BIMソフトの中でもポピュラーな部類に入るARCHICADは、多くの設計事務所や企業での導入が進み、積極的に活用されている魅力的なツールです。これからBIMの導入を本格的に進めたい人にとっては魅力的な選択肢となりますが、導入に当たって気になるのがやはり値段です。
この記事では、ARCHICADの価格や各ライセンスの仕組み、そして高価格なARCHICADを安価に利用するためのポイントについて、解説します。
ARCHICADとは
ARCHICADは、ハンガリーのGRAPHISOFT社が提供している、高価格帯のBIMソフトの一種です。BIMはBuilding Information Modelingの略称で、従来の3Dモデルと比較して、細かな数値情報や部材情報など、平面図に記録していたような細かな情報を3Dモデルに内包できるようになっているのが特徴です。
ARCHICADは他のBIMソフトに比べ、特に意匠設計分野に特化した機能群を備えており、国内外の設計事務所などにおける導入が進んでいます。価格相応のハイエンドな機能に仕上がっているため、あらゆるプロジェクトにおいて活躍が期待できます。
ARCHICADの種類
ARCHICADには複数の種類があり、どれを選ぶかで得られる機能や支払う価格は異なります。
現在GRAPHISOFTから提供されているのは
- ARCHICAD
- ARCHICAD Solo
- BIMCloud SaaS
- ARCHICAD Collaborate
の4種類です。ARCHICAD Soloは通常のARCHICADの廉価版で、いくつかの機能制限があるものの、通常版よりも安い価格でARCHICADを利用できます。
BIMCloudはBIM運用プラットフォームサービスで、価格相応にBIMを使ったコラボレーション業務を効率良く進行するための機能が揃っている製品です。
ARCHICAD Collaborateは、ARCHICADとBIMCloudがお得な価格で利用できるセット製品で、BIM運用を高いレベルで実現したい場合には欠かせないサービスとなるでしょう。
予算や必要機能に応じて、最適な価格のプランを選ぶことが大切です。
ARCHICADの価格
これからARCHICADを導入することを検討している企業にとって、気になるのがARCHICADの価格でしょう。BIMソフトはいずれも高価格な製品となっており、ARCHICADも例外ではありません。日本においてBIM導入が進まないのは、このような導入価格の問題もあるのですが、具体的にいくらくらいの価格が発生するのでしょうか。
2023年8月現在、ARCHICADシリーズの価格は、以下の表の通りとなっています。
ARCHICAD | ARCHICAD Solo | BIMCloud | ARCHICAD Collaborate | |
月額価格(税込) | 59,400円 | 36,300円 | 12,100円 | なし |
年額価格(税込) | 418,000円 | 250,800円 | 71,500円 | 418,000円 |
永久ライセンス(税込) | 1,181,400円 | 590,700円 | なし | なし |
ARCHICADの各プランの価格ですが、注目したいのは月額と年額、そして永久ライセンスの3つの支払い方法があることです。
長期的な利用を考えている場合、最終的にコストパフォーマンスが最も高いのは買い切り型である永久ライセンスの購入ですが、この場合は初期費用がかさんでしまうのと、一部プランでは利用ができない点がネックになります。
月額価格と年額価格の違いですが、年額価格の方が月額価格よりも割安で契約が可能な反面、やはりまとまった費用が発生するので、予算面での不安が残るという問題はあるでしょう。
月額価格での支払いの場合、大きな費用負担が発生しないため、まとまった予算を確保するのが難しいという場合におすすめの支払い方式です。
ただ、数年にわたって長期的に運用することを想定している場合、どこかのタイミングで別の長期プランに切り替えないと、割高な利用となってしまう点には注意が必要です。
ARCHICADの価格とライセンス形態
ARCHICADは価格の違いだけでなくライセンスの契約形態も複数の種類があります。
ライセンス形態の違いは、以下の表の通りです。
シングルライセンス | ネットワークライセンス | |
ハードウェアキー | USBキーが必要な物理ライセンス。一つのライセンスにつき一つのUSBキー。 | 単一のUSBキーを管理者が社内サーバーなどに接続することで運用するライセンス。 不特定多数のPCで、複数のユーザーが利用可能な形態。 |
ソフトウェアキー | オンラインでライセンスを取得し、認証されたコンピュータからARCHICADが利用可能になる形態。 | オンラインでライセンスを取得し、ローカルネットワークを通じて複数のユーザーがARCHICADを利用できる形態。 |
ARCHICADのライセンス形態はそれぞれの価格のプランごとに一人一台で使用するシングルライセンスと、ネットワークを介して一度に複数のユーザが利用できるネットワークライセンスの2つの種類があります。それぞれのライセンスを認証するためのキーにも2種類存在し、一つがUSBキーを使うハードウェアキー、もう一つがUSBを必要としないソフトウェアキーです。
ハードウェアキーはUSBでライセンスを管理できるため、不正利用などを防ぐ上では便利な方法です。ただ、ソフトウェアキーは一度認証すれば半永久的にその端末で認証の必要なく利用ができるため、利便性という面では優れています。
組織的なARCHICADの利用を考えている場合、価格の考慮はもちろん、シングルライセンスを個別に管理するよりも、管理者による一括コントロールができるネットワークライセンスが便利でしょう。
ARCHICADの価格を無料で利用できるのか?
以上のように、ARCHICADは基本的に有料価格のサービスであるため、無料価格で永久的に使うことはできないと考えておくべきでしょう。
ただ、初めてARCHICADを導入する、あるいは本格的な運用を検討するためお試しで利用したいという方に向けて、GRAPHISOFTはARCHICADの無料体験版を提供しています。
ARCHICADの無料体験版は価格を気にすることなく、30日間使用することができる、便利なサービスです。ARCHICADの基本的な操作を理解したり、その操作感を把握して他のBIMソフトと比較する上では十分な期間と言えるでしょう。
ARCHICADの価格を安く利用する方法はある?
ARUCHICADは決して安価とは言えない価格帯の製品ですが、少しでもコストパフォーマンスに優れた使い方をする上では、
- 永久ライセンスの利用を検討する
- 年額プランを利用する
- ARCHICAD Soloを活用する
- 補助金を活用する
などの方法を検討することが重要です。長期的な利用を想定しており、ある程度まとまった予算を確保できる場合、おすすめしたいのが永久ライセンスや年額プランの利用です。
これらのプランは高価格なので初期費用こそかかるものの、一度支払いが完了すればお得な価格で利用できるので便利です。
廉価版のARCHICAD Soloの活用も、価格を抑えて利用ができる方法の一つと言えます。
永久ライセンスであれば通常版の約半分の価格で購入でき、必要に応じてアップグレードもできるため、利用してみる価値はあるでしょう。
また、政府が展開する各種補助金の活用もおすすめです。ARCHICADも例外ではなく、IT導入補助金を使うことで、価格に合わせて最大導入負担を1/2まで抑えることができます。
参考:https://graphisoft.com/jp/it-subsidy2023
返済の必要のない補助金制度が充実しつつある今、積極的に制度を活用しましょう。
ARCHICADとRevitはどちらが価格が安い?
ARCHICADの導入を検討している方が、合わせて導入を検討しているBIMソフトとしてRevitが挙げられます。どちらも似たような価格帯であり、RevitはAutodesk社が手掛けるBIMソフトで、ARCHICADと同等、もしくはそれ以上に人気の高い製品です。
気になる価格ですが、ARCHICADとRevitではARCHICADの方が価格は安価です。
ARCHICADは年額税込41万8,000円での提供ですが、Revitは年額税込42万7,900円と、やや価格が高めに設定されています。
安い価格でBIMソフトを利用したい場合、RevitよりもARCHICADを選ぶのが賢明と言えるでしょう。
ARCHICADとRevitは価格以外で何が違うのか
それでは、ARCHICADとRevitは価格以外のところで、どのような違いがあるのでしょうか。
機能面での違いは、ARCHICADが意匠設計に強みを持つ一方、Revitは汎用性が高く、設備設計向けの機能が充実している点にあります。そのため、設備設計業務におけるBIM運用を検討している場合、ARCHICADよりもRevitを選ぶ方が都合が良いかもしれません。
また、ARCHICADはWindowsとMacの両方に対応している一方、RevitはMacに対応しておらず、Windowsのみでの運用となっています。MacユーザーがBIMソフトを利用したい場合、価格面の要素以外を含めても、ARCHICADに選択肢は絞られるでしょう。
ARCHICADの価格についてのまとめ
この記事では、ARCHICADの価格についての詳細や、ライセンス形態の仕組み、そしてARCHICADを安く利用するためのポイントについて、解説しました。
ARCHICADは便利なBIMソフトで、価格の面から見てもRevitより優れていると言えるため、コストパフォーマンスを重視でBIMソフトを選ぶ際にも導入を検討したい製品です。
ARCHICADは通常価格だけでなく、導入企業の都合に合わせた豊富な導入形態も用意しています。価格面での強みをさらに活かしたい場合には、永久ライセンスや年額プランの利用も検討すると良いでしょう。