CADソフトは建築設計や設備設計などの業務には欠かせない存在ですが、多くの製品が存在する以上、どれを導入すべきか悩む人も少なくないでしょう。
この記事では、CADソフト選びで悩んでいる人が知っておきたい、Jw_cadとはどんなCADソフトなのか、他のポピュラーなCADソフトとどんな違いがあるのかについて、解説します。
Jw_CADとは
Jw_cadは日本人が開発・提供している2DCADソフトの一種です。主にWindowsでの運用を想定しているソフトで、豊富な種類の線を引けたり、独特の操作システムを備えて高いユーザビリティを実現したりしている点が評価されています。
Jw_cadの最大の特徴は、やはり無料で使えるライセンスフリーのCADソフトである点です。通常であればCADソフトは有償のものが大半を占めており、利用に当たっては高額なライセンス料金を支払わなければならないのが当たり前でした。
しかしJw_cadの場合、ソフトの利用は完全に無料であり、商用利用も認められていることから、購入費用をゼロに抑えて2DCAD設計をスタートさせることができます。コストパフォーマンスという面では、トップクラスに優れた製品です。
Jw_cadのメリット
Jw_cadの利用は、具体的にユーザーへどのようなメリットを提供してくれるのでしょうか。覚えておきたいメリットは、以下の通りです。
迅速に現場へCAD導入ができる
まず、Jw_cadは上でも紹介したように、数少ない無料でフル機能を使用することができるCADソフトです。そのため、CADの導入が現場で必要になっても、インターネット環境さえあれば迅速にソフトをダウンロードし、すぐにJw_cadを展開・利用を行えます。
有償のCADソフトを組織的に使おうとすると、ソフトのダウンロードのためにそれなりの時間を必要としますし、何より人数分だけCADソフトを購入しなければならないという、金銭的な負担も大きくなるでしょう。
一方でJw_cadの場合、どれだけソフトをダウンロードしても無料である上、機能がシンプルな分動作も容量も軽量なので、迅速にインストールを進められます。
建築系の機能が豊富
Jw_cadは他のソフトと比較しても、比較的建築系の機能が豊富な部類に入る製品です。CADソフトはその種類によって領域の得手不得手があるもので、せっかく有償ソフトを購入したのに必要としている機能がない、あるいはスムーズに使えないというケースに発展する可能性も抱えています。
一方でJw_cadは建築領域で活躍する各種ツールを備えているソフトなので、この分野でのCAD運用を考えている場合は安心して使うことができます。万が一Jw_cadが期待に応えられるようなソフトでなかった場合も、無償ソフトであるため導入費用が無駄になる心配もありません。
他のソフトとの互換性を有している
Jw_cadは他のCAD製品とも互換性を備えており、いくつかのファイル形式にもシームレスに対応することができます。普段はJWW形式のファイルを扱いますが、DXFやSFC、P21といったファイル形式の展開・保存が可能です。
すでに他のCADソフトを扱っており、互換性の問題を懸念している場合も、Jw_cadであれば安心して導入ができるでしょう。
Jw_cadのデメリット
利便性に優れるJw_cadですが、一方で導入に当たっては注意すべきデメリットもあります。
動作保証が期待できない
まず、Jw_cadはフリーソフトということもあり、有料のソフトのような開発者からの手厚いサポートを期待することができません。Jw_cadは定期的にアップデートされており、時代のニーズやマシンスペックに合わせて対応が行われているものの、最新のマシンの場合は動作しない、あるいは意図しないエラーが発生する場合もあります。
無料ソフトのため仕方がない部分もありますが、ソフトに対する安定感や確実性を求める場合は、事前に動作チェックなどを丁寧に行なってから取り組むようにしましょう。
2Dに機能が限定されている
Jw_cadはフリーのCADソフトですが、残念ながら3D機能を搭載しておらず、2Dのみでの使用に限定されています。
2DCADは設計図を描く上で欠かせない機能ではあるものの、近年は3D技術を使用したBIMモデルに情報を集約し、運用するという潮流も大きくなりつつあります。2D機能だけ使用するという機会は今後減っていく可能性もあるため、BIMソフトを導入するまでの繋ぎ程度の活躍しか見込めない可能性もあるでしょう。
有料ソフトには機能が劣る側面もある
Jw_cadは無料で使えるという点は便利ですが、ダウンロードした時点での機能をさらに拡張することには対応していません。そのため、有料ソフトよりも機能面で物足りなさを感じてしまう可能性はどうしても拭えないため、ある程度は許容する必要もあるでしょう。
ハイエンドなCAD機能を求めている場合、Jw_cadではない有料のソフトを頼ることが大切です。
Jw_cadの主な機能
Jw_cadには、主にどのような機能が備わっているのでしょうか。ここではJw_cadの特徴的な機能について、解説します。
クロックメニュー
Jw_cadを代表する機能とも言えるのが、このクロックメニューです。クロックメニューとはその名の通り、時計盤のようなメニューをマウスによって操作し、各種機能を呼び出すことができます。
クロックメニューをクリックしながら時計盤を操作することで、右下に実行可能なコマンドが表示されます。感覚的にコマンドを入力できる便利な機能で、使いこなせば強力な業務効率化ツールとなるでしょう。
また、クロックメニューで実行するコマンドについてはカスタマイズができます。そのため、よく使用するコマンドをクロックメニューに実装し、オリジナルのメニューを使いこなすことも可能です。
設備関連の作図機能
Jw_cad上で2D図面を描画する際には、各種コマンドを使用することで簡単に描くことができます。描画コマンドはそれぞれ立面図、平面図、断面図とカテゴリ分けされているので、それぞれの目的に合わせた柔軟な作図が可能です。
また、図面コマンドについては独自に登録しておくこともできるので、あらかじめ各種描画コマンドを用意しておけば、以降の作図業務も短時間で完了できるでしょう。
2.5次元機能
Jw_cadは基本的に2D図面に特化しているツールであり、3Dでのモデリングには対応していませんが、それを保管する機能として2.5次元機能と呼ばれるものがあります。
これは作成した平面図に対して高さや奥行きを設定し、立体的な描写を擬似的に実現するものです。図面に立体感を与えることで、地形や壁の形状などについてのディテールを表現しやすくなり、質の高い図面作成に貢献します。
3Dモデルでなくとも、詳細に設計意図を伝えられるようになるでしょう。
Jw_cadとAutoCADの違い
Jw_cadとよく比較されるCADソフトとして、AutoCADが挙げられます。
AutoCADはJw_cadとは異なり有料のCADソフトで、強力なモデリング機能を搭載していますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
Jw_cadとAutoCADを比較する上でのポイントは、
- 3D対応の有無
- 対応業務の範囲
- 操作性
の3つが挙げられます。それぞれについて、詳しく解説します。
Jw_cad | AutoCAD | |
3D対応 | 無 | 有 |
対応業務範囲 | 建築設計 | 建築や設備、土木など複数 |
操作性 | クロックメニューを使ったショートカット機能を搭載 | 先進的なUIによる使いやすさの確保 |
3D対応の有無
まずJw_cadとAutoCADの3Dモデリング対応についてですが、上述の通りJw_cadは2Dに特化している一方、AutoCADは3Dモデリングを実行可能なソフトとして開発されました。
そのため、2Dと3Dの両方のモデリングをAutoCAD一台で実行できるため、CADが必要な場面はこれ一台で賄うことができます。
対応領域の範囲
Jw_cadは建築設計に特化した機能を備えている一方、AutoCADは豊富な領域に対応可能な汎用性を備えている点も特徴です。建築以外にも土木建設やプロダクトデザインなどの幅広い領域に対応しているため、対応可能領域の広さで使用する製品を選びたい場合、AutoCADを選んだ方が良いかもしれません。
ただ、建築設計の2D図面作成に業務が限定されている場合、Jw_cadでも十分に賄うことができるので、まずはこちらを利用してみるという考え方も有効でしょう。
操作性
Jw_cadは独自のクロックメニューが強みの一つであり、効率的な図面設計を促進してくれています。一方のAutoCADもショートカットツールが存在し、カスタマイズはできるものの、クロックメニューほどの独自性は備えていないため、Jw_cadの操作に慣れてしまうとやや使いづらさを覚えるケースもあるかもしれません。
とはいえ、AutoCADは整理されたユーザーインターフェースを備えているため、Jw_cadとは異なる使いやすさを備えているのも事実です。
Jw_cadはMacでも使える?
Jw_cadは基本的にWindows向けに開発されているCADソフトですが、Mac対応も進んでいるのが特徴の一つです。公式サイトからMac版をダウンロードすれば、Mac OSからの利用が可能です。
ただ、Jw_cadのMac版は2023年11月現在、アップデートが止まっており、最新のOSでは動作しない可能性があります。最新のMac OSを使用している場合、あらかじめ動作確認しておくことをおすすめします。
Jw_cadについてのまとめ
この記事では、Jw_cadの基本的な概要や活用のメリット、そしてAutoCADとの比較ポイントについて解説しました。無料で使えるCADソフトとしては高い操作性を備えるJw_cadは、コストを抑えて2DCADを運用したい場合などに活躍が期待できるソフトです。
無料で使える以上、たとえ自社業務にフィットしなくとも金銭的な負担はないので、まずは試しに利用してみることをおすすめします。