【2025】リカレント教育とは？リスキリングとの違い・補助金一覧まで紹介

「働き方が変化する中で、今のスキルのままでこの先も通用するのだろうか」「業務に必要な新しい知識を学び直したいけれど、何から始めればいいのかわからない」と感じている企業も多いのではないでしょうか。

近年、建築業界ではDXの一環として、BIMを活用した設計や施工の効率化が進んでいます。しかし、導入や運用には専門知識が必要で、学び直しの機会をどう作るかが課題となる企業も少なくありません。

そこで本記事では、リカレント教育の意味やリスキリングとの違いを解説。BIM導入を目指す建築設計士・企業担当者が活用できる補助金制度や事例までわかりやすく紹介します。

リカレント教育とは？

リカレント教育とは、学校を卒業して社会に出た後も、必要に応じて仕事と教育を繰り返す学び直しのことです。簡単に言えば、一度就職してからもスキルアップのために再び学校や研修で学ぶ仕組みです。

例えば、建築設計士が社内でのDX推進のために新しい設計ソフトの使い方を講座で学ぶのも、リカレント教育の一つの形です。

リスキリングとの違い

近年は「リスキリング」という言葉も注目されています。リカレント教育と同じく社会人の学び直しを指しますが、目的や進め方に違いがあります。主な違いは以下の表を参照ください。

リスキリングはリカレント教育に含まれる一部であり、特にDX時代に必要なデジタルスキルの再教育で語られることが増えています。リスキリングについては以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

【2025】実践成功事例で学ぶリスキリング！メリット・注意点・対象スキルを徹底解説

リカレント教育の現状

日本のリカレント教育の現状は、徐々に広まりつつあるものの、定着しているとは言えません。パーソル総合研究所の「グローバル就業実態・成長意識調査」によると、学習・自己啓発の活動状況は約52%の割合で「何もしていない」と回答しています。

出典：株式会社パーソル総合研究所｜グローバル就業実態・成長意識調査（2022年）

国際的に比較してもかなり低い数値であり、海外のように「キャリアを中断して大学で学び直す」というライフコースは、まだ一般的ではないのが現状です。

リカレント教育を導入するメリット

リカレント教育を企業が取り入れることで、企業・従業員双方に多くのメリットが生まれます。ここでは主なメリットを4つ解説します。

1. 即戦力化につながる
2. 離職防止とエンゲージメント向上ができる
3. 現場のデジタル化・自動化を促進する
4. 助成金・補助金を活用して低コスト導入が可能

①即戦力化につながる

人材育成の観点における利点は、社員を早期に即戦力化できる点です。必要なスキルを既存社員に身につけさせることで、人手不足の解消や採用コストの削減につながります。

新規採用よりも、今いる社員をマルチスキル人材として育成する方がスピードも安定性も高いでしょう。将来的な労働人口減少を見据えて、社内で人材を育てることは企業の持続的成長にも直結します。建築業界でBIMなど新ツールを導入する場合も、既存設計士に研修で習得させればすぐ実務で活かせます。

②離職防止とエンゲージメント向上ができる

リカレント教育は、社員の成長意欲を高め、仕事への満足度を上げる効果があります。社員が「この会社で学び成長できる」と感じれば、会社への愛着が深まり、離職率の低下にもつながります。

一方で「スキルアップした社員が転職してしまうのでは」と心配する声もありますが、成長を支援する企業は「学びを応援する会社」として評価が高まり、優秀な人材の応募が増える傾向にあります。結果として、職場全体が活性化し、定着率向上という好循環が生まれます。

③現場のデジタル化・自動化を促進する

急速に技術が進化する現代では、企業のDXは避けて通れません。しかし、多くの企業で課題となるのがデジタル人材の不足です。リカレント教育によって社員がAIやデータ分析、クラウドなどの知識を学べば、業務の自動化や新しい仕組みづくりがスムーズに進みます。

富士通や日立製作所などでは、全社員を対象にDX教育を行い、社内改革を加速させています。建設・建築業界でも、紙中心の作業をBIMやICT施工に置き換える流れが進行中です。

④助成金・補助金を活用して低コスト導入が可能

リカレント教育は費用がかかると思われがちですが、助成金や補助金を活用すれば低コストで導入可能です。国の支援制度を利用することで、研修費や教育休暇制度の一部が補助され、企業負担を軽減できます。

例えば厚生労働省の「生産性向上支援訓練」は、中小企業でも利用しやすいオープンコース形式の研修が用意されています。支援を活用すれば、企業・個人どちらも費用面の不安を抑えて学び直しを始められます。

以下の記事では建設業におけるDX促進のメリットについてより詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

【2025】教育DXが建設業にもたらす変革とは？BIM人材育成・実務への応用まで

リカレント教育を導入する4つのステップ

リカレント教育を導入する際は以下4つのステップで行いましょう。

1. 目的と対象を明確にする
2. 必要なスキルを洗い出す
3. 最適な教育方法を選ぶ
4. 学習成果を評価し・仕組み化する

ステップ①目的と対象を明確にする

まず最初に取り組むべきは、「なぜ学び直しが必要なのか」を明確にすることです。たとえば、BIMを社内で活用できる人材を増やしたいのか、デジタル設計のスキルを底上げしたいのか、目的によって実施内容は大きく変わります。

加えて、「誰を対象にするのか」も重要です。設計担当者・若手社員・管理職など必要なスキルが異なるため、目的と対象を最初に整理することで、無駄のない教育計画を立てられます。この段階をあいまいにすると、後で「何を学ばせるべきか」「成果をどう測るか」が不明確になり、効果が薄れてしまいます。

ステップ②必要なスキルを洗い出す

次に、現状と理想のギャップを可視化しましょう。例えば、設計部門で「BIM導入を進めたいけれど操作できる人が少ない」という課題がある場合、求められるスキルはRevitやArchicadの操作・モデリング・チーム共有のノウハウなどです。スキルを細かくリスト化することで、「何を学べば現場で成果を出せるのか」が明確になります。

ここでは、現場のリーダーや担当者の声をヒアリングして、実務で使えるスキルに焦点を当てることがポイントです。机上の理論だけでなく、現場の課題に直結した内容にすることで、教育効果が上がります。

ステップ③最適な教育方法を選ぶ

目的とスキルが定まったら、次は「どう学ぶか」を決めます。リカレント教育の方法は、さまざまですが主に以下が挙げられます。

• 社内研修
• 外部セミナー
• オンライン講座

たとえば、短期間でBIM操作を学ばせたい場合は、外部の専門研修がおすすめです。一方で、継続的なスキル定着を狙うなら、社内OJTや定期勉強会が向いています。また、助成金制度を活用して費用を抑えるのも重要です。

ステップ④学習成果を評価・仕組み化する

最後に、教育の成果を数値や行動で確認します。「学んだ後にどんな変化があったのか」「現場の生産性は上がったのか」など、評価基準を決めておきましょう。

成果が確認できたら、それを社内の仕組みとして定着させる段階に入ります。教育を一度きりで終わらせず、定期的にスキル確認を行い、必要に応じてカリキュラムを更新しましょう。

リカレント教育で使用できる助成金・補助金一覧

ここでは、国が提供しているリカレント教育で使用できる助成金・補助金を一覧で紹介します。

この他にも、在職者向けのキャリアコンサルティングを無料で利用できる制度や、自己啓発にかかった費用について税控除を受けられる特例措置など、公的支援策が用意されています。

リカレント教育の導入事例

続いて、実際に企業がリカレント教育を導入している具体的な事例を2つご紹介します。それぞれ異なるアプローチで社員の学び直しを支援しているケースです。

1. ソニー株式会社
2. キャノン株式会社

①ソニー株式会社

ソニーは2015年から「フレキシブルキャリア休職制度」を導入し、社員の学び直しを積極的に支援しています。社員が一定期間仕事を離れ、大学院留学や専門学校通学など自己研鑽に専念できる制度です。創業当初から「キャリアは自分で築くもの」という理念を掲げ、休職をキャリアの停滞ではなく、成長の機会と位置づけています。

制度の背景には、「多様なキャリアを支援することがイノベーションにつながる」という経営判断があります。社員は会社の後押しで安心して学びに挑戦でき、企業側も新しい知識を得た人材が戻ることで組織力を高められます。

②キャノン株式会社

キャノンは「社員の成長意欲を最大限に支援する」ことを人材育成の基本方針とし、社内で多様なキャリア形成の仕組みを整えています。なかでもリカレント教育に関係が深いのが、「キャリアマッチング制度」です。社内イントラネット上で他部署や新規プロジェクトの募集ポストを公開し、社員が興味のある分野へ自ら応募できる仕組みになっています。

この制度の特徴は、単なる異動ではなく「研修型の社内公募」を導入している点です。新規事業の募集では、選ばれた社員が異動前に数か月の専門研修を受け、新しいスキルを身につけられるのです。

リカレント教育を短期間で促進できるおすすめセミナー

 ここまでを読んで「リカレント教育ってどんなものを導入するのがいい？」と悩む方も多いでしょう。そこでおすすめするのが「DX・AI人材育成研修サービス」です。

DX・AI人材育成研修サービスでは、現場で即戦力となる実践的スキルの習得を目的に設計された法人向け教育プログラムです。企業の課題や業種に合わせて、短期集中型から中長期育成型まで柔軟にカリキュラムを設計できます。

また、キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金・DXリスキリング助成金などの制度を活用すれば、研修費用の一部をまかなうことも可能です。費用面の負担を抑えながら、社内で学び直しを実現できるのも魅力と言えるでしょう。

リカレント教育についてのまとめ

建築業界におけるBIM導入やDX推進を進めるうえで、社員一人ひとりが新しい知識を学び直す「リカレント教育」は必須です。リスキリングと組み合わせることで、現場で即戦力として活躍できる人材を社内で育成でき、採用コストの削減や離職防止にもつながります。

また、国の助成金制度を活用すれば、費用を抑えて教育を実施することも可能です。本記事を参考にリカレント教育制度を導入してみてはいかがでしょうか。