BIMソフトの導入を検討している組織にとって、魅力的な製品の一つと言えるのがARCHICADです。BIMソフトにもいくつかの種類がありますが、国内外の多くの企業がARCHICADを採用しているのにはどのような理由があるのでしょうか。
この記事では、そんな人気のBIMソフトであるARCHICADについて、製品の概要や導入メリット、そして同じく人気のBIMソフトであるRevitとどのような違いがあるのか、詳しく解説します。
ARCHICADとは
ARCHICADは、ハンガリーのGRAPHISOFT社が提供する海外製のBIMソフトです。
従来の3DCADとは異なり、BIMは3Dモデルの中に材質や材料の価格、寸法など、多様な情報を内包し、平面図不要の設計業務を可能にできます。
ARCHICADは、そんなBIM運用を高いレベルで実現できる製品です。
ARCHICADは業界の中でも比較的早期に開発・提供されたBIMソフトで、業界トップクラスの信頼と実績を誇ります。欧米諸国はもちろん、日本を含めた世界各国で現在もアップデートを繰り返しながら広く運用されており、高度で複雑な設計プロジェクトの根幹を支える製品です。
ARCHICADでできること
具体的に、ARCHICADはどのような機能をユーザーに提供しているのでしょうか。
ここでは、ARCHICADが有している主な機能について解説します。
ARCHICADによるBIMを使った高度な3Dモデリング
ARCHICADの最大の強みとも言えるのが、やはりその高度なBIMモデリングです。フロアごとや建物全体の面積を瞬時に把握できるボリュームツールや、3Dで通り芯を配置できる機能、ディテールに優れるデジタルモックアップを使った詳細設計など、多岐にわたる機能を備えます。
また、ARCHICADならではの成型ツールであるモルフツールやシェルツールを使用することで、まるで粘土を使って自由に形を整えていくような、極めて柔軟性の高いモデリングを行えます。
ARCHICADによる整理された情報管理
BIMの優れたところは情報管理を高度なレベルで行えるところにあります。ARCHICADは、そんなBIMの強みである情報管理のしやすさをより高める設計を実現しているのが特徴です。
床や壁、天井といった各部材をクリックするだけで、テキストで仕上げ情報を簡単に呼び出すことができます。各メーカーのカタログ情報などを部材に紐づけておけば、ワンクリックで詳細情報をBIMモデルから呼び出し、クライアントへの円滑な説明を行うなどの業務効率化にも役立つでしょう。
ARCHICADによる豊かなビジュアライゼーション機能
材質や寸法などが極めて正確に反映されるBIMモデルですが、ARCHICADではそんなBIMモデルを「見せる」ための機能も充実しています。3Dウインドウを展開すれば、建物の外観を自由な角度から閲覧できるだけでなく、建物の中を歩き回るようにしながら確認することもできます。
また、建物が実際の環境下でどのような変化を見せるのかについても、日陰シミュレーションなどの高度な分析機能を活用し、より正確なフィードバックやイメージの共有を促すのに役立てられるでしょう。
ARCHICADによる遠隔での共同作業
巨大なプロジェクトになると、複数人で一つの図面設計に取り掛かることも珍しくありません。
ARCHICADでは、オンラインで複数の設計者が一つの図面にアクセスし、共同で設計作業を行ったり、リアルタイムでフィードバックをしたりといった共同作業ができます。
設計者が一つの空間に集まる必要がないので、リモートワークを実施している担当者や、出張中の担当者、海外拠点の担当者とのやりとりをスムーズに行えるでしょう。
ARCHICADの導入メリット
上記のような機能を活用することで、ARCHICADの導入企業は具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。注目すべき導入メリットについて、3つピックアップして解説します。
ARCHICADはCADからの移行が容易
ARCHICADはCAD全盛期の時代からBIMを提供してきた製品ということもあり、CAD運用者を前提とした設計を採用しているBIMソフトです。
2DCADにおいては馴染み深い、レイヤーの概念を採用しているため、これまでCADを触ってきた人にとっては、ARCHICADはすぐに習得ができるBIMソフトとなるでしょう。
BIMへの移行が進まない理由の一つに、BIMソフトを運用できる人材の確保や育成が進まないという問題が挙げられます。ARCHICADなら、そんなBIMへの移行コストを最小限に抑えられるため、魅力的な選択肢です。
ARCHICADはモバイル対応で現場でも運用できる
ARCHICADは基本的にPCでの運用を想定している製品ですが、専用のモバイルアプリ「BIMx」を利用することで、タブレットからBIMデータにアクセスすることができます。
BIMモデルはそのまま設計図として活用できるのが強みですが、BIMモデルをPC以外の環境で閲覧できなければ、図面としての運用効果は期待できません。
ARCHICADならシームレスにデータをモバイルから閲覧できる仕組みが整っており、現場作業のデジタル化を推進することができます。
ARCHICADはMacに対応している
ARCHICADはMac OSからも利用ができるという点もメリットです。
多くのBIMソフトはWindows向けに設計されており、Mac環境では動かすことができません。
一方でARCHICADはWindowsで動かすことができるのはもちろん、Macでも動作させられるため、PC環境の心配をすることなく使用できるのが便利です。
現在Macを使用していて、BIM導入のためにWindows環境の導入を検討している場合、ARCHICADなら丸ごとWindows導入のコストを削減することができるでしょう。
ARCHICADの価格
ARCHICADには複数のバージョンと料金プランがあるため、どれを選ぶかによって価格は異なります。以下の表は、ARCHICADの料金プランをまとめたものです。
ARCHICAD | ARCHICAD Solo | BIMCloud | ARCHICAD Collaborate | |
月額料金 (税込) |
5万9,400円 | 3万6,300円 | 1万2,100円 | なし |
年額料金 (税込) |
41万8,000円 | 25万800円 | 7万1,500円 | 41万8,000円 |
永久ライセンス (税込) |
118万1,400円 | 59万700円 | なし | なし |
ARCHICADには通常版に加え、ARCHICAD SoloとBIMCloud、ARCHICAD Collaborateという3種類が別途存在します。
ARCHICAD Soloは廉価版のARCHICADで、安価にARCHICADを導入できます。
BIM CloudはARCHICADの拡張機能で、より高度なBIM連携を実現するのに役立ちます。
ARCHICAD CollaborateはARCHICADとBIM Cloudがセットになったサービスで、お得に2つの製品を使いたい際に役立つ製品です。
上記の表を参考にしながら、予算に合ったサービスを導入しましょう。
ARCHICADは無料で使える?
ARCHICADには上記のプランとは別途、無料体験版が存在します。
無料体験版は30日間、ほぼ全てのARCHICADの機能を使用することができるサービスで、ARCHICADの使い方を覚えたり、他のBIMソフトと比較して検討したりするのには最適なプランです。
ARCHICADを無料で使い続けることはできませんが、お試しで導入したいという場合には積極的に活用しましょう。
ARCHICADとRevitの違い
ARCHICADと並んで運用されているBIMソフトとして、Autodesk社のRevitが挙げられます。
RevitもハイエンドなBIM製品として優れた実績を有していますが、具体的には2つのソフトにどのような違いがあるのでしょうか。以下の表では、ARCHICADとRevitの違いを簡潔にまとめています。
Archicad | Revit | |
価格 (税込) |
41万8,000円/年〜 | 42万7,900円/年〜 |
永久ライセンス | あり:118万1,400円 | なし |
無料利用可能期間 | 30日 | 30日 |
特徴 | 意匠設計に強いBIMソフト。 直感的な操作が可能なユーザーインターフェースで、短期間でBIM運用のスキルを身につけられる。 |
ポピュラーなBIMソフト。 単体での運用はもちろん、Autodeskの各種製品との互換性にも優れる。設備設計におけるBIM運用が可能 |
対応OS | Windows/Mac OS | Windowsのみ |
どんな企業向けか | 主に建築領域 アトリエ系事務所など意匠設計に力を入れたい場合 |
設備設計や土木領域の業務も発生する場合 |
まず、ARCHICADとRevitでは価格やライセンス形態に違いがあります。
ARCHICADの方が導入価格は若干安価で、永久ライセンスの販売もあるため、長期的なコストパフォーマンス削減効果が見込めます。
また、ARCHICADはMacに対応している一方、RevitはWindowsのみの製品であるため、Macユーザーは必然的にARCHICADを選ぶことになるでしょう。
Revitの強みは、設備設計に関するBIM機能が優れていることにあります。
設備設計に関する業務が多く発生する場合、ARCHICADよりもRevitの方が優れていることも多いかもしれません。
出典:公式サイト
自社の環境やBIMの導入目的に合わせた、最適なツール選びが大切です。
ARCHICADについてのまとめ
この記事では、ARCHICADへの理解を深める上で知っておきたい、基本的な機能や導入メリットについて解説しました。Mac対応のBIMソフトとしてはARCHICADが最もポピュラーで信頼性も高く、高度な意匠設計を実現可能です。
ただ、ARCHICADはRevitと比較すると設備設計の面では機能で劣る点もあるなど、微妙な性能差についても把握しておくことが重要です。ARCHICADは無料体験版も期間限定で使用可能なため、まずは一度触ってみてから導入を検討することをおすすめします。