AI活用が急速に進む今、多くの企業が直面している課題が「AI人材をどう育成するか」です。
特に建設業では、BIM・CIM・点群処理・工程の最適化など、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)を含むAI活用の需要が急拡大しています。
そこでこの記事では、AI人材育成の基本から建設DXへの活かし方までわかりやすくまとめました。企業内で育成が難しい場合の対処法も紹介しているので、育成の方向性や対策を検討する参考にしてみてください。
AI人材育成とは?
AI人材育成とは、AIリテラシー教育からデータ活用力、課題解決力、生成AIの応用まで、社員がAIを業務で使いこなせる状態をつくるための取り組みです。
労働政策研究・研修機構が公開している調査によると、現在特に、以下の職能種別の人材不足指数が非常に高くなっています。
| 職種 | 人材不足指数(TSI) ※数値が高いほど不足している |
|---|---|
| 検索アルゴリズム | 9.35 |
| 推薦アルゴリズム | 7.35 |
| 音声認識 | 4.01 |
| アルゴリズムエンジニア | 3.63 |
| 画像アルゴリズム | 2.75 |
| 機械学習 | 2.48 |
| 自然言語処理 | 2.42 |
| ディープラーニング | 2.35 |
| 機械視覚 | 2.05 |
出典:労働政策研究・研修機構「AI技術職の需要状況と人材争奪戦」
特に、画像アルゴリズムや機械学習、ディープラーニングといったAI技術は、建設業でも広く活用されている分野です。まずは、AI人材育成の基本知識から紹介します。
- AI人材の役割
- AI人材が「いらない」と言われる3つの理由
- 生成AI人材の育成との違い
AI人材の役割
AI人材の役割は、単にAIモデルを扱うことではなく、「業務のどこにAIを適用すべきか」を判断し、効果を測定しながら改善することです。AI導入はただツールを選定すること以外にも、以下の工程を踏んで「どのように活用するか」まで検討することが欠かせません。
- 現場の課題整理
- データ収集
- モデル選定
- ツール選定
- 検証
- 運用改善
そのなかでも建設業では、BIMモデルの解析、工程予測、安全管理AIの導入など、建設DXの取り組みに合うAIモデル・ツールの選定や検証ができる人材を育成する必要があります。
AI人材が「いらない」と言われる3つの理由
AI人材そしてその育成は、以下の理由から「いらない」と言われることがあります。
- 生成AIが進化したため専門知識が不要になると思われている
- AI導入コストが高く、効果が見えにくいと感じる企業もある
- AI人材=高度エンジニアだけと誤解されている
上記のように思われるのは、AI人材が生成AIを使える人だけだと勘違いされているのが原因です。
実際には、AIを活用するための調査・検討・検証などをトータルで実施できる人材のことであり、これからのビジネスでは、AIをうまく活用できる人材を育成できる企業であることが欠かせません。
生成AI人材の育成との違い

AI人材育成と生成AI人材育成は似ていますが、必要なスキル領域が異なります。
| 項目 | AI人材の育成 | 生成AI人材の育成 |
|---|---|---|
| 主な役割 | データ分析・ツール選定・検証など | プロンプト設計・業務改善 |
| 育成すべき必要スキル | 生成AIの知識はもちろん、その他AIサービスや、データ分析、社内における課題抽出力などの育成 | 生成AIの操作・指示の設定の育成 |
もちろん、生成AIに対応できる人材の育成も重要ですが、AI人材はさらに広い視点で企業の現状分析やデータ収集、ツール選定などを幅広く対応するための育成が重要です。
つまり、「ChatGPTやGeminiが使える人材」ではなく、企業の状況を見て、必要なAIモデルやツールを選定し、運用まで一貫して担える人材こそがAI人材の育成に欠かせません。
建設DXにこそAI人材の育成が必須な理由

建設業は、少子高齢化の加速によって慢性的な人材不足と生産性の停滞が続いています。
そのため、国土交通省が推進する建設DXによる取り組み(以下参照)により、業務効率化や生産性の向上を図ることが最優先事項となっているのが現状です。
- BIM・CIM
- IoT・自動化
- 点群データ
- AI解析
- 手続きやデータ管理に用いる業務効率化システム
これに対し、AI人材を育成できていない企業では、工程管理・積算・図面チェックなどの効率化が遅れ、競争力に直結するDXが進みません。上記の仕組みにも、画像処理やビッグデータの分析といったAIが活用されているため、建設DXとAI人材の育成が深く結びついています。
AI人材の育成に求められるスキル

AI人材の育成では「技術力の育成」だけでなく、課題設定力や業務理解、運用力などの総合力が求められます。特に建設DXでは、BIM・CIM・点群データ・工程管理など現場特有の知識とAIの仕組みを組み合わせる力の育成が不可欠です。
ここでは文部科学省が公開している「AI for Science の推進に向けた基本的な考え方について(2025年10月)」の資料も参考にしながら、AI人材育成の際に押さえるべき基礎スキルを解説します。
- AIリテラシーの育成スキル
- ビジネス課題の整理力の育成スキル
- 建設業務へのAI適用の育成スキル
AIリテラシー
AI人材育成の基盤となるのが、AIリテラシーの教育です。
AIリテラシーは、AIや生成AI、機械学習の仕組みを理解することだと思われがちですが、次のような知識や理解が欠かせません。
- 個人情報(工事情報)などにおけるAIでの取り扱い
- AI活用におけるセキュリティ問題の理解
- AIの最新トレンドの理解
- 建設業での活用状況の把握
建設DXでも、過年度データの営業活用や、BIM解析・点群処理といった高度なデータ利用が増えるため、人材育成において受発注者間で通用するAIリテラシーが必須です。
ビジネス課題の整理力
AIは「扱える技術」も重要ですが、それ以上に「課題設定力」の育成が成果に影響します。
AIツールと言っても、何を解決できる機能があるのかが変化します。
また、類似ツールだとしても提供元によって機能やUI(操作性)、拡張機能、価格帯などが変化する点にも注意が必要です。
たとえば、建設業で発生しやすい技術者の人手不足問題を解決する際、予算が限られているなかで、高額なAIツールを導入したとしましょう。すると、たとえ費用対効果を見込めたとしても運用を継続できなくなります。
このように、AI人材を育成する際には、ただ目先のことを解決する能力だけではなく、そこに影響する幅広い問題をまとめて解決できる人材に育成することが重要です。
建設業務へのAI適用スキル
建設DXにおけるAI人材の育成では、一般的なAI技術だけでなく以下の能力が不可欠です。
- 建設業務におけるデータ活用の理解
- 施工計画・工程計画・安全管理の仕組みの理解
- 異分野(施工・設計・IT)で協働する際のコミュニケーション力
- データ管理・セキュリティ・AI倫理への理解
たとえAIの知識を育成できたとしても、建設業が抱える課題や実際の業務プロセスを理解していなければ、どのようなAIとの相性がよいのかを判断できません。
建設業におけるAI人材は、設計・施工等で発生するデータ収集・運用が必須項目ですので、AIの理解に合わせて対象となる業界全体の理解についても育成することが重要です。
成功事例から学ぶAI人材の育成ステップ

建設業でAI人材育成を成功させている企業は、「小さく始めて、成果を可視化し、横展開する」というプロセスを実践しています。以下に、AI人材育成を効率化するステップをまとめました。
- AI活用の基本を理解し担当者を選定する
- 現場起点でAI適用業務を特定する(課題を可視化する)
- スモールスタートでPoC(小規模実証)を行う
- AI活用の成功パターンを標準化し、個人依存をなくす
- 階層別のAI人材育成で「使える人材」を増やす
- AI前提の業務プロセスを定着・拡張していく
AI人材の育成で重要なのが、いきなり企業全体で大規模投資をするのではなく、特定の業務に絞ってスモールスタートをすることです。小さな成功やAI活用のノウハウを蓄積し、標準化していくのが人材育成の理想です。
たとえば、大手ゼネコンの大林組では、企業が抱える課題を抽出したうえで、AIを含むデジタルを活用できる人材の育成プログラムを立ち上げました。継続的に改良を加えていくデータドリブンな体制で人材育成の品質を高めていくことにより、企業内での育成を成功させています。
(参考:大林組「大林組における人材育成の取り組みについて」)
AI人材育成の3大手法
AI人材の育成を効率よく進めていきたい企業におすすめなのが、以下の3大育成手法です。
| AI人材の育成手法 | 人材育成の概要 | 人材育成がおすすめの企業 |
|---|---|---|
| OJT (実践プロジェクト型) |
企業内で実際の業務データ・現場プロジェクトにAIを適用しながら学ぶ人材育成 | ・社内にAI人材育成の講師が少ない企業 ・小規模で体系研修の時間が少ない企業 |
| Off-JT (外部研修・eラーニング) |
セミナー、eラーニング、集合研修などを通じて、体系的な知識や専門スキルを習得する人材育成 | ・新人〜中堅まで均一に育成したい企業 ・社内にAI人材がゼロの企業 |
| SD (自己啓発支援・社内コミュニティ) |
社員が自主的にAIスキルを磨ける環境を提供し、長期的に自走できるAI人材を増やす人材育成 | ・部署横断でAI活用を推進したい企業 ・AI研究会や勉強会の文化をつくりたい企業 |
上記のうち、建設DXはもちろんAI活用自体が初めてという企業は、外部で基礎・応用・実践を学べるOff-JTからスタートするのがおすすめです。また、Off-JTを終えた後は、OJTやSDを組み合わせつつ、企業内でAI人材育成ができる環境を整えていきましょう。
企業単体でAI人材を育成するのが難しい理由
AIは専門知識・データ環境・継続学習が必須であることから、AIに詳しい人材がいないなか、企業単体だけで体系化することに限界があります。特に建設業では現場ごとの業務差が大きいことから、教育を内製化しにくいのが特徴です。
結論として、企業内でAI人材の継続的な育成が難しい場合は、セミナー講習等を活用するのがおすすめです。ここでは、自社でAI人材を育成する企業の課題をまとめました。
- 社内にAI人材を教育できる人材がいない
- 人材によってITリテラシーの格差が生まれる
- 設計・施工とAIの連携が不足している
社内にAI人材を教育できる人材がいない
多くの企業でAI人材育成が進まない理由は、「AIについて教えられる人がいない」ことです。
AI人材の育成では、基礎理論からデータ活用、プロンプト設計を踏まえて、業務への落とし込みまでを理解しなければなりません。すべて未経験の担当者任せで育成をすると、最終的なAI導入による建設DXを実現できず、属人化に陥りやすくなります。
人材によってITリテラシーの格差が生まれる
建設業は、年代・職種によるITスキルの差が大きく、同じ研修を実施しても理解度や習熟速度に差が出ます。
特に、AI人材は、ツールの基本操作だけでなく、データ分析や業務への応用が重要です。
リテラシー格差がそのままAI活用の格差につながるため、「誰を優先して人材育成をするのか」「どのように社内のリテラシーを育成するのか」を明確化することが重要です。
設計・施工とAIの連携が不足している
AI人材育成では、設計・施工・維持管理の業務フローとAI活用をつなげる視点が欠かせません。
しかし、多くの企業では部門ごとに業務が分断され、AI適用領域が限定的になりがちです。
建設業界でうまくAIを導入するためには、育成の前に企業内の理解はもちろん、データ連携の仕組み化に取り組むことも欠かせません。
AI人材の育成におすすめのプログラム・講習3選

AI人材を効率的に育成するためには、「基礎リテラシー習得」「実践プロジェクト経験」「業界特化スキル」の3つを体系的に学ぶことが重要です。参考として以下に、建設業のDXにも活用できるおすすめの人材育成プログラムや講習をまとめました。
| 人材育成プログラム・講習名 | 提供元 | 人材育成の内容 |
|---|---|---|
| DX・AI人材育成研修サービス | Proskill | ・法人向けにスキルレベルの可視化、階層別の研修体制づくり、研修内容を人事評価制度へ連動をサポート ・法人に合わせてAI人材育成の研修をカスタマイズ |
| DX人材育成研修 | キカガク | ・実データをもとにPBL型(課題解決型)の研修を提供 |
| AI研修(AI人材育成トレーニング) | トレノケート | ・生成AIの基礎やG検定(資格)の準備、ビジネス向けのAI人材の育成研修を提供 |
上記のプログラム・講座はあくまで参考です。AI人材育成のトータル&カスタマイズサポートなら「Proskill」、実務を通じてAI人材を育成したいなら「キカガク」、基礎・資格準備を受けたいなら「トレノケート」が向いています。
また、AI人材の育成を含むDX研修を受講したい方は、おすすめの講座を解説している以下の記事もご参考ください。
AI人材育成プログラム・講習の選び方
AI人材育成の成果は、「どの講座を選ぶか」で大きく変わります。
参考として以下に、プログラムや講座を比較する際の重要ポイントをまとめました。
- 自社の業務課題と人材育成の内容が一致しているか
- 座学だけでなく「実務演習」「自社データ活用」が含まれているか
- 生成AIやBIM・CIMなど、最新技術に対応したカリキュラムか
- 講師が専門家(エンジニア・建設DX経験者)であるか
- 受講後も相談できる支援体制(メンタリング・コミュニティ)があるか
- 人材育成の費用対効果(短期で現場に還元できるスキルか)を評価できるか
重要なのは、人材育成のプログラムが「自社の業務課題に直結しているか」という点であり、特に建設業ではBIM・CIMや施工管理、品質管理とAIの接続が不可欠です。単なる座学のみの人材育成ではなく、法人に合わせてカスタマイズし、実践的に学べるものを選ぶと良いでしょう。
なお、自社で最適な研修サービスを選べない場合には、無料相談からスタートできる「DX・AI人材育成研修サービス」がおすすめです。企業課題に合わせてAI人材の育成研修をカスタマイズできるため、自社ならではの課題解決を実現できます。
AI人材の育成に役立つ資格一覧

AI人材を育成する際には、体系的に知識を習得するために、AI関連の資格取得を目指すことも重要です。以下に、AI人材としての基礎知識があると証明できる資格を一覧化しました。
| 資格名 | 資格で学べること | 概要 |
|---|---|---|
| G検定(JDLA) | AI基礎(AIの全般知識) | 生成AI・機械学習の基礎を体系的に習得できる |
| E資格(JDLA) | AI応用(ディープラーニング) | モデル構築や深層学習の実装の知識を習得できる |
| データサイエンティスト検定 | データ分析 | 分析設計・統計・Pythonを体系的に理解できる |
| 統計検定 | 統計 | ビッグデータの統計知識を養える |
| DX推進アドバイザー認定試験 | DX関連の全般知識 | DXの仕組みや活用に関する知識を習得できる |
特に建設業の場合、工事業務に関する知識はあるものの、ITやAIに疎いという企業も少なくありません。なかでもG検定は、初心者向けかつAIの体系的な知識を学べるため、AI人材育成に合わせて、最初に取得するのがおすすめです。
また建設業に欠かせないDX人材におすすめの資格を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
AI人材育成についてよくある質問
ここまで解説してきたAI人材育成について、よくある質問をFAQ形式で回答します。
AI人材育成についてまとめ
建設業におけるAI人材の育成では、単にAIの基本知識を学ばせることに留まらず、自社が展開する建設事業の課題解決につなげる方法を習得させることが重要です。
特に建設業では、人手不足の解消のために建設DXとして、BIM・CIMや現場管理、品質管理の効率化などが進められています。そのひとつの解決策としてAI活用があるため、社内でAI人材を育成する必要がある方は、ファーストステップとして研修サービスを活用するのがおすすめです。