもあり、複雑な形状であっても思うがままに仕上げられるのが強みです。先進的なBIMツールの利用が可能で、設計者のストレスを解消しながら大規模なプロジェクトもこなすことができます。
必要に応じたフォトリアルなビジュアライズ機能を使って、設計に詳しくない人でも完成イメージを明確に掴み、意思決定を迅速に行う後押しをしてくれるでしょう。
3.GLOOBE
GLOOBEは企画から設計、施工までのトータルマネジメントに対応している、日本発のBIMソフトです。日本の事務所や大手企業が採用してきた国内の設計手法や、日本の建築基準法に準拠したモデリングが行えるため、国内のプロジェクトにおいては無類の強さを発揮します。
海外のBIMソフトとは異なり、日本のユーザーを前提としたユーザーインターフェースや機能性は、従来の業務プロセスから大きく乖離することなくソフトを導入できるため、導入ハードルが低いという点も高く評価されています。
BIMを使った設計業務はもちろん、維持管理といったFM業務においても運用を前提としているため、長きにわたって竣工した建物を使い続けられるサステナビリティも確保できます。
後からアドオンをあれこれとインストールする必要もなく、オールインワンで多様な業務に従事できるので、インストールの際の面倒が少ないことや、コストパフォーマンスがかからないという点も評価できるソフトです。
4.SketchUp
SketchUpは基本的に3Dモデリング用のソフトですが、最近ではBIMに対応しやすくなったと話題になっているソフトです。BIMやCIMによく使われる「.IFC」の拡張子に対応したことでグッとBIMやCIMに利用しやすくなりました。
また、途中から64ビットOSにも対応したので、今までより処理速度が速く大規模な設計でもスピーディーに行うことができるようになっています。ただしフリー版の「SketchUp Free」だと処理速度や設計に制限があるかもしれないので、よく確認しておいてください。
その他、フリー・有償問わず人気のBIMソフトは下記記事で比較しています。
BIM対応のフリーソフトについてまとめ
この記事では、BIMのフリーソフトの有無やそのフリーソフトの特徴について詳しく解説しました。各種BIMソフトには無料体験期間が存在し、SketchUpならフリーで長く利用することができます。
今回紹介したBIMができるフリーソフト・無料体験版ソフトを利用して初期費用を抑えてBIMに挑戦してみてください。