事業や個人利用のために倉庫建築を始めたいという方も多いでしょう。
しかし、どのような種類があり、どのような法令を守りながら設計・施工を進めたらいいのかイメージできずにお困りの人もいるはずです。
そこでこの記事では、倉庫建築の基本として主な種類や相場、用途についてわかりやすくまとめました。倉庫建築に関連する法令の情報も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
倉庫建築の種類
倉庫を建築する前に把握しておきたいのが、倉庫の分類です。
倉庫は主に4種類に分類されます。
各種がもつ特徴やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
自由な倉庫建築ができる在来工法
在来工法とは、一般住宅と同じ構造で建築する倉庫のことです。
ほかの倉庫と違い、自由なデザインで設計できることはもちろん、次のようなメリット・デメリットを持っています。
メリット | デメリット |
・目的や用途に合わせて形状やサイズをカスタマイズできる ・耐久性に優れることから長期にわたって利用できる |
・一般住宅と同じ構造であるため建築費用が高額になりやすい ・ほかの倉庫と比べて設計や工事にかかる期間が延びやすい |
自由度が高いことから、用途に合わせて倉庫の広さや柱・梁の位置を調整しやすいのが在来工法の魅力です。ただし、構造がほかの倉庫よりも複雑になるため、設計コストがかかりやすいほか、工事期間が延びやすいことに注意しなければなりません。
規格が決まっていてすぐに組み立てられるテント倉庫
テント倉庫は、サイズや大きさが決まった骨組みを組み立て、シートをかぶせることで建築できる倉庫のことです。水平を保った広い設置場所さえあれば、簡単に建築へ進めます。参考として、テント倉庫のメリット・デメリットを整理しました。
メリット | デメリット |
・詳細な設計検討を必要としない ・短期建築に対応できる ・建築費用を最小限に抑えられる |
・耐久性が低くため定期メンテナンスが欠かせない ・テントシートが経年劣化しやすい ・外的損傷(キズなど)に弱い |
テント倉庫の規格にもよりますが、すでに形状やサイズが決まった骨組みを組み立てるだけであるため、短期間で建築を終えられます。人件費の削減にもつながるため、必要最小限の費用でテントを設けたい場合などに採用されやすいのが特徴です。
増改築に対応したプレハブ倉庫
プレハブ倉庫は、規格が決められているパーツを組み立てることで建築できるシンプルな倉庫です。主にイベントや工事現場などに用いられる仮設事務所や仮店舗などとして利用されることが多く、次のようなメリット・デメリットを持っています。
メリット | デメリット |
・同メーカーのパーツを使うことで増改築ができる ・使用したパーツを別の場所で再利用できる ・断熱や空調にも対応できる |
・規格が決まっているため微調整ができない ・デザイン性に劣る ・防火対策が必要なエリアに設置すると費用が高額になりやすい |
まるでレゴブロックのように倉庫をつなぎ合わせられるため、必要スペースを確保したい場合などに役立ちます。また、2階建て・3階建てなど上方向にも増改築が可能です。
一方で、1つの倉庫サイズが小さいことから大規模な収納スペースには向いていません。
また、防火対策などが必要な場合には、建築費用が高額になりやすいことに注意が必要です。
規格化と自由設計の2つに対応したシステム倉庫
システム倉庫は、規格化されたパーツを組み立てられる短期建築に対応しているだけでなく、自由度の高い設計にも対応した倉庫のことです。設計・施工をまとめてシステム化してあるため、大規模な倉庫で建築しなければならない場合などに用いられています。
参考として、システム倉庫を建築するメリット・デメリットをまとめました。
メリット | デメリット |
・短期間で大規模な収納スペースを確保できる ・用途に合わせて自由なサイズを設計しやすい ・耐久性に優れており災害などにも強い |
・デザインがシンプルになりやすい ・ほかの倉庫よりもコストがかかりやすい |
自由度が高いことから、広い設置スペースさえあれば巨大な倉庫を建築できるのが魅力です。
地震や台風にも耐えることから、よく長期利用のために導入されています。
対して、基礎の建築などから対応する必要があるため、施工期間が延びやすいことに注意しなければなりません。費用も高くなりやすいため、広さや品質を求める人などにおすすめの倉庫です。
また、紹介した4つの倉庫などは建築CAD等で設計されています。
具体的に業務で利用されているソフトについて知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
倉庫建築の費用相場
倉庫建築をする際に重要となるのが費用相場です。
参考として以下に一般的な建築費の目安を整理しました。
在来工法 | テント倉庫 | プレハブ倉庫 | システム倉庫 | |
費用 | 自由設計のため構造により変化 | 坪あたり約7万円 | 坪あたり約15万円 | 坪あたり約20万円 |
期間 | 自由設計のため構造により変化 | 最短2ヶ月程度 | 1~3ヶ月程度 | 最短4ヶ月程度 |
上記の費用や期間はあくまで目安です。
建築する倉庫のサイズや構造によって前後しやすいことに注意してください。
なお、近年は世界情勢の影響で材料費の高騰が続いています。
また日本では賃上げの波が起きており、人件費も高くなってきている状況です。
建築に関わる費用は材料費・人件費に依存しているため、さらに費用が高くなる可能性もあると覚えておきましょう。
倉庫建築における工法の選び方
倉庫建築をする際に、4種類のなかからどの倉庫を選択すべきかお悩みの人もいるでしょう。
参考として、目的な業種別におすすめの工法を紹介します。
資材管理や荷捌き場所を確保したい
短期間で倉庫を準備しなければならない、費用を安く抑えたいという場合には「テント工法」を採用するのがおすすめです。例えば、次の業種などでよく利用されています。
- 膨大な荷物を管理する運送会社
- 資材を雨などから守る必要がある建築会社
- 収穫物を安全に管理する農業従事者
テント工法は比較的広いスペースを確保できるほか、骨組みを組み立ててシートをかぶせるだけというシンプルなつくりであるため、建築費用を抑えられるのが魅力です。
大規模な収納スペースを設けたい
大量の荷物を1箇所にまとめる必要があるほか、搬入・搬出する荷物のサイズが大きい場合などには「在来工法」「システム倉庫」を採用するのがおすすめです。例えば次のような業種で利用されています。
- 倉庫内に冷蔵・冷凍設備を設けたい食品メーカー
- 膨大な荷物を管理しなければならない卸売業者
倉庫サイズを自由設計に対応しているため「大規模機器を導入したい」「フォークリフトなどを倉庫内に入れたい」といった用途に合わせて建築規模を調整できます。耐久性に優れ、長期的に倉庫として利用できるため、大規模事業を実施する場合などに最適です。
短期間だけ倉庫を利用したい
頻繁に場所を変える仕事など、一時的に倉庫を建築する必要がある場合には「プレハブ倉庫」を採用するとよいでしょう。プレハブ倉庫は増改築はもちろん分解して再利用できるのが特徴です。次のような業種でよく利用されています。
- 全国エリアで催しごとを実施するイベント会社
- 現場での事務作業が必要とされる建築会社
メーカーによってさまざまな規格が提供されているので、用途に合わせてサイズを決められます。プレハブ倉庫のリースなどに対応した業者もいるため、コストを必要最小限に抑えることも可能です。
倉庫建築に関わる法令一覧
倉庫建築をする際には、必ず関連する法令の知識持っておく必要があります。
参考として、以下に倉庫建築に関わる法令とその概要を整理しました。
法令 | 概要 |
建築基準法 | 倉庫のサイズや規格によっては建築確認申請をしなければならない |
消防法 | 倉庫のサイズによっては消防用設備の設置や防火対策が必要になる |
都市計画法 | 順居住地域や商業地域など、指定されている場所にしか営業用の倉庫を設置できない |
法令を無視して倉庫を設置すると、罰則や是正を受けるかもしれません。
倉庫建築費用が無駄になってしまうケースもあるので、十分に注意してください。
また、建築に関して準拠するルール等を知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
倉庫の建築業者を選ぶポイント
倉庫建築をする際には、ただ見つけた業者に依頼するのではなく、自分の目的や用途に合う優良な業者を見つけることが欠かせません。参考として、業者やメーカーの比較ポイントを紹介します。
3社以上から見積もりを取得する
倉庫建築を依頼する際には、必ず3社以上から見積もりを取得したうえで業者を選択しましょう。
比較検討をするうえで重要なのが、相場観の把握と業者ごとの費用の違いです。
1社だけだと費用が高いのか安いのかを判断できないほか、2社を比較しても金額の違いがわかるだけで相場がいくらなのかを判断できません。
対して3社を比較すれば「1社は高いけれど残りの2社は同じくらいの金額」というように、金額の傾向を掴みやすくなります。倉庫建築に対応している業者によっては相見積もりに対応してくれる場合があるので、ぜひ見積もりを依頼する際に相見積もりをお願いしてみてください。
実績数を比較する
倉庫建築をスムーズに進めたいなら、専門業者の実績数を比較しましょう。
例えば、倉庫建築の実績が豊富な業者なら、過去の実績から材料の調達にかかる期間や建築期間をあらかじめ把握したうえで工事を進められます。一方で実績の少ない業者だと、設計や材料調達、工事すべてに時間がかかる恐れがあるでしょう。
急いで倉庫を建築しなければならないという状況下で安定した品質を求めているのなら、実績数を基準に業者を選んでおくと安心です。
なお、倉庫建築や建築後のDX化にお悩みなら、数々の現場をこなすコンサルタントが対応するBIM/CIM研にご相談ください。
倉庫建築についてまとめ
倉庫には在来工法・テント倉庫・プレハブ倉庫・システム倉庫という4種類があり、それぞれ建築のメリット・デメリットが大きく異なります。そういったなかで、最適な工法を選びたいなら、事前に倉庫建築の知識を身につけておくことが大切です。
本記事で紹介した倉庫建築の基本情報を参考に、ぜひ建築の準備や手続きをスタートしてみてください。