建設業でもBIMやCIMの導入が一般化しつつある今、現場で働く人に求められる知識や役割は以前より大きく変化しています。図面作成や管理方法がデジタルへ移行する中、「どこから学び直せばいいのか」「自分の経験はそのまま活かせるのか」と不安を抱える方も少なくありません。
こうした背景から注目されているのが「DXリスキリング」です。この記事では、DXリスキリングの仕組みや助成金の活用方法まで順序立てて解説します。
リスキリングとは?
リスキリングは、業務で必要となる新しいスキルを身につけるための学び直しを指します。とくに現代の建設業では、BIMやCIMなどデジタル技術の導入が進み、これまで図面作成や現場管理で培ってきた経験に加えて、デジタルツールを扱う力が求められるのが現状です。
仕事の変化に合わせて知識を更新することで、個人の活躍の幅が広がり、企業としてもDX推進を加速させる基盤が整います。
リカレント教育とアンラーニングとはどう違う?
リスキリング、リカレント教育、アンラーニングの違いを一覧表にまとめると以下のようになります。
| 概念 | 目的 | 学ぶタイミング | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| リスキリング | 仕事で新しい技術を使えるようにするための「学び直し」 | 仕事の変化・DX推進の必要性が生じたとき | BIM/CIM、デジタルツール、AI活用など実務直結のスキル |
| リカレント教育 | 生涯を通じて定期的に学び続けること | 自主的にスキルアップしたいとき | 大学・専門講座・通信教育など幅広い学習 |
| アンラーニング | 既存の思い込みや古い手法を捨て、新しい考え方を取り入れること | 新しい技術・習慣に適応する際 | 従来の作業フローや慣習を見直す思考の刷新 |
リカレント教育は、自分のキャリアを見据えながら、必要に応じて定期的に学び続けることを意味します。一方でアンラーニングは、これまで当たり前と思っていた手順や考え方をいったん手放し、新しい方法に適応するための思考の整理を指します。
建設業のDXでは、最新のデジタル技術を習得するだけでなく、従来の慣習や作業フローを見直す姿勢も欠かせません。リスキリングと合わせて取り組むことで、よりスムーズな業務改善や技術導入につながります。
以下の記事では、リカレント教育について解説していますので、興味のある方はぜひご一読ください。
建設業でDXリスキリングが重要視される理由
ここでは、建設業でDXリスキリングが重要視される理由として、以下をご紹介します。
- 現代ではDX化が急務となっているから
- 生産性向上と人手不足解消に直結するから
- BIM/CIM対応スキルが業務効率を大きく変えるから
- 企業として競争力を維持するために必須だから
①現代ではDX化が急務となっているから
建設業では、設計から施工管理まで多くの工程がデジタル化へ移行しており、現場でもDXへの対応が避けられなくなっています。これまで紙の図面や口頭で進めていた作業も、BIMやCIMを活用したデータ連携が標準になりつつあるのです。
こうした変化に追いつくには、従来のスキルだけでは不十分で、業務に直結するリスキリングが必要になります。企業としても、新しい技術を扱える人材を育てることで、事業全体のスピードと精度を高められる状況が生まれています。
②生産性向上と人手不足解消に直結するから
建設業の深刻な課題である人手不足を乗り越えるには、DXによる業務効率化が不可欠です。現場の測量、施工管理、工程調整など、時間がかかっていた作業はデジタル技術で大幅に短縮できます。
ただし、その効果を最大限に発揮するには、働く人が新しいツールを使いこなせるようリスキリングを進めることが重要です。デジタル化した業務フローを現場に定着させることで、限られた人数でも高い生産性を維持できる環境が整います。
③BIM/CIM対応スキルが業務効率を大きく変えるから
BIMやCIMを活用したデジタル施工は、建設業のDXを大きく前進させる要素として注目されています。設計情報を一元化できるため、たとえば図面の確認や工程調整にかかる時間が短縮され、現場との情報共有もスムーズになります。
ただ、こうしたツールを活かすには、担当者が運用方法を理解していることが不可欠です。そのため、実務レベルで使えるスキルを身につけるリスキリングが重要になるのです。
④企業として競争力を維持するために必須だから
建設業界では、国や自治体の方針によりDXを前提としたプロジェクトが増えています。BIMモデルの提出が求められる案件も一般化し、デジタルに強い企業ほど受注のチャンスが広がる状況になっています。
この流れに対応するには、現場だけでなく組織全体としてスキルを底上げする取り組みが必須です。リスキリングを通じて人材を強化すれば、新しい技術に素早く対応できる体制も整います。
日本でDX化が進まないと言われる理由
この章では、日本でDX化が進まないと言われる理由として、代表的な以下をご紹介します。
- 現場でのIT人材不足が深刻だから
- 既存業務が属人化していて変革しづらいから
- 研修に割く時間・予算が確保しにくいから
①現場でのIT人材不足が深刻だから
建設現場では、ITに精通した人材がまだ十分に確保できておらず、DXを推進したくても運用面で立ち止まってしまうケースが多くあります。BIMやCIMを扱える人が限られているため、導入後も活用しきれない状況が生まれやすいです。
こうした課題を解消するには、現場で働く人が必要なスキルを身につけられるよう、計画的にリスキリングを進めることが求められます。人材の底上げこそが、そのままDXの推進力につながるのです。
②既存業務が属人化していて変革しづらいから
建設業では長年の経験に基づいた作業が多く、特定の担当者に業務が集中してしまう「属人化」が目立ちます。この状況では、DXに合わせた新しいフローへ切り替える際に抵抗が生まれやすく、組織全体で変革を進めにくくなります。
そこで重要になるのが、社員一人ひとりがデジタルに適応するためのリスキリングです。基礎的なデジタル知識を共有し、ツールを誰でも扱える状態にすることで、属人化の解消とDXの浸透が両立しやすくなります。
③研修に割く時間・予算が確保しにくいから
建設業は納期や工程調整がタイトなことも多く、研修のためにまとまった時間を確保するのが難しい業界です。さらに、DXに関わる研修は費用がかかることも多く、投資判断が後回しになりがちです。
ただし、こうした状況のままでは変化がますます遅れてしまいます。だからこそ、短時間で学べる講座を取り入れたり、助成金を活用したりしながら、現場負担を減らしながらリスキリングを進める工夫が必要です。
DX・AI人材育成研修サービスでは、現場で即戦力となる短期集中のDX・AI研修を提供しています。入念なヒアリング、そして日常業務と並行しながら継続するためのプラン提案が大きな特徴で、手軽に無料相談から始められます。
建設業でDXリスキリングが求められる領域
建設業でDXを進めるためには、現場と設計の双方でデジタル技術を扱える人材が欠かせません。中でもBIMやCIMを用いた設計・施工管理、ドローン測量や3Dスキャナーによる現況把握、クラウド型の工程管理ツールなど、業務全体でデータを活用する場面が急速に増えています。
これらをきちんと使いこなすには、現場従業員から管理職まで幅広い層でリスキリングを進める必要があり、DXを前提にした働き方へ移行するための重要な領域となっています。
DXリスキリング助成金とは?

DXリスキリング助成金は、東京都の中小企業が従業員向けにDX研修を行う際、研修費用の75%を補助する制度です。レディメイドとオーダーメイドの両方が対象となり、企業全体で最大100万円まで申請できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 東京都内の中小企業がDX研修を実施した際、研修費用の一部を助成する制度 |
| 助成率 | 研修費用の3/4(75%) |
| 上限額 | 75,000円/1人/1研修 |
| 上限額(企業) | 100万円/1企業<br>※上限まで複数回申請可能 |
| 研修の種類 | ①レディメイド研修:一般公開されている既存研修
②オーダーメイド研修:自社向けカスタマイズ研修 【実施形態】 |
| 実施条件 |
|
| 対象者 | 都内事業所に常時勤務する従業員 |
| 対象外 |
|
| 申請タイミング | 研修開始日の1か月前まで
※研修開始後の申請は不可 |
引用:東京しごと財団公式サイト
研修を業務時間内に実施するなど細かな条件はありますが、負担を大きく減らせる点は非常に魅力的です。DX人材を育てたい企業にとって、実践的なリスキリングを進める大きな後押しになります。
また、助成金の条件や対象者は変更になるケースがあります。活用を検討の際は、必ず公式サイトで確認しましょう。
建設業でDXリスキリングを成功させるポイント

ここでは、建設業でDXリスキリングを成功させるポイントを以下のとおりご紹介します。
- BIM/CIMを中心に学習領域を明確にする
- 現場で使うツールやフローに直結させる
- 管理職と若手を同時に育成する
- 外部研修と社内研修を組み合わせる
①BIM/CIMを中心に学習領域を明確にする
建設業でDXを推進するうえで、まず重点を置くべき学習領域を明確にすることが大切です。とくにBIMやCIMは設計と現場管理を一体化できる中核技術であり、業務全体の効率を左右します。
どの工程でデジタル化を進めたいのか、どの職種に習得してもらうのかを整理したうえでリスキリングを進めることで、学習内容が現場で確実に活かされます。
②現場で使うツールやフローに直結させる
DXの研修を実施する際は、学んだ内容が実際の現場業務にすぐ応用できるよう設計することが重要です。
たとえばBIMモデルの閲覧、工程管理アプリの操作、クラウドでの情報共有など、日常的に触れるツールを軸にリスキリングを進めることで習得が早まり、定着につながります。
③管理職と若手を同時に育成する
DXを定着させるには、現場を動かす管理職と、実務を担う若手の双方がデジタルに強くなることが重要です。どちらか片方だけが理解していても業務フローの改善はなかなか進みません。
管理職はマネジメント視点でDXを理解し、若手はツール運用を実践的に学ぶなど役割に応じた育成を組み合わせると効果的です。
④外部研修と社内研修を組み合わせる
建設業でDXを長期的に根付かせるには、外部の専門研修と社内での実践型研修をバランスよく取り入れる方法が適しています。
たとえば、後にも紹介する「DX・AI人材育成研修サービス」のような外部研修では、最新のBIM/CIM技術やDX事例を体系的に学べます。一方、社内研修では自社の業務フローに合わせて習得内容を落とし込めるため、リスキリングの成果が日常業務に直結します。
なお、以下の記事では、企業のリスキリング投入事例を紹介しています。興味のある方は併せてご一読ください。
外部研修を検討するならDX・AI人材育成研修サービス!

建設業でDXを現場レベルまで浸透させるには、専門的な知識を体系的に学べる「DX・AI人材育成研修サービス」が役立ちます。DXレベルチェックで自社の状況を見える化し、どの領域から学ぶべきか明確になるため、リスキリングの方向性を迷わず進められます。
さらに、建築・製造領域に精通したコンサルタントが実践的な研修を行うため、学んだ内容がそのまま現場改善につながりやすい点も魅力です。短期から中長期まで柔軟に計画でき、助成金の相談にも対応してもらえるため、初めてでも安心して導入できます。
建設業のDXリスキリングと助成金活用についてまとめ
建設業でDXを進めるには、現場で使えるスキルを身につける「リスキリング」が欠かせません。BIM/CIMを中心とした学びを段階的に進めることで、業務の効率化や人手不足の解消につながります。
さらに、助成金を活用すれば研修費用の負担を抑えながら人材育成を進められるため、企業全体で取り組む体制も整えやすくなります。学びと支援制度を上手に組み合わせ、未来の建設現場に必要なDX人材を育てていきましょう。